自閉症やADHDの人を動物で表現、職場の「困った人」扱いに批判 カウンセラーの新刊でイラスト担当が謝罪「真摯に受け止める」
2025年4月17日(木)18時23分 J-CASTニュース
ASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠如・多動症)の人などを職場の「困った人」などと表現した産業カウンセラーの新刊著書について、差別を助長するのではないかと、ネット上で批判が噴出している。
こういった人々を動物に例えたイラストにも批判が出て、描いたイラストレーターが「真摯に受け止めております」などとnoteへの投稿で謝罪する事態になっている。
発達障害の1つを「こだわり強めの過集中さん」
この著書は、「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)。著者は、発達障害などの相談で35年のキャリアがあるという神田裕子氏で、2025年4月12日に著書の見本が届いたとXで写真を投稿して、24日に発売すると告知した。価格は1980円(税込)で、すでにアマゾンで予約を受け付けている。
アマゾンなどでの著書紹介によると、職場の「困った人」をどう扱うかノウハウを伝授するのが著書の目的で、6タイプに分けて対応をマニュアル化している。発達障害の1つとされる自閉スペクトラム症(ASD)のタイプについては、「こだわり強めの過集中さん」と紹介し、「すぐにキレる!」「気まずくなると急にいなくなる」などとした。愛着障害は「愛情不足のかまってさん」、うつ病などの疾患は「頑張りすぎて心が疲れたおやすみさん」などと表現している。それぞれのタイプについて、動物に例えたイラストが描かれていた。
広告では、「なぜ、いつも私があの人の尻拭いをさせられるのか?」と被害意識を煽るともとれる表現を交えながら、「『戦わずして勝つ』ためのテクニックが満載!」などとPRしている。
この著書内容が15日ごろにXで拡散され、専門家からも疑問や批判が寄せられた。
ネット上では、「社会生活に生きづらさを抱えている人々に対し、失礼では」「動物化しちゃったのはちょっとやりすぎ」「差別の助長だと思う」などと意見が相次いだ。「『困った人』じゃなくて『困っている人』でしょ」「出版社の人は誰も止めなかったの?」との指摘も出た。
一方で、「迷惑かけてたりするんだろうから、相手の大変さはわかる」「管理職からの共感を集めると出版のプロが判断した」といった意見も一部であった。
イラスト担当は、批判を「真摯に受け止める」と謝罪
新刊著書が炎上する騒ぎを受けて、イラストを担当したイラストレーターの芦野公平さんが4月16日、「装画に関するご報告と経緯のご説明」と題する投稿をnoteで行った。
そこでは、「当該装画について差別的な印象を受けたというご意見があることを、真摯に受け止めております」などと謝罪したうえで、描いた経緯をつづった。
それによると、出版社からは、社会的な背景を持つ登場人物を生き生きと肯定的に描くという指示を受けてラフを出したが、その後に、登場人物を動物に置き換えてほしいと依頼されて描き直したという。その中では、批判される可能性があるとの自覚も一方であったが、「危うさを感じつつも制作を進めたことは認めます」と明かした。そして、「図案変節の時点で、全体の構造や影響を見通す力、制作チームでのコミュニケーションを厭わない態度が不足していた点を深く、そして最も反省しております」としている。
今回の炎上について、出版社や著者はどのように考えているのか。
こうした点について、J-CASTニュースでは17日に取材を申し込んでおり、回答があり次第、追って伝える。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)