箱根駅伝「トークバトル」で見えてきた有力校の戦略、青学大、駒大、城西大、東洋大、國學院大のオーダーは?
2024年12月16日(月)6時0分 JBpress
(スポーツライター:酒井 政人)
青学大・原監督はエースに鶴川を指名
2025年1月2、3日に開催される第101回箱根駅伝のチームエントリーが12月10日に行われた。同日、記者発表会に続き、前回上位校の監督による「トークバトル」が実施され、指揮官たちがライバル校の戦略を探り合った。
関東学連の大後栄治副会長がコーディネーター役を務めて、まずは「ズバリ! 今回の目標順位は?」という質問からスタートした。
連覇を目指す青学大・原晋監督は、「総合優勝」を目標に掲げると、「前半から主力級を並べて攻めのレースをしていきたい」と息巻いた。
前回は2区黒田朝日(3年)と3区太田蒼生(4年)が連続区間賞。5区若林宏樹(4年)が区間2位(区間新)と往路からぶっちぎった。
原監督は黒田について、「箱根の山に朝日を昇らせたい気持ちもあるんですけど、やっぱり2区ですよ」とエース区間の起用を明言。会場から拍手が沸き起こった。
そして今季、5000m(13分18秒51)と10000m(27分43秒33)で青学大記録を塗り替え、出雲1区と全日本2区で区間賞を獲得した鶴川正也(4年)については、「実は山上りも得意なんですよ。夏合宿恒例の上り坂トライアルで1番が黒田、2番が鶴川でしたから」と教えてくれた。また「エースは誰?」という質問に原監督は「鶴川」と回答。具体的な起用区間は口にしなかったが、往路での起用が濃厚のようだ。
なお駒大・藤田敦史監督は、「順当にいけば黒田君が2区、太田君が3区、若林君が5区じゃないですか」と予想した。
6区に関しては、「3年生の佐藤有一も高いポテンシャルを持っているんですけど、下りは野村が本命。57分台を狙わせます」と前回6区2位(58分14秒)の野村昭夢(4年)に託すようだ。
駒大の2区は篠原が有力か!?
2年ぶりの優勝を狙う駒大の藤田敦史監督は、「前回力負けしたリベンジということで、挑戦者として思い切ったレースをしたい」と宣言。出雲と全日本を回避した佐藤圭汰(3年)については、「十分間に合うぐらいのレベルに戻っている」と話した。
佐藤の区間については、「城西大のヴィクター君が1区であれば佐藤圭汰をぶつけたい」とコメント。すると青学大・原監督が、「故障あがりの選手は単独で走るより集団について、後半勝負の方が走りやすい。朝は気温も上がらないので、練習量が少なくてポテンシャルの高い選手は走りますよ」と佐藤の1区起用を予想した。
2区については「まだこれからです」と藤田監督ははぐらかしたが、前回1区で区間賞を獲得した篠原倖太朗(4年)と前々回5区、前回4区を務めた山川拓馬(3年)が候補になる。
「山川本人は『5区をやりたい』と話していますが、全日本のアンカーの走りを考えると2区をやらせてみたいですね」と藤田監督。そうなるとエース篠原はどうなるのか。
「篠原はオールラウンドの選手なので5区以外ならどこでもやれますよ。本人も『言われたところをやります』と言ってくれているので心強い。ただ出雲6区、全日本7区は昨季の鈴木芽吹と同じです。篠原も箱根は2区という気持ちがあると思います」
6区は前々回で区間賞に輝いた伊藤蒼唯(3年)と前回の経験者である帰山侑大(3年)が控えているが、「伊藤は平地で戦える実力を備えているので、どちらでも起用できます」と藤田監督は明言を避けた。
それでも原監督は、「2区は篠原君、5区は山川君、6区は伊藤君、7区は帰山君。ここは当たるな」と大胆予想。すると大学・実業団時代の1学年後輩に当たる國學院大・前田監督が、「藤田さんと長い付き合いなのでわかるんですけど、篠原君は2区ですね。原さんに突っ込まれたときの表情で正解だと思いました」と言うと、藤田監督は苦笑いした。
城西大はヴィクターが1区?
前回過去最高の3位に躍進した城西大。トークバトル初登場となった櫛部静二監督は、「できれば1区はヴィクター・キムタイで」と“先制口撃”をして、他校の指揮官を驚かせた。
目標につては「4位」と回答。「先制攻撃をして、できれば3強超えをしたい」と序盤から主力を並べるオーダーを示唆した。
前回は3区のキムタイで3位に浮上すると、「山の妖精」と呼ばれた5区の山本唯翔(現・SUBARU)が区間賞・区間新の快走で4位以下を大きく引き離している。
「山の妖精が羽ばたいていってしまったので、5区は斎藤かヴィクターか」と櫛部監督は冗談半分で答えたが、斎藤は八王子ロングディスタンス10000mで27分45秒12の自己ベストをマークするなど絶好調。3年連続となる花の2区が濃厚だ。そして2年連続で3区を担ったヴィクターも往路に入るだろう。
それから5月の関東インカレ10000mで日本人トップに輝いた平林樹(4年)については、「どこにいくか決まっていません。キャプテンですので、主要区間になるでしょう」と櫛部監督。前回は9区を担ったが、今回は往路に投入されるかもしれない。
東洋大は5区にルーキーを抜擢か
前回は全日本14位から4位に急上昇した東洋大。酒井俊幸監督は「4位」を目標に掲げると、「前回は2区の梅崎、3区の小林がしっかり流れを作りました。梅崎は涼しくなると調子を上げてくるのでロードのエースです」と自信を口にした。
前回は1区で15位と出遅れながら、2区の梅崎蓮(4年)と3区の小林亮太(4年)がともに区間6位と好走。3区終了時で4位まで順位を押し上げている。順当なら今回も2区は梅崎、3区は小林が配置されるだろう。
前々回大会で花の2区を担った石田洸介(4年)については、「2区以外で考えたいと思います」と酒井監督。1区もしくは4区での出走になるのだろうか。
また前回は吉田周(4年)が9区で区間2位、岸本遼太郎(3年)が10区で区間賞を獲得している。「岸本は往路の起用も考えていますが、このふたりが復路にいると、安心感があります」と酒井監督は話した。
5区に関しては松井海斗と宮崎優の1年生コンビが希望しており、「1年生は4人エントリーしています。飾りじゃないので、山もありますよ」とルーキーの5区抜擢をほのめかした。
國學院大は復路の逆転Vを構想
出雲を5年ぶりに制して、全日本で初優勝を飾った國學院大。前田康弘監督は「優勝」を目標に掲げると、「往路は各校、エース級を並べるので、どうなるかわかりません。そこをしっかり粘り、後半勝負に持っていきたい。5区平林で攻撃します」と意外な区間でエースの名前を出して会場をどよめかせた。原監督も「マジっすか?」と驚いた表情を見せた。
一方で2区は誰かという質問に、「平林かもしれないですね」と前田監督は答えて、オーダーを煙に巻いた。平林清澄(4年)はマラソンで2時間06分18秒の学生記録を持つエース。大学・実業団時代の先輩に当たる駒大・藤田監督からは、「私でしたら2区に使います。箱根のエース区間をしっかり走って、世界に羽ばたいてほしいという思いがありますから」という“アドバイス”があった。
復路勝負を示唆している前田監督だが、戦略面でポイントとなるのがオランダで開催されたセブンヒルズ 15km(11月17日)で43分21秒をマークして4位に食い込んだ青木瑠郁(3年)だ。
「起伏の多いレースで結果を残したので青木の可能性を感じたレースになりました。区間バリエーションが増えましたね」(前田監督)
同大会に帯同した大後副会長はレース後、前田監督から「箱根駅伝はいままでのレースを覆すようなレースをしたい」というメールをもらったそうで、「青木君の配置で往路と復路の割合が変わってくると思いますね」と前々回1区、前回3区に入った青木の起用区間に注目していた。
2年時に10区を4位と好走している佐藤快成(4年)については、「高校時代にスカウトしまして、上りが得意と聞いていました」と原監督が言うと、「絶好調です」と前田監督が返すなど、國學院大のチーム状況は良好なようだ。
厚い選手層を生かして、前田監督はどのようなオーダーを組んでくるのか。
箱根駅伝は12月29日に「区間エントリー」が行われ、当日変更で最大4人まで補員の選手と交代できる。各校の指揮官たちはライバル校の動向を気にしつつ、“最強オーダー”を考えていく。
筆者:酒井 政人