能登復旧は遠隔工事で…300キロ超離れた千葉・君津で無人ショベルカー操作、危険な場所でも安全に

2025年5月23日(金)14時19分 読売新聞

画面を見ながら建機を遠隔操作する佐藤さん(15日、千葉県君津市で)

 昨年1月の能登半島地震で大きな被害が出た石川県輪島市の被災地で、千葉県君津市に支店がある建設会社が復旧工事に協力している。といっても、直接現場に出向いているわけではない。遠隔地から建設機械を動かす技術を活用し、君津から300キロ以上離れた現場の作業を進めている。工事関係者は「遠くからでも早期復旧・復興に貢献したい」としている。(渋谷功太郎)

2本のレバーを操って

 君津市人見にある建設会社「宮本組」関東支店で、オペレーターがレバーを操作していた。操るのは輪島市にある無人のショベルカー。三つの画面に映る現地の映像を頼りに2本のレバーを操り、前後に走行させたり、アームを上下に動かしたりして土砂を巧みに掘っていた。

 作業の現場は能登半島の大動脈とも言える国道249号沿いの地滑り箇所。地震で崩れた土砂が昨年9月の豪雨によって海まで流出した。二次災害を防ぐためにも山腹や海辺の土砂を除去する必要がある。

 山の中腹には高さ1メートルほどの岩が多数転がっていて、落石の危険がある。そこで国土交通省能登復興事務所が事業者と協議し、安全に工事を進めるために遠隔操作が可能な建機の導入を決めた。万が一、落石があっても物損事故で済むよう、監視員も少し離れた安全な場所から工事を見守っている。

 現在は海辺に堆積たいせきした残土の搬出作業を進めている。オペレーターの佐藤敬信さん(31)は「繊細な作業は難しいが、土砂の撤去は遠隔操作でも十分にできる。現地に行けなくても復興に貢献でき、誇れる仕事だ」と胸を張る。

県外から行うのは初めて

 工事の元請け業者の大手ゼネコン「大林組」によると、現在は携帯電話と同じ通信規格で現地とのネットワークを結んでいるため、回線が弱く、建機1台を操作するのが限界という。だが、6月中旬をめどに高速通信が可能な光回線を導入し、無人ダンプとの2台態勢で斜面での作業を始める予定だ。

 能登復興事務所によると、国が発注した復旧工事ではこれまで、1キロほど離れた場所から施工したことはあったが、県外から行うのは初めて。

 同事務所の江渕直嗣調査課長は「危険な場所でも安全に作業ができる。各地から工事ができれば作業員不足の解決にもつながる。今後も積極的に導入し、一日も早い復興につなげたい」と語った。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「復旧」をもっと詳しく

「復旧」のニュース

「復旧」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ