3万円で葬式が出せるDIY葬儀を徹底解説『DIY葬儀ハンドブック』著者インタビュー! 遺体の処置、運搬、棺桶、骨壷の選び方まで
2019年12月17日(火)15時0分 tocana
TOCANAでも活躍中のサブカル系ライター、松本祐貴氏は、夫婦揃って世界一周を達成し、『泥酔夫婦世界一周』(オークラ出版)なんていうクレイジーな旅本も書いている。僕の最狂旅本『クレイジートリップ』(三才ブックス)のときには、インタビュワーを勤めてもらったほどだ。そんな彼がいきなり“葬儀の本”を出したという。これはどういうことだ!?
ちなみに、僕も3年前に父が亡くなり喪主を経験している。実際、ネットの情報だけで葬儀という重要なことを決めていいものかは迷うところだろう。さて、松本祐貴著『DIY葬儀ハンドブック』は、本の装丁やイラストもサブカル風味、気軽に手に取れる仕上がりながら、内容は徹底的に具体的なのがうれしい。「葬儀って、どういうこと?」「人が死ぬと何をするの?」といった好奇心から「突然、親が亡くなりました。どうしよう!」という切羽詰まった人まで、とにかく、葬儀のリアリティに迫れるハンドブックだ。さっそく、著者である松本氏に話を聞いた。
——『泥酔夫婦世界一周』で知られる松本くんが、なぜいきなり葬儀の本を作ったの?
「担当編集者から声をかけられて、DIYの葬儀の本を作らないかと。実は僕も2年前に父の葬儀の喪主をやった経験があって、こういう本があったら便利だったろうなと思っていました」
——そうなんだ。僕は自分の父が亡くなったときは、一番最初に死体写真家の釣崎清隆に連絡して写真を撮ってもらったけどね(『バースト・ジェネレーション』創刊号に掲載)。DIYでやるポイントは、葬儀にかかる費用を安くできるということなのかな?
「葬儀社の業界は、ぼったくりがひどいと言われています。ネットで見つけた業者だと、携帯で指示だけ出して、下請け業者に丸投げとか。大手は大手で、普通の1.5倍から2倍の費用がかかります。広告費も人件費もかかっているから仕方ないですが、それだけのクオリティが保たれているのかはわかりません。とはいえ、中堅の老舗も先代は良かったけど、2代目、3代目になるとわからなかったり。
結局はたまたま最初に電話に出た担当者が最後までちゃんと面倒をみてくれるかどうか。いろんなところに相談に行くしかないんです。実は、葬儀社になるのに資格なんていらない、国の法律もないですから。人生にとってすごく大事なことなのに、この本を作るためにいろいろと調べてみると、葬儀があこぎな商売になっていて、とてもショックでした」
——実際に葬儀社に取材して情報を集めたそうですね。DIYで葬儀をやられちゃうと商売上がったり、「これは秘密だよ」みたいなことは言われなかったの?
「全然ありませんでした。結構、皆さん、ぶっちゃけ喋ってくれました。でも、『自分じゃ、できないんじゃないの?』とは、しつこく言われました。普通は仏式だと、お寺だから、そこでお金がかかります。戒名って、思っているよりも高いですし。葬儀には、一般葬、家族葬、一日葬、直葬とあって、DIYでやれるのは直葬ということになります。個人的には宗教的な問題がないなら、お墓もいらないと思っています」
——具体的には、ネットで棺桶や骨壺を買っちゃってするんだよね。だいたい、遺体の運搬って、自分でやっていいんだっけ?
「死亡届があれば、遺体の運搬については問題はないです。棺桶や骨壺は、自分でやるときには必要ですからね。一番難しいのは、遺体の処理、遺体の搬送、火葬場の予約なんですけど、それだけプロに頼んじゃえば、あとは自分でできますよ」
——死亡届はどうするの?
「お亡くなりになった場所によりますね。かかりつけの医師に書いてもらうのが一番簡単です。今は、7割くらいが病院。1割くらいが自宅で亡くなります。あとは、介護施設。特殊なら路上とかです。近親なら病院からの運搬も可能です。ただ、発見したときにすでに亡くなっていて、警察を呼んだ場合は、遺体の検視があるので業者に頼むのが賢明ですね」
——この本、デス系の趣味の子たちにとっては、サブカル的に楽しめるよね。完全自殺マニュアルならぬ、“葬儀マニュアル”として。
「まあ、サブカル風にイラストも軽めにしてますから、そういう読み方をする人もいるかもしれませんね。遺体の扱い方とか、湯灌についても書いてますから」
——火葬については、個人だと難しいのかな?
「個人だと、火葬場の予約が難しい場合があるんです。例えば、東京には火葬場が9つあるんですが、公営は2つしかなくて、あとは私営です。例外的に、逗子にも私営があるんですけど、他の自治体はほとんどが公営です。相手が個人でも、公営の火葬場は受け入れないといけない決まりになっているけど、私営だと断られる場合もあるんです。
あと、火葬場はどこも混んでいるので、何日も待たされることになると遺体の保管が難しくなります。とにかく、日本の場合は火葬にしなくちゃいけない決まりがあります」
——そうだね、ゾンビになったら困るし。
「たしかに。骨になってしまえば、精進落としをするか、しないかは自由です。また、お骨を自分の家に置いておいても問題ありません」
——でも、骨をそこら辺に撒いちゃダメでしょ。
「2ミリ以内に砕けば大丈夫という話も聞きますけど、散骨については、個人でやるのは難しいと思います。安いもので20万くらいで業者が骨を砕いて撒いてくれて、あとから撒いた場所を教えてくれます。いっしょに撒きに行きたければ、もっと費用がかかります。あと、風船葬といって、空中で風船が爆発する散骨もあります」
——爆発するというのがいいね。宇宙まで行くってこと?
「宇宙に近づくと、気温の変化で爆発するんじゃないかな。それとは別に宇宙葬というのがあります。200万くらいかかるけど、数グラムしか運んでもらえないんです。残りの骨はどうするんでしょうね」
——カウンターカルチャー的には、海外だけど、遺骨をシリコン素材で包んで体内に埋め込んだり、遺体を冷凍保存したりね。
「そういうのも面白いですが、お金もかかりますね。一番お勧めしたいのは、手元供養です。遺骨をそのまま自宅で保管すれば、全くお金もかからないので」
——自分の葬儀はどうするの?
「みんなに聞かれる質問ですね。たとえば、僕の場合でも、まだ現役で働いているときに亡くなるなら一般葬でいい。香典が集まれば、葬儀費用はまかなえますから。高齢で亡くなったら家族葬か、DIYか。悲しんでもらえる人がいるなら、ちゃんと悲しんでもらった方がいいと思います。でも、親戚も友達も亡くなっているなら、DIY葬でいいでしょう」
——松本くんが死んだら、お子さんがこの本を読んで葬儀をしてくれるわけだね。でも、僕らの世代は子供がいない連中も多いから、死んだら友達がやらないといけない場合もあるね。
「生前にある程度決めておくこともできますけどね。とにかく、読んで欲しいのは40代、50代、僕らの同世代、これから親が亡くなってしまうかもしれない人たち。これを読めば、突然喪主を任されたときに、選択肢が広がるし、最悪、自分でやっちゃうこともできますから。誰にとってもいつかは必要な知識ですから」
【刊行情報】
松本祐貴『-遺体搬送から遺骨の供養まで- DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)
3万円以下で火葬までできる場合も! プロがこっそり教えるお葬式の段取りとテクニック!
お葬式……すべてを個人で行えば、火葬まで約3万円で行うことが可能!?
「お葬式を行うと莫大な費用を請求される」「葬儀を出したときがないから何も知らない」……葬儀について、多くの人は知らないことばかりです。 廉価であることを謳って、最近増えてきた「家族葬」。こちらも、請求額を見れば追加費用が多く安価ではないこともあります。 「それならDIYでお葬式を行ったほうがいいのでは」?そういった心の叫びに対する答えとして本書が誕生しました。
葬儀を個人で進めるDIY葬儀では、身近な人とはいえ遺体と直面することもあります。また知らないことばかりというのが実情です。それを解消するためには、さまざまな知識が必要になってきます。
そういったノウハウを本書では、イラストやチャートを使ってわかりやすく説明しています。
・「お迎え」が近づいたとき、何をどのように用意すればいいのか。
・危篤時、臨終時にどのような手続きが必要なのか。
・亡くなった場所によって遺体の搬送方法はどう変わってくるのか。
・故人を自宅で安置するのに必要なものは。
・火葬場の予約は個人でも可能なのか。
・すべてを個人で進めるのではなく、一部を業者に依頼するには?など。
DIYでお葬式を行うことにハードルがある方、葬儀にまつわる知識を得たい方に向けて、プロが教える知識も掲載しています。それらを活用すれば、葬儀社の言いなりにならない、納得のいく心のこもったお葬式を行えるはずです。
【出版社からのコメント】
「終活」という言葉が一般的になってきてはいるものの、実際の葬儀に関する知識と経験を持っている人は多くないはずです。お通夜や告別式に参列したことはあっても、自らが主催者となった経験は少なく、知識を得る機会もないというのが現実でしょう。
年齢を重ねるということは、死が近くなるということでもあります。
身近な人の死に直面したとき…平静ではいられなくなり、葬儀社などの言いなりに葬儀を進めてしまい、高額な費用を見て後悔した方もいることでしょう。
本書は、そういった方々の直面する問題や不安を解消し、葬儀社と交渉するときに困らないためのノウハウを豊富に掲載しています。また、あなた主導で廉価で心のこもったお葬式を行うために必要な知識をイラストやチャートなどでわかりやすく示したハンドブックとなっています。
【著者略歴】
松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。ライター&フリー編集者。雑誌記者、出版社勤務を経て、雑誌、ムックなどに寄稿する。テーマは旅、サブカル、趣味系が多い。著書『泥酔夫婦世界一周』(オークラ出版)。
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