成田「国際ハブ空港」機能強化へ滑走路新設・延伸、本格工事に今月着工…課題は事業費高騰

2025年5月23日(金)15時23分 読売新聞

延伸される成田空港のB滑走路(23日、読売ヘリから)=鈴木毅彦撮影

 成田空港で今月、3本目の滑走路新設と既存滑走路の延伸に向けた本格工事が始まる。「第2の開港」とも言える巨大事業で、新滑走路が供用される2029年3月には年間発着枠が現在の30万回から50万回に増える見通しだ。世界各地から到着便を受け入れ、別地域に向かう出発便の拠点にもなることで、「国際ハブ空港」としての機能を高め、近隣アジアの空港との競争で巻き返しを図る。(成田支局 竹田淳一郎)

1000メートル延伸も

 「今後20年間で世界の航空市場は2倍になる。需要を受け止めるため、国家プロジェクトとして機能を強化する必要がある」。成田国際空港会社(NAA)の田村明比古社長は、こう強調する。

 成田では現在、A滑走路(4000メートル)とB滑走路(2500メートル)が運用されている。今後はC滑走路(3500メートル)が新設され、B滑走路も1000メートル延伸される。

 NAAは、長い滑走路が整備されることで大型機発着の制約が少なくなる利点を挙げる。田村社長はB、C滑走路の一体運用を想定し、「片方を離陸、片方を着陸専用にすれば利便性が高まる」とも語る。

乗り継ぎ需要

 国際空港評議会がまとめた総旅客数ランキングによると、成田はコロナ禍前の2019年が50位、23年は68位と低迷。23年に20位に入ったライバルの仁川空港(韓国)に水をあけられている。NAAによると、東アジアの空港は「ハブ機能」を高め、旅客や貨物を様々な方面に運ぶための中継点となってきた。

 北米—東南アジアの乗り継ぎ旅客の獲得シェアは19年、桃園(台湾)が21%、香港は18%、仁川が17%。成田は15%だ。田村社長は「北米から見たら最初のアジアは日本。地理的にも成田に優位性があるはずだが、乗り継ぎを意識した空港づくりはしていなかった」と語る。

 NAAは発着枠を増やすことで、乗り継ぎ需要を取り込みたい考えだ。発着枠が50万回になった場合、旅客数は24年の1・8倍の7500万人、貨物取扱量は1・5倍の300万トンになる見込みだ。

首都圏発着100万回

 成田で50万回の発着枠が実現すると、羽田と合わせた首都圏空港の発着枠は100万回となる。

 NAAによると、発着枠100万回はニューヨークやロンドンなど世界の主要都市の複数空港が実現している。政府は、都市間での国際競争力を維持するためにも成田の機能強化は欠かせないとみている。

 課題は事業費の高騰だ。19年度の見積もりは5125億円だったが、物価や人件費の高騰などもあり、24年度試算では約3割増の6707億円となった。NAAは他事業で発生した土砂の活用などでコスト縮減策を講じるとしているが、「今後も一定の増額リスクがある」としている。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「空港」をもっと詳しく

「空港」のニュース

「空港」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ