福知山線脱線事故で両脚負傷、今も装具つける市職員が間もなく父に…葛藤と感謝の思い込めた曲熱唱

2025年4月22日(火)10時53分 読売新聞

コンサートで「君と歩く道」を披露した山下さん(兵庫県伊丹市で)

 JR福知山線脱線事故から25日で20年になるのを前に、事故の犠牲者を追悼するチャリティーコンサートが20日、兵庫県伊丹市荒牧南の障害者支援施設で開かれた。重傷を負った同市職員、山下亮輔さん(38)が出演。間もなく第1子が生まれることを報告し、今まで支えてくれた人たちへの感謝の思いを歌に込めた。(新谷諒真)

 伊丹市内の自宅から近畿大に通学途中で事故に巻き込まれた。両脚が長時間圧迫されたため、筋肉が壊死えしする「クラッシュ症候群」と診断を受け、長期の入院生活を送った。今も両脚に装具をつけ、歩く時につえを使う。

 歩行準備の頃、不安が押し寄せた。学校に行けるのか、就職できるのか、結婚できるのか——。付き添いの看護師らが親身になって話を聞いてくれて救われた気持ちに。その経験を伝えたいと考えた。

 退院後、趣味の音楽を生かし、当時の葛藤や、感謝の思いを盛り込んだ「君と歩く道」を作詞。市役所に就職後も、音楽会や講演で経験を語ってきた。

 この日のチャリティーコンサートでは約60人の観客を前に、4曲を披露。スピッツの「春の歌」や菅田将暉さんの「さよならエレジー」など、前向きな音楽を選曲し、会場を盛り上げた。

 「君と歩く道」を歌う前には、必ず事故を振り返り、周りの支えで克服できたことを強調する。この日も「『励ましていく立場になりたい』と思って作った曲」と語りかけると、観客が聴き入った。

 〽大きな闇に取り囲まれても 君がいてくれる事が光となり 一歩踏み出す勇気となる——。

 今月末には待望の長女が誕生する予定だ。報告すると、大きな拍手や「おめでとう」の歓声で包まれ、「新たな人生が始まるけど、温かく見守ってほしい」と笑顔で呼びかけた。

 近年、20歳以下の人々を前に話す機会が多くなった。若い世代に、ただつらい体験を伝えたいわけではない。強調したいのは、周りの支えのおかげで前進できたことだ。「悩む人や苦しんでいる人、支えたいけれど、どうしていいか分からない人たち。そんな人らを後押しできれば」

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