《懲役4年のはずが…》被害者女性は勤め先を退職→正社員になる夢も喪失…下請け会社の23歳女性に性暴力をふるった「46歳男のその後」(2009年の事件)
2025年4月19日(土)18時0分 文春オンライン
〈 「抗議なんてとんでもない。仕事がなくなってしまう」取引先の男性社員(46)から性暴力を受けた23歳女性…“正社員になるのが夢”だった彼女に退職を決意させた「上司のありえない対応」(2009年の事件) 〉から続く
権力差を利用して、下請け会社の契約社員の女性(23)に性暴力をふるった、日本最大手の電気通信会社に勤める46歳男。この事件はどんな結末を迎えたのか? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の3回目/ 最初 から読む)

◆◆◆
「無罪です」弁護側はわいせつ行為を否定
不同意性交等罪がなかった時代とはいえ、倉田の弁護人の主張はこんな具合だ。
「倉田さんは無罪です。この事件は彼女にその気があるのではないかと思った男と、はっきり断らなかった女の間で起こった些細なトラブルにすぎません。倉田さんは無理やり性的なことをしようと考えたことはないし、脱出を困難にした事実もありません。胸を舐めたり、陰部に指を入れたことは認めます。しかし、A子さんは黙って応じていた。暴行や脅迫もありませんでした。倉田さんは鈍感だったかもしれませんが、犯罪ではない。検察官は有罪であることを立証できないでしょう」
法廷にはビデオリンク方式でA子さんが検察側証人として出廷した。
検察官:事件当日はどのような服装で行きましたか?
A子さん:白のカッターシャツにベージュのズボンで行きました。自宅に帰ってからパンツの紐が引き裂かれていたのに気付いた。ブラジャーも紐が取れていました。
検察官:事件後、仕事には行きましたか?
A子さん:行っていません。もう二度と被告人と会いたくなかった。会社も私を引き止めようとはしなかった。正社員を目指して頑張っていたのに辛いです。
検察官:事件後に変化はありましたか?
A子さん:電気通信会社に関するものを見ると、思い出して辛くなる。ホテルの最寄り駅にはもう行きたくない。新しい仕事を始めたが、以前の勤務先があった駅には降りられなくなってしまった。
検察官:被告人に金銭を要求したことはありませんか?
「1日も長く刑務所に入ってほしい」
A子さん:ありません。相手側の弁護人に「示談したい」と言われたけど、示談しませんでした。お金が欲しくて訴えたわけではないし、絶対に執行猶予を付けてほしくありません。
検察官:今、被告人に対してどんな気持ちですか?
A子さん:被告人が膝の上で寝ている間、これからどうやって生きていこう、死にたいと考えていて、警察に行ってからも親や友人には言えず、1人で考えていて、とても苦しくて、信用していた上司や同僚が被告人の証人になってしまったことも辛いです。体の傷は治っても、心の傷は治らない。私が「やめてください」と何回も言ったのにやめてくれなくて、今も反省せずに私を責めるようなことを言ってきて、許せないです。1日も長く刑務所に入ってほしい。
懲役4年の実刑だったはずが…
一審判決で倉田に下されたのは懲役4年の実刑。その瞬間、倉田は身じろぎもせず、呆然と立ち尽くした。それと同時に職場の「懲戒解雇」も確定したからだ。
「会話の一部分のみを取り上げて同意があったとするのは失当。被害者は極めて力の弱い契約社員であり、被告人が仕事上優位な立場を利用し、わいせつな行為をしたのは明らかに認められる。そもそも企業コンプライアンスを認識して行動すべき立場であるのに、若い女性を終電近くまで飲みに連れ回し、助けを求めるのが困難な状況に陥らせ、卑劣かつ破廉恥極まりない犯行に及んだ。公判廷においても不合理な弁解に終始し、真摯に反省しているとも認めがたい」
ところが、この事件にはまだ続きがある。倉田は控訴したが、取り調べを担当した警察官3人を偽証罪や証人威迫、虚偽有印公文書作成などの罪で告発したのだ。
前代未聞の事態に…
告発状によると、警察官3人はA子さんの上司に「被告人は悪人だ。悪人と被害者のどっちを守るんだ」などと迫り、被害者の供述に沿う内容の虚偽の調書を作成したというものだ。
また、3人のうち1人は、事件直前に倉田とA子さんが来店していたスナックの女性経営者が「被告人は威圧的に説教していた」「被害女性は沈痛な面持ちで、言われるがままの状態だった」と証言していると装った虚偽の捜査報告書を作成し、「検事があとで聞きに来ても、『楽しんでいるように見えた』とは言わないで」と電話で口止めしたという。
それが功を奏したのか、控訴審では被害者の証言について「やや誇張して述べている可能性がある」と指摘した上で、「ホテルから出られないほどの強制があったとは言えない」として監禁罪については無罪とし、懲役3年に減刑した。裁判員裁判判決を破棄し、一部でも無罪とした控訴審判決は初めてだった。
(諸岡 宏樹)
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