パブリックコメントに大量の同一意見…「除染土の再利用」「マイナ保険証」などSNSで例文拡散

2025年5月5日(月)5時0分 読売新聞

 国が政策案について一般から意見を募るパブリックコメント(パブコメ)で、1万件以上の意見が寄せられたものが昨年度、現行制度で最多の10案件に上ったことが読売新聞のデータ分析でわかった。文言・文章が同一の意見が大量にあり、いずれもSNS上に意見の「例文」を示して提出を呼びかける投稿が拡散していた。専門家は「特定の意見が多数を占めるかのように誤解され、行政への不信を招く恐れがある」と指摘する。

 パブコメは、国の行政運営の公正さや透明性の向上を図るため、政策案などを公表して広く一般から意見を募り、政策決定に活用するのが目的。2006年度に改正行政手続法に基づく現行制度の運用が始まった。郵送のほか、政府のオンラインシステム「e—Govイーガブ」でも提出できる。名前や住所などの記入は任意で、提出件数に制限はない。

 読売新聞は、e—Govに4月20日時点で掲載されていたパブコメのうち、06〜24年度に行われた計約3万4000案件(重複を除く)を分析。1000件以上の意見が寄せられたのは、15年度以降で少なくとも計145案件確認された。1万件以上は29案件あり、うち24年度は最多の10案件に上った。 10案件は、東京電力福島第一原発事故に伴う除染作業で発生した「除染土」の再利用、新型インフルエンザ等対策政府行動計画、マイナ保険証の関連など。 除染土のパブコメには過去最多の20万7850件の意見が集まった。だが、実施した環境省が精査したところ、意見の96%(19万9573件)は、残りの4%(8277件)のいずれかと全く同一の文章だった。「反対」「汚染土県外使用禁止」とだけ書かれた意見はそれぞれ約1万件あった。

 残りの9案件も「同一文言が相当数あった」(厚生労働省)、「同一文言や語尾だけ変えたものが大量にあった」(総務省)という。 読売新聞が10案件についてX(旧ツイッター)の投稿を調べたところ、いずれも「参考例文」「コピペOK!」などと意見の例文を示した投稿が確認された。除染土のパブコメでは公募期間中(1月17日〜2月15日)、「(除染土を)発生場所で保管すべき」などの例文を示し、大量に意見を出すよう呼びかける投稿が拡散。これらの例文と同一の意見が実際にパブコメに提出されていた。

 制度を所管する総務省によると、パブコメの意見は内容が考慮され、多寡は判断材料とならない。同一意見が大量に送られることについて、関係省庁からは「行政事務の適正な執行の妨げになる。制度のあり方自体に影響を及ぼしかねない」(浅尾環境相)との声も上がる。

 川上和久・麗沢大教授(政治心理学)は「パブコメで特定の意見を多く見せかけることは、社会の分断を招きかねない。趣旨を理解して制度を利用すべきだ」と指摘している。

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