ローマ教皇死去 平和への訴えを深く胸に刻め

2025年4月24日(木)5時0分 読売新聞

 世界で戦火がやまず、多くの人命が失われている。かつてない危機の深まりの中、平和への訴えは極めて切実だった。

 カトリック教会最高指導者のローマ教皇フランシスコが死去した。

 2月に入院し、一時は危篤とされたが持ち直し、死去の前日にはバチカンで信者の前に姿を見せてキリスト教の復活祭の声明を発表したばかりだった。

 声明では「平和は可能だ!」として、パレスチナ自治区ガザの戦闘停止を呼びかけた。ウクライナでの公正で持続的な平和を達成するため関係国に努力を促した。

 死の直前まで和平の希望を訴え続けた教皇の「遺言」は重い。世界の安定に責任を負う立場にありながら混乱を深めている大国の指導者らは、胸に刻むべきだ。

 約14億人の信者を有するカトリック教会のトップに2013年に選ばれた。以来12年にわたり、信者のみならず、紛争や貧困に苦しむ人々の救済に力を尽くし、言葉と行動で平和の尊さを説いた。

 16年米大統領選で候補者だったトランプ氏がメキシコ国境に壁を建設すると訴えると、「橋ではなく壁を築くことばかり考える人はキリスト教徒ではない」と批判した。宗教指導者として超大国にも臆することはなかった。

 19年には教皇として38年ぶりに日本を訪れ、長崎と広島から核廃絶を世界に訴えた。

 在位中訪れた国は約60を数える。初めて南米から選ばれた教皇として、欧州出身の歴代教皇があまり目を向けてこなかったアフリカやアジアの途上国にも積極的に足を運んだ。欧米で進む教会離れへの危機感もあったのだろう。

 大国の思惑によって世界の分断が深まる中、立場の異なる相手と向き合い、寛容の精神を体現しようとした姿勢は際立っていた。

 キリスト教が東西分裂して以降、東方正教会の最大勢力であるロシア正教会トップと初めて会談した。中国とは、中国側が選ぶ司教候補をバチカンが任命する暫定合意を結んで関係を改善した。

 「開かれた教会」を目指して改革を進めた。司祭が同性カップルに祝福を与えることを認めるなどタブーの打破に挑んだが、伝統を重んじる保守的な聖職者から強い批判を招いた。

 近く教皇に次ぐ高位聖職者の枢機卿による投票が行われ、新しい教皇が決まる。戦争の出口が見えない中、新教皇が、平和で寛容な世界の実現に向けて志を引き継ぐことを期待したい。

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