上場企業決算 逆風を攻めの戦略で乗り切れ
2025年5月23日(金)5時0分 読売新聞
上場企業は好調な決算を続けてきたが、今年度は一転して、トランプ関税の悪影響という逆風にさらされる見通しだ。
企業は守りの姿勢に陥ることなく、さらなる成長を続けるために攻めの戦略を取り、高い賃上げを実現してもらいたい。
東京証券取引所に上場する企業の2025年3月期決算が、ほぼ出そろった。東証株価指数(TOPIX)を構成する企業(金融除く)の最終利益の合計は、4年連続で過去最高を更新した。
半導体の需要が増えて関連企業が好調だったほか、自動車も底堅く、製造業の最終利益の合計は約22・7兆円に上った。
本格的に回復した訪日客の恩恵を受ける鉄道や、デジタルの投資需要が旺盛なIT関連サービスなども好調で、非製造業の最終利益は増益になったという。
上場企業が高い成長を実現し、賃上げへと還元する流れは、着実に進んできたと言えよう。
懸念されるのは、米政府の高関税政策の影響が本格的に表れる26年3月期の業績だ。約1000社のうち4割が減益を見込む。
特に基幹産業である自動車産業への打撃が大きい。
トヨタ自動車は4、5月の2か月分で関税が1800億円の減益要因になると見積もった。ホンダも年6500億円の減益要因となる見通しだ。大手7社で業績予想を開示した4社の最終利益は、前期比4割減るという。
自動車産業は、今年の春闘まで3年連続で続いてきた高水準の賃上げを先導してきた。賃上げの機運がしぼめば、賃金と投資がともに増える「成長型経済」への移行が頓挫する恐れがある。
企業の内部留保は約600兆円に上り、逆風下を乗り切る余力はあるはずだ。賃上げの流れを止めぬ努力を重ねてほしい。
先行きの不透明感の高まりを受け、黒字でも人員削減に踏み切る企業が目立つ。上場企業の間で早期・希望退職の募集人数が急増している。パナソニックホールディングスは国内外で1万人規模の人員を削減すると発表した。
他方、逆風下でも成長を見込む企業はある。味の素は半導体の電子材料などが伸び、26年3月期は3年ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。企業はリストラ策に頼るのではなく、新たな成長分野を探していくことが望まれる。
米国の保護主義的な姿勢は長期化する可能性がある。米国への依存度を下げ、新たな販路を開拓することも大切になろう。