箱根駅伝で総合優勝を目指す東洋大の夏合宿、指揮官・酒井俊幸監督が語るチームの現況と最上級生の思い

2024年10月4日(金)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


酒井監督が語るチーム状況

 今年の箱根駅伝で総合4位に入った東洋大。8〜9月は夏合宿を重ねて、駅伝シーズンに向けて走り込んだ。チームは9月中旬の猪苗代合宿でメディア取材に対応。酒井俊幸監督はチーム状況をこう話した。

「足並みがちょっと揃っていないところと順調に下地ができているなというのが折り混ざっている感じですね。それぞれスケジュールが異なっていましたし、前半戦で頑張った4年生に体調不良や故障もありましたから」

 梅崎蓮(4年)が8月25日の北海道マラソンに出場して、松井海斗(1年)が8月下旬にU20世界選手権(5000m)でペルー・リマに遠征。実業団の合宿に参加した選手もいて、チーム全員が同じスケジュールでトレーニングを消化したわけではなかった。駅伝シーズンに向けて仕上がりが遅れている選手もいるが、酒井監督は夏合宿の成果を感じている。

「夏合宿は富士見、蔵王、箱根で起伏のあるコースを走ってきました。そのなかで1年生がトラックシーズンに引き続き、いい練習をしています。2・3年生が1年生の突き上げと4年生の頑張りに刺激を受けて、昨季は三大駅伝に出られなかった選手が力をつけつつあるんです」

 なかでも酒井監督がイチオシしていたのが網本佳悟(3年)だ。

「網本は昨年、捻挫をして箱根駅伝の登録メンバーに入れなかったんですけど、それが自分を見つめ直す契機になりました。今季は1500mから始めて、全日本大学駅伝の選考会は2組でトップを奪い、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ10000mを28分31秒26で走りました。本人も手応えをつかんでいるんじゃないでしょうか」

 酒井監督の予感は的中する。網本は日本インカレ10000mでも29分50秒57で8位入賞(日本人2位)を果たして、駅伝シーズンに向けて弾みをつけた。


夏合宿は『ペガサス プラス』を積極使用

 夏合宿では今夏に発売されたナイキの『ペガサス プラス』を選手たちは積極的に活用した。その理由を酒井監督はこう説明する。

「レース用モデルの『ヴェイパーフライ 3』や『アルファフライ 3』に慣れるのも大事なんですけど、その前段階で長い距離をじっくり走って、効率の良い足さばきを身に着けたいんです。反発のあるシューズを履けば、強度が上がってくるので、フィジカルも必要になってくる。トレーニング強度に合わせたシューズ選びが重要なので、『ペガサス プラス』はレース用モデルを履く前のトレーニングにフィットすると思います」

 長年、ナイキのシューズを履いてきた4年生にもノンカーボンの『ペガサス プラス』は好評だ。

「ペガサス プラスは反発性が強く、安定性もあるのでとても気に入っています」と梅崎蓮が言えば、石田洸介も「高校時代によく履いていた『ペガサス ターボ』に近いシューズで懐かしい気持ちになりました。軽くて反発性も高いので、ペースの速いジョグや距離走で着用しています」と話す。

 小林亮太は「とにかく軽い印象があって、距離走で履いていても脚にダメージが残らない。キロ3分30〜40秒くらいのペースで履くことが多いです」と夏合宿中は頻繁に使用したようだ。また吉田周は、「ほどよい厚みで反発力があり、推進力もあるのでジョグでもいい走りができるシューズだと思います」という感想を持っている。


最後の駅伝シーズンを迎える4年生

 ペガサス プラスでしっかり走り込んだ東洋大の選手たちは駅伝シーズンに向かっていく。最大のターゲットは箱根駅伝だ。トップスリーに返り咲くだけでなく、「総合優勝」を目指して4年生が燃えている。

 主将・梅崎蓮は今年の箱根駅伝2区を1時間06分45秒の区間6位と好走。今季も関東インカレの1部ハーフマラソンで日本人トップ(2位)に輝くなど、力強い走りでチームを引っ張ってきた。8月は北海道マラソンで夏マラソンを経験。学生駅伝ではロング区間での活躍が期待されている。

「チームとしては箱根駅伝につながるレースをしていくことが大切だと思っています。そのためにも出雲駅伝と全日本大学駅伝は3位以内の結果を残したい。個人としては、何区を任されても区間賞を狙える走りをしたいと思います」

 5000mの元高校記録保持者・石田洸介は昨季、試練の一年を過ごしたが、今季はトラックシーズンで大活躍。関東インカレの1部10000mで28分08秒29の自己ベストで6位に食い込むと、全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会は3組でトップを飾った。今季のチームスローガンである「鉄紺の覚醒」を象徴するような存在になっている。

「駅伝シーズンに向けては、まずは自分の状態を万全にして、全日本からチームに貢献できるような走りをしたいと思っています。箱根は総合優勝を目指しているので、区間賞を獲得するのが個人的な目標です。欲を言えば、同期とタスキリレーをしたいですね」

 石田とともに関東インカレ10000mで自己ベストの入賞(28分12秒77の7位)を果たした小林亮太。今季は10000mレースに4本出場して、その平均タイムが28分40秒を切るなど、安定感のある走りを見せている。三大駅伝は昨季すべてに出走しており、今季もチームの要となる選手だ。

「出雲と全日本は昨年、順位を落とす悔しい走りになったので、そのリベンジとして区間賞争いをしたいです。そして箱根は2年連続で出走している3区は譲れないですね。青学大・太田蒼生選手や駒大・佐藤圭汰選手と互角に戦うことが優勝への道だと思っています」

 吉田周は今年の箱根駅伝9区で区間2位と活躍したが、トラックシーズンは思うような走りができなかったという。それでも9月上旬から調子が上向き、夏合宿では充実したトレーニングをこなしている。

「駅伝のメンバー争いは熾烈ですが、出雲と全日本は任された区間で貢献できればと思っています。箱根は前回、目標タイムに届かなかったので、もう一度9区を走りたいですね。梅崎が2年時にマークした東洋大記録(1時間08分36秒)を上回る1時間08分30秒を切りたいです」

 4年生が引っ張る東洋大。熱い思いと1秒をけずりだす走りで“鉄紺の魂”を後輩たちにつないでいく。

筆者:酒井 政人

JBpress

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