「1000円値上げ」でドコモをやめると大損する…「本当の情弱」にならないために「新料金プラン」を徹底解説する
2025年5月29日(木)8時15分 プレジデント社
■8月を前に料金プランを見直そう
NTTドコモとKDDIが6月に料金プランを改定する。
筆者撮影
「ドコモMAX」はDAZNが見放題となる。今後、NTTドコモでは「アイドル」などの付加価値も載せていくという - 筆者撮影
NTTドコモが約1000円、KDDIが330円の「値上げ」となる。特にKDDIは新料金プランが投入されるだけでなく、既存の料金プランも8月に一斉に値上げとなる。これまでの料金改定は、新しい料金プランが投入される一方で、契約している既存の料金プランには手は加えられなかった。しかし、今回ばかりは放っておくと8月以降、請求額が上がる。このタイミングで、契約している料金プランを見直すといいだろう。
もちろん、両社とも単に請求金額を上げるということはしていない。そんなわかりやすい値上げをしていたら、すぐにユーザーに逃げられてしまう。両社とも、通信サービスに「付加価値」をつけることで、単なる値上げではないように見せかけているのだ。
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KDDIは8月より既存の料金プランも値上げしていく - 筆者撮影
■ドコモはすべてDAZNがセットに
KDDIは衛星とスマホの直接通信サービス「au Starlink Direct」が無料で使える。衛星からの電波をスマホが直接、キャッチできるため、山奥や海の上など「圏外だけど空が見える場所」ならスマホが使えるようになる。現在はSMSなどメッセージ機能のみだが、今夏にはデータ通信も使えるようになる予定だ。ほかにも一般のユーザーよりも通信速度が速くなったり、海外でもデータ通信が使い放題になったりするなどの付加価値が盛り込まれている。
NTTドコモの新料金プラン「ドコモMAX」は月額4200円のスポーツ配信サービス「DAZN」がセットになっている。DAZNはJリーグやプロ野球、F1などを配信している。2017年に日本でDAZNが配信された時には月額980円で視聴できた。しかし、年々、値上げが続き、いまでは月額4200円。「Jリーグの試合を見たいがDAZNが高すぎて契約できない」と嘆くDAZN難民を救うべく、NTTドコモが立ち上がったのだ。
■特典でなんとなく「お得感」を出している
ただ、今回の料金改定では「データ使い放題」のプランにはすべてDAZNがセットになってしまった。そのため「DAZNなんて見ないけど、データ使い放題プランを使いたい」というユーザーの選択肢がなくなってしまったのだ。
そんなユーザーの批判をかわすべく、ドコモMAXにはDAZN以外にも「国際ローミングが30GBまで無料」「Amazon Primeが最大6カ月追加料金ゼロ円」といった特典もついている。
様々な特典を盛り込むことで、なんとなく「お得感」を訴求している。
気になる料金は、データを無制限に使うと月額8448円となる。ただ、NTTドコモでは様々な割引が適用されると月額5148円になるとアピールする。
この「様々な割引」というのは以下の5つだ。
「みんなドコモ割」3回線以上の契約で▲1100円(税込1210円)
「長期利用割」20年以上の契約で▲200円(税込220円)
「dカードお支払割」dカードプラチナ、ゴールド、ゴールドUでの支払いで▲500円(税込550円)
「ドコモ光セット割/home 5Gセット割」▲1100円(税込1210円)
「ドコモでんきセット割」▲100円(税込110円)
この5つの割引を適用しないことには「月額5148円」にならないのに対して、ネット上では「わかりにくい」「複雑」という声が出ている。
■「ahamo」誕生から5年
これまで総務省などでは「料金プランが複雑でわかりにくい。もっとシンプルにすべき」という方向性を示してきた。2020年の菅義偉政権は「日本の通信料金は世界に比べて高すぎる。4割下げる余地がある」として、国内キャリアに料金値下げを迫ったことがある。結果として、NTTドコモから20GBで3000円程度という、シンプルでわかりやすい「ahamo」が誕生した。
ahamoは「NTTドコモもシンプルで安価なプランを作れるじゃん」と賞賛され、大人気となった。しかし、あれから5年弱が経過し、新たに出てきたプランは、5つの割引施策を組み合わせ、なんとなく安く見える、従来の手法を踏襲したわかりにくい料金プランでしかなかった。
ユーザーとすれば、料金プランを見直そうとキャリアショップに出向いたものの、なかなか理解できない複雑なプランを提示され、納得いかないまま契約させられて帰るということを繰り返しそうな気がしてならない。もはや、NTTドコモをはじめとする3大キャリアは「情弱に向けた料金プラン」を押しつけているのではないか、という気がしてくる。
そんな疑問を抱き、先日、開催されたNTTドコモの決算会見において、前田義晃社長に「DAZNは要らないという声もある。もっとシンプルで安価な使い放題プランは検討しないのか」と聞いてみた。
筆者撮影
料金プラン改定の狙いを説明する前田義晃社長 - 筆者撮影
■これは「情弱」ではなく、「上客」に向けた料金プラン
すると前田社長は「通信だけでなく、その上に乗ってくる価値でどう差別化するか。その価値をニーズとしてお持ちのお客様にどうアプローチするか。こういった部分を強くして、差別化されたドコモのサービスをお楽しみいただけると思っている」と胸を張った。
さらに「わかりにくいという声も聞いているが、様々なサービスを利用していただくことでの割引を適用している。(現行プランの)eximoではお客様の半分はフルで割引が適用されていて、90%は何らかの割引が適用されている。ドコモMAXの価格自体は決して高いものではない。この路線でこれからも頑張ってやっていきたい」とした。
ここで注目したいのが「eximoではお客様の半分はフルで割引が適用されていて、90%は何らかの割引が適用されている」という部分だ。
現行のデータ使い放題プランである「eximo」では
「みんなドコモ割」3回線以上の契約で▲1000円(税込1100円)
「光回線セット割/home 5Gセット割」で▲1000円(税込1100円)
「dカードお支払割」で▲170円(税込187円)
という3つの割引施策が用意されている。つまり、データ使い放題プランを契約しているユーザーの半分は「家族みんなでドコモ回線を使い、家のネット回線もドコモ光、さらに支払いはdカード」という「ドコモ経済圏にどっぷりつかっているユーザー」なのだ。なんてドコモ愛にあふれている人が多いのだろう。
NTTドコモは「情弱に向けた料金プラン」ではなく「上客に向けた料金プラン」を作っているのだ。
■年会費2万9700円のプラチナカード
ちなみに、ドコモは去年11月、年会費2万9700円のプラチナカード「dカード PLATINUM」を発行。わずか5カ月強で60万を超える会員を集めている。
そんなdカードやd払いなど、ドコモの決済サービスを愛用してくれる人向けの料金プランとしてドコモMAXとは別に「ドコモポイ活MAX」を用意する。dカード PLATINUMで5万円以上の買い物をした場合、上限5000ポイントが付与される特典がある(通常還元は別途500ポイント進呈)。
つまり、普段の買い物もdカード PLATINUMで決済すれば、11%という還元率でポイントがもらえるというわけだ。こんな破格な優遇があるとなれば、ドコモ経済圏にさらにつかっていくことだろう。
■これからユーザーが進むべく道3つ
今回の「値上げ基調」によって、これからユーザーが進むべく道は3つだ。
ひとつは普段からスマホに依存し、データ使い放題プランしか選択肢がないようなユーザーは、現在、使っているキャリアの経済圏にこれからもどっぷりとつかっていくべきだ。
光回線や電気、クレジットカード、QRコード決済などあらゆるサービスを携帯電話会社のものにすることで、ポイントを大量に還元してもらい得になるというパターンだ。
楽天経済圏の人は迷わず楽天モバイルに切り替えるべきだ。
「そこまで経済圏につかるつもりはないが、これまでの愛着もあるので、契約していたキャリアは辞めたくない」のであれば、各社のオンラインプランやサブブランドに切り替えよう。
NTTドコモユーザーなら「ahamo」、auなら「povo」や「UQモバイル」、ソフトバンクは「LINEMO」や「ワイモバイル」といった具合だ。
ahamo、povo、LINEMOはオンラインで契約できるので、店頭で何時間も待たされないのでストレスがない。一方で「よくわからないから店舗のスタッフに相談したい」のであればUQモバイルもしくはワイモバイルだ。
毎月30GB以下のユーザーであれば、いずれのプランやブランドを契約すれば、月々4000円以下の出費で収まる。
■JALもモバイル通信サービスを開始
一方で、「そんなにスマホは使わず、毎月数GB程度で収まっている」というのであれば、いわゆるMVNO、キャリアから回線を借りてサービスを提供している「格安スマホ」に切り替えるべきだ。
安心感で選ぶなら最大手のIIJmioや2番手のmineo、近くにイオンがあるなら店頭で対応してくれるイオンモバイルがオススメだ。
1回線を1000〜2000円程度で維持することも不可能ではない。
最近では日本航空が「JALモバイル」という、新規契約と月々の利用でマイルがもらえる通信サービスを始めた。国内線特典航空券「どこかにマイル」の通常往復7000マイルが1500マイルで利用できるなど、旅好きにはうれしい特典が用意されている。
各社の値上げにより「何もしないのが一番損」という時代になってきた。一刻も早く、自分に合った料金プランやブランドを見つけるべきだし「面倒でわからん」という人は子供や詳しい知人にお小遣いを渡して、手続きを手伝ってもらうことを強くオススメしたい。
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石川 温(いしかわ・つつむ)
ジャーナリスト
1998年、日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、月刊誌『日経トレンディ』編集記者に。2003年に独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、テレビ、雑誌で幅広く活躍。
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(ジャーナリスト 石川 温)
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