5月の呼称「皐月」なんと読む?

2024年5月1日(水)5時10分 ウェザーニュース

2024/05/01 05:06 ウェザーニュース

新緑が目にまぶしい5月。「皐月(さつき)」という和風月名が馴染み深いですが、その他にも5月の異称がたくさんあるのを知っていますか?
『二十四節気と七十二候の季節手帖』などの著者で作家の山下景子さんに、皐月の由来とその他の5月の異称について伺いました。

なぜ「皐月」と呼ぶのか?

「“皐月”の“さ”は、田の神、あるいは、田の神に捧げる稲を表すといわれます。また、“早苗月(さなえづき)”の略だとする説もあります。
早苗の“さ”は、時期的に早く若々しいという意味の接頭語とも考えられますが、皐月の“さ”と同じと解釈することもできますから、やはり、田の神と関係があるのでしょう。
“皐月”を音読みで“こうげつ”と読んでも、5月の異称です。“皐”にはいろいろな意味がありますが、水田という意味も持っています」(山下さん)

その他の5月の呼び名は?

旧暦の時代は、皐月以外にも5月の異称がたくさん使われていたそうです。その中からいくつかを選んで、山下さんに解説していただきました。

【早苗月】(さなえづき)

稲の苗は、苗代(なわしろ)で育てられ、20センチほどに生長すると、田植えをします。この頃の苗を早苗といいます。
旧暦では、5月が田植えの月です。つまり、早苗の時期だということで、「早苗月」と呼ばれました。
また、早苗を苗代から取るという意味で「早苗取り月」という異称も使われました。

【五月雨月】(さみだれづき)

「五月雨(さみだれ)」は、梅雨のことです。
「さ」は皐月の「さ」と同じで、「みだれ」は「水垂(みだ)れ」。田の神が降らせる恵みの水ということなのでしょう。
昔は梅雨の雨を利用して、田植えをしました。
旧暦では、5月が梅雨の時期にあたります。そこで、「五月雨月」とも呼ばれるようになりました。

【月不見月】(つきみずづき)

梅雨の時期は、厚い雲におおわれて、月がめったに見られません。そこから、旧暦5月は「月不見月」とも呼ばれます。
この時期の夜の暗さを、「五月闇(さつきやみ)」といいます。
電気のない時代、月があるのとないのとでは、夜の暗さは大違い。闇夜の続く日々を、昔の人々はどんな思いで過ごしたのでしょうか。

【梅の色月】(うめのいろづき)

梅雨は、梅の実が熟する頃の長雨なので、「梅雨」と書くようになったといわれます。
旧暦5月頃は、梅の実が熟す時期。青い実が、次第に黄色く、赤く色づいていきます。そこから、「梅の色月」という異称もつけられました。
また、「梅月(うめづき・ばいげつ)」も、旧暦5月の異称です。

【午月】(ごげつ)

「午月」は「端午(たんご)の節句」が行われる月という意味で、5月の異称です。
「端」には、初めという意味があります。端午の節句は、本来は月初めの午(うま)の日の行事でしたが、のちに5月5日になりました。
この時期は、疫病や害虫に悩まされたことから、端午の節句に、邪気を払い疫病退散を願ったそうです。

【田草月】(たぐさづき)

「田草月」も、5月の異称です。
「田草」は、田の中の稲に交じって生える雑草のこと。この頃になると、どんどん生えてきます。
田草を取り除く作業は、「田草取り」といって、田植えの後の大事な仕事でした。
田草は、抜いてもすぐ生えてきて、稲の生長を妨げます。ですから、何度も行わなければなりませんでした。

【橘月】(たちばなづき)

旧暦5月は「橘」の花が咲くことから、「橘月」という異称も持っています。
橘はミカン科の植物。その花は真っ白で、さわやかな香りを放ちます。
〜さつき待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする〜(よみ人しらず『古今和歌集』)
この歌から橘は、別れた人や過ぎ去った日々を思い起こさせる花となりました。
今の5月と、旧暦の5月とでは、ずいぶん季節感が違いますね。
でも、現在の5月でも、橘の花が咲きます。その香りから、昔の人々の暮らしをしのんでみるのもいいかもしれません。
そして、来たるべき梅雨を念頭に置きつつ、光あふれる現在の5月を満喫しましょう。

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