救急隊のコンビニ利用「理解して」、車両に「水分補給実施中」表示も…連続出動が常態化

2025年4月19日(土)13時3分 読売新聞

出動する救急隊員たち(千葉市で)

 消防の救急出動が増加傾向にある中、出動中の救急隊がコンビニ店で飲み物や食べ物を購入することを認める動きが千葉県内で広がっている。読売新聞の調査によると、県内31の消防局・本部のうち、約半数の15機関が許可している。次の出動に備えた隊員の疲労回復のほか、夏場の熱中症予防につなげる狙いもある。(岡田優人、新妻千秋)

 「隊員の連続出動と労務管理のバランスを取るため、理解をお願いしたい」

 4月から隊員のコンビニ利用を認めた流山市消防本部の担当者はこう話し、市民に理解と協力を求めた。

 同本部では熱中症の増加などに伴い、直近3年間の救急出動件数がいずれも1万件を超えた。1件あたりの活動時間は約80分と長時間化し、連続出動も常態化している。

 以前から搬送先の病院の売店などで食べ物や飲み物を購入することを認めていたが、隊員が休憩を取りにくい状況が続き、負担が増している状況を踏まえ、コンビニの利用も許可した。

 読売新聞が今月上旬に行った調査によると、流山市に加え、千葉市、市川市、船橋市など県内15の消防局・本部が、隊員のコンビニでの飲み物や食べ物の購入を認めている。いずれも病院にあるコンビニや売店の利用も合わせて許可している。

 船橋市消防局は、コロナ禍で隊員の負担が増したことを受け、2022年7月からコンビニ利用を可能とした。以前から病院の売店の利用を許可していたが、「夜は売店が開いていない。隊員からは『助かる』との声が上がっている」という。

 7市町村で構成する長生郡市広域市町村圏組合消防本部は飲み物の購入とトイレ利用でコンビニへの立ち寄りを認めているが、食べ物の購入は認めていない。「夏場の水分補給などで利用することを想定している」としている。

 隊員のコンビニ利用に関しては、救急服姿での立ち寄りが市民らの目に触れ、「勤務中に休んでいる」などと、SNS上で論議を呼んだことがある。一方で、増加する隊員の負担に理解を示し、コンビニ利用に好意的な意見も多い。

 24年2月から許可している木更津市消防本部は、コンビニにチラシを配り、店内に掲示してもらうことで、隊員もコンビニを利用することがあると周知している。

 四街道市消防本部は、隊員のコンビニ利用中に車両のフロントガラスに「水分補給実施中」と表示。香取広域市町村圏事務組合消防本部も「コンビニエンスストア利用中」と掲示して理解を求めている。

 搬送先の病院内にある売店やコンビニに限定して利用を認めている消防機関も11ある。このうち八千代市と君津市の消防本部は、病院外のコンビニについても禁止とせず、やむを得ない場合は利用できる運用としているという。

 県内の救急出動件数は、右肩上がりで推移している。14年度は約29万7000件だったが、23年度には約39万9000件に上った。交通事故や火災の出動は減少傾向、横ばいだが、急病の出動は増加傾向にある。高齢化などが背景にあるとみられ、県消防課によると、出動の増加傾向は今後も続くとみられるという。

 こうした中、コンビニ利用を認める動きは今後も増えるとみられる。習志野市消防本部は、搬送先の病院の売店利用を認めているが、病院外のコンビニについても利用を認める方向でルール作りに着手。「隊員の負担軽減につながるように検討する」としている。

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