日銀金融政策 利上げシナリオ練り直したい

2025年5月6日(火)5時0分 読売新聞

 トランプ米政権の高関税政策で世界経済は大きな混乱に陥っている。日本経済の先行きも不透明感が極めて強い。

 日本銀行は、これまでの利上げシナリオを柔軟に修正していく必要がある。

 日銀は金融政策決定会合を開き政策金利を0・50%程度に据え置くことを決めた。3月に続いて2会合連続で金利を維持した。

 政策は維持したが、トランプ関税を受けて新たに示した経済と物価の見通しは大きく変えた。

 2025年度の成長率について1月時点から0・6ポイントも大幅に引き下げ、0・5%とした。26年度も0・7%にとどまるとみる。

 消費者物価指数の上昇率も25年度が2・2%、26年度は1・7%と、いずれも下方修正した。

 日銀はこれまで、経済と物価が見通しに沿って動くなら利上げする、との方針を示してきた。

 だが、植田和男総裁が記者会見で「不確実性が極めて高い」と繰り返したように、景気の先行きリスクは急激に増大している。新たな経済見通しを踏まえれば、利上げの道筋は、いったん立ち止まり慎重に再点検するべきだろう。

 金融市場では、今夏までの利上げを見込む声が強かった。しかし、日銀が経済見通しを発表後、利上げ時期は先送りされるとの見方が広がり、円安も進んだ。

 高関税政策の展開によっては、輸出の減少や設備投資の手控え、賃上げ機運の低下など日本経済に甚大な打撃が及ぶ恐れがある。関税の影響について分析を深め、政策判断に生かすことが重要だ。

 日銀は、追加利上げ自体は今後も検討を続ける方針だという。2%の物価安定目標の達成時期は1年ほど先送りしたが、26年度後半から27年度末と見込んでいる。

 日本経済は、賃金も物価もともに上がる「成長型経済」への転換を図る途上にある。今春闘では大手企業で歴史的な高水準の賃上げが実現した。主要な上場企業の業績も過去最高水準にある。

 各国の交渉で関税の悪影響が和らぎ、成長型経済の実現が見えてくるのならば、政策金利も上昇していくのは自然である。

 一方、トランプ米大統領は、日本が輸出企業に有利になるように「常に円安を求めている」といった不満を、繰り返し表明してきた。利上げ時期が遠のけば、円安がさらに進む可能性はある。

 ただし、日銀の金融政策運営は、あくまで経済や物価動向を踏まえて行うべきものだ。改めてこの原則を確認しておきたい。

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