火遊びで家が全焼、煙草とシンナーは小学生から常習…虐待されて育った“13歳の少女”が義兄にレイプされながら「考えていたこと」

2025年5月4日(日)18時0分 文春オンライン

〈 「自分でも思うけど、クズな人生だった」小2で煙草、小4でシンナーに手を出し…「16歳の風俗嬢」が出産した“ヤクザの子”が語った壮絶すぎる半生 〉から続く


 国家から「反社会的組織」と定義されている暴力団。その構成員や準構成員の家族、とりわけ子どもはどのような人生を過ごし、大人になっていくのか。『 ヤクザの子 』(石井 光太著、新潮社)から、16歳の風俗嬢とヤクザが不倫した末に生まれた赤塚未知のケースをお届けする。なお、登場する証言者やその関係者は、身に危険が及ぶことを考慮して全て仮名にしている。(全3回の2回目/ 前回を読む / 続きを読む )



未知の父は複数の女性と12人の子供をもうけていた ©takasu/イメージマート


◆◆◆


 未知は語る。


「お父さんは、女にだらしないヤクザだったんだろうね。私と妹を引き取った時点で、四度の結婚歴があって、全員で12人の子供がいた。私らが養子に入った家にも、お父さんと義母の子供が3人いた。そこに私たち姉妹がやって来るんだから、義母からすれば『愛人に産ませたガキを連れてきやがって、ふざけんな』ってなるよね。でも、お父さんには言えないもんだから、私たちに暴力を振るってたんだ。


 義母の虐待はエグかった。実子3人と私たち養子2人を徹底的に差別したね。実子はベッドで寝かせるのに、私たちは布団も与えられずに固い床で寝かせられた。ご飯もすべて残飯で、まったくもらえない日もあった。さらに、何かにつけて文句を言っては殴ってきた。立っていれば『邪魔だ』って殴られて、すわっていても『邪魔だ』って殴られる。火のついたマッチを体中に押し当てられたこともあった。


 お父さんは虐待に気づいていたけど、見て見ぬふりをしていたよ。元を正せば自分が悪いんだから何も言えた義理じゃないよね。私たちにしてみたって、家に置いてもらえるだけで御の字なんだから、助けてなんて言えなかった。お腹が空いたら、お父さんの財布から金を取って食べ物を買っていた」


 義母の暴力にさらされる日々の中で、未知にとって唯一の気晴らしが火遊びだった。義母に殴られた後、隠れてマッチを擦っていろんなものを燃やし、火を眺めていると、不思議と心が落ち着いた。


 だが、これが思わぬ災いを生む。


小2で煙草を吸い始め、小4でシンナーに手を出した


 ある日、火遊びから火事を起こし、家を全焼させてしまったのだ。家族は無事だったが、未知は一人だけ家族から引き離され、問題行動を起こす子供たちが集められる施設へ送られた。


 そこは、山梨県の片田舎にある「K研究所」だった。全国から数百人の問題児たちが集められ、矯正指導が行われていたのだ。今でいえば、発達特性を抱えた子供や、虐待によって人格がゆがんだ子供が、当時は「問題児」として一括りにされて預けられていたのである。施設は子供たちを宿舎で寝泊まりさせ、集団生活や農業活動を通して、意識改革を促していた。


 昔はこうした施設が全国各地にあったが、そこで行われる指導は必ずしも適切なものではなかった。未知に言わせれば、K研究所も同じで、職員は日常的に体罰を行っていた上に、子供同士のいじめもはびこっていた。悪い先輩の影響で、未知は小学2年から煙草を吸いはじめ、4年生でシンナーに手を出した。


 小学6年の時、未知はK研究所で立て続けに暴力事件を起こし、教護院(現・児童自立支援施設)へ送られることになった。もはやK研究所でさえ手に負えないほど、荒れていたのだ。


 教護院を出たのは、13歳の時で、帰住先は父親の敏夫のもとだった。千葉の家で暮らすようになったことで、再び義母による虐待の日々が幕を開けた。


「てめえなんて生まれてこなけりゃよかったんだ!」


 中学生になっていた未知は暴力から逃れるため、地元の不良グループと付き合って家に寄り付かなかった。仲間の家を泊まり歩き、たまに家に帰って義母に叱(しか)りつけられれば、反発してまた家を飛び出す。


 ある日、未知が義母と決別する出来事が起こる。夜、未知が不良仲間とともに盗難バイクを乗り回して遊んでいたところ、通報を受けた警察に取り囲まれて捕まった。未知たちは警察署で取り調べを受けた後、一人ひとり保護者に引き渡されていった。


 未知を引き取りにやって来たのは、義母の長男だった。家に敏夫と義母が不在だったため、長男が代わりに来たのだ。この時、20代後半だった長男は、住吉会の準構成員として敏夫の経営する暴力団のフロント企業で働いていた。


 家に帰ると、長男はいきなり未知の顔を殴りつけて激怒した。もっとも近づきたくない警察署へ呼び出されたことが気に入らなかったのだ。彼は室内にあった木刀を手に取り、滅多打ちにした。


「てめえ、好きなことして俺に迷惑かけんじゃねえよ。ソープ嬢が産んだ子供のくせに、何様のつもりだ!」


 あまりに激しく殴られるため、未知は言い訳さえできなかった。さらに長男は木刀で殴りつけた。


「お袋はてめえが家に来てからおかしくなったんだよ。俺たち血のつながった兄弟まで迷惑してんだ。てめえなんて生まれてこなけりゃよかったんだ!」


レイプされた未知は「暴力団の寮」に転がり込んだ


 長男も長男で、父親が不倫でつくった子供に鬱屈した思いを抱いていたにちがいない。それが警察の一件によって爆発したのだ。


 彼は、殴られて足腰が立たなくなった未知に覆いかぶさり、着ていた服を無理やり脱がして、レイプに及んだ。未知は天井を見つめてされるがままになりながら、「もう、この家には住めないんだな」と考えていたという。


 レイプが終わった後、未知は痛む体を引きずりながら、家を出た。頼ったのは、親しくしていた不良仲間たちだった。だが、中学生だった彼らには、彼女の衣食住を保障するだけの力がない。


 仲間内で話し合って出した結論が、地元の先輩で、稲川会の構成員となっている男に相談することだった。構成員に会いに行くと、未知は藁にもすがる気持ちで事情を話した。彼はしばらく考えてから言った。


「俺は今、部屋住み専用のマンションで生活してるんだ。他にも何人か若い衆がいる。そこでいいなら、住まわせてやるぞ」


 暴力団に入ると、新人は部屋住みといって事務所や親分の家で暮らしながら、雑務や警備といった下働きをする。ただ、事務所や家が広くない場合は、マンションの一室を寮として借りて、そこで寝起きすることがあるのだ。


「わかりました。そこに住まわせてください」


 行き場所がない未知には、他に選択肢がなかった。

〈 13歳少女の「覚醒剤人生」は、“密売所”でセックスに溺れる“クスリ漬けの母”のせいで始まった…“ヤクザの子”が振り返る「衝撃人生」 〉へ続く


(石井 光太/Webオリジナル(外部転載))

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