日本人260人在籍のハーバード大、留学生は「努力が無駄に」…転籍しないと米滞在資格を喪失

2025年5月24日(土)7時15分 読売新聞

日本人学生の留学先上位国・地域

 トランプ米政権が、世界中から学生を集める名門・ハーバード大の留学生受け入れ認定を取り消した。同大には日本からも多くの学生らが在籍しており、不安や極端な政策への憤りの声があがった。(猪塚さやか、川畑仁志)

「みんな混乱」

 「留学が中止になったら、これまでの努力が無駄になってしまう」。2月からハーバード大に約1年間の予定で留学し、量子コンピューター研究に応用可能な技術を学ぶ東京大工学部の男性(20)は不安げに語る。

 米政府による認定取り消しの発表直後から、研究室の仲間同士のチャットはこの話題で持ちきりに。ハーバード大の留学生は他大に転籍しないと米国での滞在資格を失うことになり、男性は、「大学は政権に屈しないでほしい」と気をもむ。

 日本学生支援機構の調査によると、2023年度に米国に留学した学生は1万3517人。留学先全体の15%を占め、最も多い。ハーバード大には、日本人の留学生や研究者が260人在籍する。

 23年から同大の大学院「ケネディスクール」に留学している男性(27)は、「留学中の学生に転学を要求するという極端な施策が出てくるとは思っていなかった」と驚く。留学生の間では、一時帰国すると再入国できなくなる可能性や、国外退去の根拠とするため、軽微な交通違反での摘発、スマートフォンからの個人情報の無断収集を恐れる声も飛び交う。ハーバード大はホームページ上で「留学生を受け入れるため全力を尽くしている」との声明を発表したが、男性は、「情報が錯綜さくそうして、皆、混乱している。大学から今後の方針などについての連絡はなく卒業できるのか不安だ」と話した。

他の大学

 留学支援会社「留学ジャーナル」(東京)によると、米国では大学の籍を失うと滞在資格が取り消される。米国を退去するまでの猶予期間は、成績不良による退学など、本人に責任がある場合で通常1〜2週間という。他大への転校手続きが猶予期間内に済めば資格は取り消されない。ただ、米国の大学は6月から夏休みに入るため、同社では「多くの(ハーバード大への)留学生は帰国せざるを得ないのではないか」と話す。

 南カリフォルニア大大学院に昨年8月から留学中でコンピューターサイエンスを学ぶ男性(28)は「留学受け入れの停止措置が他の大学に広がらないか心配だ」と危機感を強める。期末試験を終え、5月に帰国しており、8月に米国へ戻る予定だが、「措置の対象校が拡大すれば、米国を離れざるを得ない。中途半端のまま、留学が終わってしまうことだけは避けたい」と語る。

 留学生教育学会前会長で大阪大の近藤佐知彦教授は「いつ滞在資格が取り消されるか分からない状況が続けば、米国留学に魅力はなくなり、カナダや英国、オーストラリアなどの人気が高まる可能性がある」と予測する。

東大、一時受け入れへ

 東京大は23日、トランプ政権の留学生受け入れの認定取り消しによってハーバード大で学べなくなる日本人を含む留学生を、一時受け入れる方針を固めた。授業の聴講を許可し、同大に復学後、単位認定してもらうことを想定している。

 東大は2022年、ロシアのウクライナ侵略で避難民となった学生や研究者を受け入れ、授業の聴講や図書館利用を認めてきた。ハーバード大の留学生にも、この枠組みの適用を検討する。東大の林香里理事・副学長は、「意欲と才能ある若者が、学習を継続できるよう支援したい」と話している。

「人権侵害だ」

 ハーバード大出身のタレント、パトリック・ハーランさん(54)は「留学生への人権侵害だ」と憤り、「こんな措置がまかり通れば、優秀な人がアメリカへの留学をためらうかもしれず、アメリカ自身や世界全体の損失になりかねない」と懸念を示した。

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