米国債格下げ 財政健全化を促す重い警鐘だ

2025年5月20日(火)5時0分 読売新聞

 米国の政府債務がこのまま増え続ければ、米国のみならず世界に悪影響を及ぼす。米国債の格下げを重い警鐘として受け止め、財政健全化への道筋を描いていくべきだ。

 米格付け大手ムーディーズ・レーティングスは、米国債の長期信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」へと1段階引き下げた。これにより米国債は、世界3大格付け会社の全てで最上位の格付けを失うことになった。

 米国債は、世界中の国や企業などが資金を投じる最も信頼される投資先の一つであり、外貨準備の資産としても保有されている。

 日本の保有額は1・1兆ドル(約160兆円)を超え、国別で世界最大である。米国債の信認が揺らげば国際金融市場に大きな衝撃を与え、日本への打撃も甚大だ。

 ドル基軸通貨体制において、米国は、国債とドルの信認を守る責務がある。その重要性を再確認する契機にせねばなるまい。

 ムーディーズが格下げの理由として挙げたのは、債務や利払い費が急激に膨らんでいること、また、議会が現在検討中の財政案では、財政赤字の大幅削減が見込みにくいことなどの点である。

 与野党の分断は深く、財政健全化の機運が高まらない現状を踏まえれば当然の指摘であろう。

 財政の悪化は深刻だ。バイデン政権下の2024会計年度(23年10月〜24年9月)に、利払い費が初めて1兆ドルを超え、財政赤字は約1・8兆ドルに上った。コロナ禍など危機時を除けば過去最大だ。債務残高は36兆ドルに達する。

 さらにはトランプ政権の高関税政策が米国への信頼を著しく傷つけていることも、財政への悪影響を深刻化させている。

 各国が、米国以外へ投資を切り替える動きがあるとされるからだ。米国債離れを招けば、利払い費が更に膨らんで財政を圧迫しよう。米国は財政健全化に取り組むと同時に、トランプ関税も現実的な路線へと改める必要がある。

 一方、日本国債について格下げが差し迫っているとの見方は多くない。政府債務は先進国で最悪の水準にあるものの、財政規律に一定の配慮を見せてきたためだ。

 だが、物価高や米関税への対策として、消費減税を巡る議論が活発化している。財源の裏付けがない消費減税に走れば、財政運営への信頼は揺らぐ。

 国債が格下げされれば、企業の資金調達コストが増すなど経済に混乱が生じる恐れがある。忘れてはならぬリスクだ。

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