【悪質M&A問題第5弾】「金稼ぎてえと思ったら…悪魔に魂を売る」仲介会社の闇を追及“M&ADX社”の社長らを直撃「やばいんじゃないの」という声も【news23】

2025年5月7日(水)13時55分 TBS NEWS DIG

新たな視点と独自取材でお送りする「eyes23」、継続して報じてきました“悪質M&A”第5弾です。

これまで、悪質な企業に買収された中小企業が倒産に追い込まれたケースなどをお伝えしてきました。今回、M&Aの「仲介会社」にも大きな問題があることがわかりました。「悪魔に魂を売る」仲介会社の社員はそんな言葉を残していました。

M&A仲介の闇 「悪魔に魂を売る」被害が続出

——悪質な買い手と知りながら紹介してましたよね?

牧田社長
「会社を通じてお話しいたします」

——何度も会社に問い合わせをさせていただいているが
「…」

記者の質問をかわすこの男性。M&A仲介会社「M&ADX」の牧田彰俊社長です。

牧田社長 M&ADXのYouTubeより(※動画は現在削除)
「誠実な仕事・真摯な仕事、これをしないと一瞬で見抜かれて、それ以上の成長はない」

会社を売りたい企業と買いたい企業を結びつけるM&A仲介会社。成功すれば、手数料が受け取れる仕組みで、1件で数千万円となるケースもあります。

M&Aは、後継者不足に悩む中小企業の解決策として注目され、仲介会社はここ数年で急増しています。牧田社長も、雑誌やYouTubeなどで広く取り上げられてきました。

牧田社長 M&ADXのYouTubeより(※動画は現在削除)
「少子高齢化に伴う後継者問題というのが国を挙げた問題になっています。こうした“国のあげた問題解決を図っていく”。簡単に言うとそんな仕事をしております」

しかし、その影で中小企業のM&Aをめぐって、会社の資金が抜き取られ、倒産や廃業に追い込まれるなど悪質M&Aの被害が続発。
今、仲介会社の責任を問う声が高まっているのです。私たちが入手した仲介会社、M&ADXの社員の音声には…

M&ADX社員
「俺はもう金に魂を売るって決めてるから。悪魔に魂を売る」

“出禁”も…手数料欲しさの取引か

後継者を探していた大阪の老舗革靴メーカーの前社長。現金が抜き取られ、社会保険料や給与の支払いがストップ。買収した経営者は姿を消し、廃業に追い込まれました。

廃業となった革靴メーカー 丸吉肇前社長
「唖然とするしかない。これはもう詐欺だと、計画的な」

1000万円以上を抜き取られたものの、廃業寸前で会社を取り戻した愛知県の介護施設の経営者も、怒りをあらわにします。

被害にあった介護施設 水落美香代表
「社会保険料の滞納。ガス代が引き落とされません。それは毎日のようでした。絶対に許せないという思いでしたね。ここまでやってくれたかと」

こうした怒りを向ける相手は、買い手・A社長です。10社以上を買収。その全てでトラブルを起こし、数千万円以上の被害を訴える企業も少なくありません。

この番組でも「悪質M&A業者」として追及してきました。

——キャバクラで法人カードを使われた?

買い手 A社長
「あれは接待や自分の給料と相殺している」

——お金を抜いて逃げる手法を取っているように見えるが

買い手 A社長
「それはもう全然間違いだと思います」

そして、この問題の買い手・A社長に4つもの会社を紹介していたのが、仲介会社M&ADXです。A社長が悪質な買い手だと気づかなかったのでしょうか?

A社長に会社を買われ、1300万円もの預金を抜き取られた介護施設の社長は仲介したDX社の責任も大きいと話します。

被害にあった 岐阜・介護施設社長
「(自分の契約の)前に2社紹介していて、その状態でA社長の行動というのを当然把握できるし、A社長の経営能力を判断できる状態だった。(A社長に)売ったら潰れるとわかっているわけじゃないですか。わかって紹介しているので」

さらに、被害を受けたことについて、この社長が仲介したDX社の社員に訴えると、こんな発言がありました。

M&ADX社員
「僕もこの仕事やって5年。いろんなお客様に会いましたけど、ここまで悪質、初ですよ。さすがにないわと。僕も彼(A社長)に言いました。出入り禁止確定と」

この社員は「A社長は悪質なので出入り禁止にする」と明確に述べていたのです。それにも関わらず、DX社はA社長の仲介を続け、次の三重県の老人ホームの買収を成立させました。

A社長に経営権が渡った三重県の老人ホームでは現金などが抜きとられ、取引先への支払いや従業員への給与も払われなくなり、わずか3か月で閉鎖に追い込まれました。
DX社は、少なくとも1000万円を超える仲介手数料を得ていたとみられています。

被害にあった 岐阜・介護施設社長
「全くもって悪意で、手数料欲しさの取引としか考えられない。人の会社、人の人生をなんだと思ってるんだ」

「悪魔に魂を売る」社員を直撃

なぜ悪質な買い手だとわかっていたのに、M&Aを続けさせたのでしょうか。あの社員の開き直ったような音声が残っていました。

M&ADX社員
「この仕事をやっていて本当に金稼ぎてえって思ったら、一旦金に魂を売る。悪魔に魂を売る。財布なんてどこだっていいわけよ、俺ら。俺は、もう金に魂を売るって決めてるから」

これまでDX社に対して複数回にわたり取材を申し込みましたが、回答はありませんでした。

「悪魔に魂を売る」とまで発言をしていたDX社の社員。直接、真意を聞きました。

——(A社長を)買い手とするM&Aについてお伺いしたい

M&ADX社員
「答えることはないです」

——被害企業から訴えもあったと思うが、会社で対応されないのはなぜ?

M&ADX社員
「会社で検討されているので、僕から答えることはないです」

——すごい金額を抜かれていると相談されている。次の企業にも紹介しているのは相当悪質だと思うが

M&ADX社員
「私から答えることはないです」

DX社の牧田社長は悪質な買い手のことをどこまで認識していたのか。牧田社長に直接、ただしました。

——悪質な買い手と知りながら紹介してましたよね?

M&ADX社 牧田彰俊社長
「会社を通じてお話しいたします」

——何度も会社に問い合わせをさせていただいているが
「…」

——代表として説明責任を果たしていただけないですか

記者の質問に、答えることはありませんでした。
DX社は現時点で被害を訴える企業に対し、手数料の返金には応じていません。

内情を知る関係者 「ヤバいのでは?」と疑問の声も

当時のDX社の内情を知る関係者が取材に応じました。

DX社の内情を知る関係者
「『それやばいんじゃないの』とか『またあそこじゃないの』とか声が上がっていたが、そんなことにいちいち耳を傾けてたら進まないだろうというスタンスだったと思う。成約できる。契約になる。手数料取れる。もうそこが一番なので」

今年1月、国は「不適切な買い手と知りながら、M&Aを成立させていた」としてDX社に対し、支援機関の登録を取り消しました。国として、仲介会社の責任を初めて認めたものとなりました。

免許や資格も不要とされるM&A仲介業。悪質M&Aのトラブルが広がる中、仲介会社の責任を問う声が高まっています。

DX社の内情を知る関係者
「M&Aは本当に素晴らしいもので、これからの日本にとって絶対必要なもの。仲介の質を上げなければ。免許を持っていて、ちゃんと経験していて、そういう一定の条件を設けないと駄目なのではないかと思う」

“悪質な買い手”をなぜ? 仲介会社のあり方とは

小川彩佳キャスター:
中小企業のM&Aで、仲介会社のあり方が問題になっていますが、そもそもなぜこうした悪質な買い手を紹介するに至ってしまうのでしょうか?

調査報道部 小松玲葉記者:
中小企業のM&Aでは、1つの仲介会社が間に入って、売り手と買い手の両方から手数料を受け取る場合があります。売り手との取引は1回限りで終わりますが、買い手は何社でも買収できるため、手数料もその分何回も受け取ることができるという仲介会社のメリットがあります。
何社も買ってくれる買い手というのは良い買い手なので、長期的な取引の関係が続くことになります。そうすると、どうしても売り手ではなく、買い手にとってのメリットを優先するという問題が発生しやすい。
仲介会社に対して中小企業庁は、今回のM&ADXの事案だけではなく、様々な悪質な買い手との取引に関与した延べ21社に対して注意を行っています。

小川キャスター:
注意は行っているが、取り締まるなどの行為には至っていないわけですね。

小説家 真山仁さん:
本来のM&Aというのは、売る側も買う側もファイナンシャルアドバイザーや専門の弁護士といった専門家をたくさん並べます。ところが中小企業になると、その費用がない。そうすると仲介会社を信用して「任せてしまおう、これで安心だ」と思う。さらに、売り手は借金があったり会社が事業が回らなかったりといった負い目があるから売りたい。一番きついのは個人保証を社長がしている場合で、家庭の生活も難しいと言われてしまう。そこにまず隙がある。
仲介業者が良いか悪いかというのは、普通は判断できません。どうしたらいいかというと、まず相談する前にお金をちゃんと整理する。個人で残すお金はちゃんと残さないといけないし、会社で内部留保があるなら使えるものは使ってしまう。そして、本当に売るときは会社は残さない、売ってしまう。そうすると、社長は責任を感じるのでもっと慎重になります。楽をさせてもらえると思って仲介業者にすがりがちですが、M&Aは楽をするためにやるのではない。例えば、国が専門の弁護士の費用を2時間だけ持ってあげるといった支援をまずやらないと、規制して注意するのはそもそも間違った対策だと思います。

小川キャスター:
もっと売り手が自らの身を守る術を身につけるべきだということですね。ただ、被害を受けた方々がこのまま泣き寝入りとなってしまうというのは、いたたまれないものがあります。

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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「ロスト7」

TBS NEWS DIG

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