「閉店間際に入った田舎の中華料理店。私たちの他に客はいないのに、厨房のおじさんが...」(福岡県・50代男性)

2023年12月13日(水)11時0分 Jタウンネット

シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Uさん(福岡県・50代男性)

Uさんは大学生時代、友人と2人で九州縦断徒歩旅行に出た。

その旅の中で出会った人たちに、彼は人生で最も感謝しているという。

<Uさんの体験談>

30年ほど前の夏、大学生だった私は、友人と二人で福岡市内から鹿児島県の長崎鼻までのおよそ350キロの九州縦断徒歩旅行に出かけた。

アルバイトの関係で旅行に使えるのは7日間。1日50キロを7日間で進む計画だった。

他に客は誰も居ないのに...

毎日訪れた先の人々と交流しながら、歩を進めた3日目の午後8時ごろ。

田舎町でようやく見つけた小さな中華料理屋さんで、中華丼や餃子などを注文した。

閉店間際のこの店には、私と友人の二人だけ。注文した品はすでにテーブルに並び、もう調理するものはないはずだけど、厨房のおじさんは何かを作っている。

しばらくして、おじさんが八宝菜と酢豚などを、おばさんがビールを持って私たちのテーブルにやってきた。

「はい、どうぞ」
「え?頼んでませんよ」
「いいと、たべなさい、おなかすいとるやろ?」

大きなリュックをもって、汗臭くなった私達を見て、ごちそうしてくれたのだ。2人では食べきれないほどの量だった。

そんな格好して何をしているのか? なんでそんなことをしているのか? 色々聞かれて話をした。そして午後9時になるころ、会計を済ませて店を出ようとしたら、こう言われた。

「今日泊まるところはあるのか?」

「いや、いまから神社探して、テント張って休ませてもらうつもりです、近くに神社ありますか?」と聞くと、「うちに泊まれ」と言ってくださった。

ヒッチハイクをしたら...

翌日は50キロ先まで歩き、夜の公園でテントを張っていたら、近所の人がやってきてみかんやまんじゅうをくれた。

更に翌日、いよいよ鹿児島県に入って峠を超えるころ、雨が降り出してびしょ濡れになった。

ヒッチハイクをしようとボードに峠を超えた町の名前を書いたが、誰も止まってくれない。

大きな荷物と相棒を物陰に隠し、一人でボードを上げると、次に来た車がすぐに止まってくれた。二人で荷物をもって駆け寄ったら、50代ぐらいの夫婦がぎょっとしていたが快く乗せてくれた。

びしょ濡れの私達を乗せると、大雨なのに窓を全開にして走る。私たちがあまりに臭かったからだろうか......。

例によって、何をしているのか、どこから来てどこまで行くのか、定番の話をすると、なんとそのご夫婦の娘さんが私達と同じ大学だということがわかった。

翌日、トボトボと歩いているときにこのご夫婦が私達を探しに来て応援してくれた。本当に良くしていただいた。

一瞬の出会いだったけど...

携帯電話もない時代、どこの誰かもわからないまま一瞬の出会いだったが、人生で最も感謝している方々です。

10年ほど経ったときに同じ道を車で辿ったのですが、中華料理店もどこだったかわからず、他の方々の手がかりも何もなく、お会いしてお礼を言うことはできないまま。

その後、今日に至るまで、若い人がリュックを背負って旅をしているのを見かけると、必ず声をかけて夜に泊まる場所を聞き、夜ご飯を一緒に食べるようにしています。中華料理を腹いっぱい食べさせています。

本当はご本人にお礼を言いたいのですが、代わりに私が受けた恩を若い人のためになるように。これが私なりの、お世話になった方々に対する恩送りです。

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(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)

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