野球場の一角で温泉を掘る村、きっかけは屋内プール光熱費の節約…村長「掘り当てれば一石二鳥だ」

2025年5月5日(月)15時2分 読売新聞

村のグラウンドの一角に組み上がった高さ30メートル超のやぐら。大型連休明けに掘削が本格化する(西郷村で)

 村営の屋内プールにかかる光熱費を節約しようと、福島県西郷村が村有地で温泉の掘削を進めている。ここ数年、水温を維持するための電気代が高騰しており、温泉を熱源として利用する計画だ。どれだけのお湯が出るのか不透明だが、ユニークな経費削減の試みとして挑戦している。(中川竜一)

「50度以上なら掘削費用まかなえる」

 村は今年度予算に掘削費用として1億538万円を計上した。今年1月、「村民屋内プール」向かいの村民野球場のサブグラウンドの一角で、ボーリングの準備作業が始まり、4月にやぐらが組み上がった。大型連休明けから本格的に掘削を行い、最大で地下約1500メートルまで掘る計画だ。

 村によると、通年で利用されている屋内プール(25メートル×6コース)はオール電化仕様。2017年度は1年間の電気代が約1750万円だったが、円安や国際情勢の影響で電力料金が上昇し、22年度は約2300万円に。23年度は節電や設備の一時休止などで微減できたが、集計中の24年度も22年度並みか、それ以上を見込んでいる。

 村の担当課は「電気代の6〜7割がプールの水を温めるために使われており、今後の光熱費を考えると、温泉掘削で50度以上のお湯が出れば、掘削費用がまかなえる」と試算する。

 温泉はお湯をそのままプールに張るのではなく、熱交換装置を使って地熱として利用する。全国で井戸や温泉の掘削を手がける企業が加盟する「一般社団法人 全国さく井協会」(東京都)のベテラン事務局員は「普通はお風呂に使うために温泉を掘るものだが、プールを温めるためにわざわざ掘るという話は聞いたことがない」と話し、全国的にも珍しい取り組みとみられる。

 問題は、目標通りに温泉を掘り当てられるかどうかだ。本県は温泉・地熱資源に恵まれ、村の掘削地から十数キロ・メートルの所には新甲子温泉、甲子温泉があり、「事前の調査では温泉が出る可能性が高い」(村担当者)という。ボーリングを請け負う業者も「近隣の複数のレジャー施設でも温泉を掘り当てた実績がある」とするが、湯温、湧出量は実際に掘ってみないと分からない。高橋広志村長は「温泉を掘り当てることができたら、新たに入浴施設も作れる。そうなれば一石二鳥だ」と話している。

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