「自分でも思うけど、クズな人生だった」小2で煙草、小4でシンナーに手を出し…「16歳の風俗嬢」が出産した“ヤクザの子”が語った壮絶すぎる半生

2025年5月4日(日)18時0分 文春オンライン

 国家から「反社会的組織」と定義されている暴力団。その構成員や準構成員の家族、とりわけ子どもはどのような人生を過ごし、大人になっていくのか。『 ヤクザの子 』(石井 光太著、新潮社)から一部抜粋し、16歳の風俗嬢と既婚者ヤクザが不倫した末に生まれた女性のケースを紹介する。彼女は小さなころに育児放棄され、義母からは暴力を振るわれ、煙草とシンナーの味を小学生時代に覚えるという壮絶な幼少期を送っていた——。なお、登場する証言者やその関係者は、身に危険が及ぶことを考慮して全て仮名にしている。(全3回の1回目/ 2回目を読む / 3回目を読む )



「ヤクザの子」たちの壮絶な人生とは ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート


◆◆◆


7人のヤクザを相手に8人の子供をつくった女性


 千葉県内の2階建てのアパートが、赤塚未知(あかつか みち)の今の住居だ。


 2DKの部屋には、家具といった家具がなく、むき出しの床に灰皿と缶ジュースが置いてあるだけだ。台所にはコンビニ弁当とペットボトルの入った袋がいくつも置かれて異臭を放ち、寝室には汚れた布団が敷きっぱなしになっている。


 ここには、未知の他に稲川会の構成員である夫、1歳の五女、5歳の三女、そして17歳の次女が住んでいる。未知にはこれ以外にも5人の子供がおり、18歳の長女は結婚して妊娠中、他3人は児童養護施設に入所している。


 彼女は耳を疑うようなことを口にした。


「私、8人子供がいるけど、2人だけ同じで、後は全員父親が違うの。しかも、その7人の男はみんなヤクザだよ」


 未知は1974年の生まれで、まだ40代だが、前歯がないために呂律が回らず言葉が聞き取りにくい。かつて付き合っていた構成員の男に顔面を殴られて、前歯を折られたという。しかも、覚醒剤の後遺症で記憶がつづかないらしく、話題があちらこちらに飛んでとりとめがない。


 未知は取材に応じた理由を次のように述べた。


「医者から癌だって言われて、余命も短いみたいだから困ることなんて何もねえ。何だってしゃべるよ」


「こんな人生にしたのは、あのクソババアのせい」「あの世でぶっ殺してやる」


「自分でも思うけど、クズな人生だった。でも、こんな人生にしたのは、あのクソババアのせいなんだよ。何もかも、全部あのクソババアがいけねえんだ。あの世で会ったら、絶対にぶっ殺してやるって誓ってるんだ」


 ババアとは、未知の母親のことらしかった。なぜ、そこまで血のつながった母親を憎むのか。それは7人の暴力団構成員との間に子供をつくったことと関係があるのか。


 彼女の話に耳を傾けることにした──。


16歳の風俗嬢とヤクザが不倫した末、未知は産まれた


 未知は、千葉県の病院で生を受けた。まず、その経緯からして壮絶だった。


 出産当時、母親の紹子(しょうこ)は、当時16歳の風俗嬢だった。幼い頃から素行に問題があり、小学生の頃から喧嘩、万引き、恐喝をくり返し、15歳で女子少年院に送致されたそうだ。1年ほどして出院した後は、年齢を偽ってソープランドに勤務。


 このソープランドに常連客として来ていたのが、指定暴力団住吉会の構成員の南田敏夫(としお)だった。彼は住吉会のフロント企業として不動産業を営んでおり、地上げや競売といったビジネスにかかわっていた。


 敏夫は家庭を持っていたが、紹子を気に入り、やがて店の外でも会うようになる。2人は覚醒剤を打ちながらセックス三昧の日々を送っていたらしい。間もなく紹子は妊娠に気がつくが、その時には人工中絶できない時期になっていた。彼女は仕方なく出産することにする。


 敏夫はそれを聞いて言った。


「産むしかないならそうすればいい。ただし、俺は妻と離婚しないし、子供も育てないぞ。養育費として4000万円やるから、自分で何とかしろ」


 紹子は4000万円をもらい、未婚のまま娘を産んだ。これが未知だった。


母は薬物とセックスに溺れ、未知たちは餓死寸前まで育児放棄された


 こんな痛い目に遭っても、2人は性懲りもなく逢瀬を重ね、覚醒剤を打ってはセックスをした。薬物による快楽から抜け出せなくなっていたのだ。1年後にはまた新しい命が宿り、紹子は同じような経緯で次女を出産した。


 紹子は18歳で2児の母親となったが、頭の中は覚醒剤のことで占められており、子育てをしようとさえ思わなかった。ソープランドの仕事で稼ぐ金はその日のうちに覚醒剤に消え、敏夫と意識がなくなるまで狂ったようにセックスに溺れる。何日も家に帰らないので、未知たち娘はアパートに放置された。


 育児放棄に気がついたのが、父親の敏夫だった。用事があって紹子のアパートを訪ねたところ、娘たちが餓死寸前までやせ細り、動けなくなっていた。敏夫の119番通報によって、千葉大附属病院に運ばれて救命処置を受け、一命を取り留めた。


 敏夫は再三、紹子に子育てをするように言ったが、聞く耳を持とうとしない。彼は自ら招いたことだと悔やみ、未知と次女を引き取って養子として育てることにした。


 だが、敏夫の妻にしてみれば、夫が16歳のソープ嬢との間につくった子供を押しつけられて、愛情を注げるわけがない。ゆがんだ感情は、未知たちに対する虐待となって現れる。

〈 火遊びで家が全焼、煙草とシンナーは小学生から常習…虐待されて育った“13歳の少女”が義兄にレイプされながら「考えていたこと」 〉へ続く


(石井 光太/Webオリジナル(外部転載))

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