在留外国人増で「土葬」巡る議論激化 「宗教上の理由」でも住民の反対多い「日本の習慣に従って」

2025年5月25日(日)17時0分 J-CASTニュース

日本にはいま、約340万人の外国人が在留しており、その数は年々増加している。在留外国人が日本で生涯を全うするケースも少なくない。

そんななか、全国各地で「埋葬」をめぐる問題が表面化しつつある。

大分ではムスリム土葬墓地建設の撤回騒動

現在、日本に約23万人いるといわれるムスリム(イスラム教徒)。彼らにとって火葬はタブーである。神から与えられた身体を損なってはならないとされているからだ。

2018年ごろから、大分県日出町(ひじまち)でムスリムの土葬墓地建設案が浮上した。

かねてより九州にムスリムが土葬できる墓地がなかったことから、大分県別府市を拠点とする「別府ムスリム協会」がこの日出町の町有地を購入し、墓地等経営計画協議書を提出した。

日本には墓地埋葬等に関する法律(墓埋法)があるが、土葬を禁止するとは書かれていない。実際、一部地域では土葬が可能な墓地もある。

ただし、各自治体からの「埋葬許可証」をもらうことが必須条件である。

日出町の条例に照らせば、墓地設置には「居住区域や水源からの距離」「地下水汚染の有無」「周辺説明会の開催」などをクリアすれば、土葬墓地を作ることは理論上可能だった。

ムスリム協会は地元住民との粘り強い対話を続けた。

しかし住民からは「日本の習慣に従ってくれないか」という意見や、衛生面への懸念、「見知らぬ宗教」の存在に対する不安の声などが多く寄せられ、なかには「移民が増えて町が乗っ取られる」という誹謗中傷まで寄せられたという。

2024年に設立反対派の町長が当選したこともあり、町は2025年3月12日に町有地の売却を行わない方針を発表した。

日本で火葬が一般化したのは戦後になってから

葬送の方法を宗教別に見ると、必ず土葬とするのはイスラム教とユダヤ教であり、キリスト教でも原則として土葬が多い。仏教では火葬が好まれ、ヒンドゥー教のように火で魂を解放するという考えから火葬が必須となる宗教もある。

仏教徒が約8100万人(文化庁『宗教年鑑』令和6年版)とされる日本では、人が亡くなった場合、約99.97%の割合で火葬される。この数字は世界的に見ても非常に高い。

日本でも江戸時代までは土葬が一般的だった。しかし明治期以降、都市の近代化が進むなかで墓地用地の確保が難しくなり、また地下水の汚染やコレラなど伝染病拡散のリスクもあるとされ、火葬が推奨されるようになった。

火葬が急速に普及したのは、昭和期に入ってからだ。戦後に火葬率は5割を超え、1980年代に入ると90%を超えた。

こうした変化のなかで、いつしか土葬に対するマイナスイメージが根付き、多くの人にとってのタブーとなっていったのだ。

共生化・多様化が進む現代の大きな問題に

最初に述べたように、日本の在留外国人は増加している。多様な人々が地域社会に溶け込んでいる例も少なくない。

イスラム圏からの外国人材を多く受け入れている宮城県では2024年、土葬墓地整備の検討が始まった。

すると「風評被害で農産物が売れなくなる」「外国人ばかり優遇するのか」といった反対意見が出た。さらに報道が広がると、SNSでは差別的な投稿も多く見られるようになった。

宮城県の村井嘉浩知事はこうした中傷を「非常に問題」と述べ、「寄り添う姿勢も必要だ」として整備に意欲を見せている。

共生化・多様化が進む現代社会において、避けて通れない土葬の問題。成熟した議論が望まれるところだ。

J-CASTニュース

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