日本人の英語「わかりやすい」と外国人は評価するのに自信が持てない理由は

2025年5月26日(月)11時0分 大手小町(読売新聞)

外国人から道を尋ねられ、「I can’t speak English」と断った経験のある人は少なくないのでは。いまだに日本人の多くは、「自分の英語が通じるわけない」「なんだか恥ずかしい」などと考え、英語でのコミュニケーションを避けたがる傾向があります。ところが、実は訪日外国人の多くが、日本人の英語を「わかりやすい」と評価していることが、英会話学習アプリ「スピーク」を手がける「スピークジャパン」(東京)のアンケート調査で明らかになりました。日本人はなぜ、英語に苦手意識を抱きがちなのか、自信を持って英会話ができるようになるにはどうすればいいのか、英語教育が専門の麗澤大学外国語学部教授・森秀夫さんに聞きました。

同社は今年3月、英会話に関心がある20〜50代の日本人400人と訪日外国人130人を対象に、「日本人の英会話ポテンシャル」をテーマにアンケート調査を実施しました。

写真はイメージです

それによると、外国人に突然、英語で話しかけられ、断ってしまった経験の有無について、「よくある」または「ある」と答えた人が合わせて45.8%に上りました。断った理由として最も多かったのが、「英語で伝える自信がなかった」の76.5%で、これに「英語を聞き取れる自信がなかった」(47.5%)、「恥ずかしかった」(19.1%)などが続きました。

一方、訪日外国人に対し、実際に話をした日本人の英語力について印象を聞いたところ、合わせて70.0%の人が「わかりやすい」と回答しました。

多くの外国人が日本人の話す英語に好印象を抱いているのに、なぜ日本人は自身の英語力に自信が持てないのでしょうか。森教授は「日本の英語教育は、文法・読解に重点が置かれ、『間違えないこと』が評価の対象となります。そのため、英会話でも『間違えること』を恐れ、慎重になってしまうのです」と指摘します。

訪日外国人が日本人の英語を「わかりやすい」と評価するのは、旅行者の多くが非ネイティブとの会話に慣れていることもありますが、英語圏の人たちの多くが「正しい英語で話すこと」よりも、「意思疎通をすること」「コミュニケーションを楽しむこと」に重点を置いているからだといいます。

日本人は、学校でかなりの時間を英語学習に費やしているのに、なかなか英語をうまく使いこなせるようにならないと言われます。森教授はその理由として、「学習の悪循環」を挙げました。

日本の学校での英語教育は、文法・読解が間違っていないかを筆記テストで評価されることが多いです。しかし、たとえ難しい文法や単語を覚えたとしても、それらを会話で使う機会はなかなかありません。そのため、勉強した時間のわりに英語力が伸びないと感じ、英語学習が嫌いになってしまうといいます。特に中学・高校の間は、この「伸びない英語」をテストのたびに勉強しなければならず、さらに英語が嫌いになるという悪循環に陥ってしまう場合があるのです。

英語教育の専門用語では、聞いたり読んだりして理解できる言葉を「受容語彙(ごい)」、書いたり話したりできる言葉を「発表語彙」と呼びます。英語が話せるようになるためには、受容語彙を発表語彙にするためのトレーニングが必要になります。

【左】森教授が授業で実際に使用したAI英会話アプリ「スピーク」。ネイティブ講師とのビデオレッスンが受けられる【右】フィードバックが得られるAIとのフリートーク

森教授は、オンライン英会話教室や英会話学習アプリをトレーニングに活用することを勧めます。実際に自身も、大学の学生に英語の授業以外の時間に、英会話学習アプリで会話をさせ、その内容を報告してもらうことで、学生の英語力向上を図っているそうです。「AIから直接フィードバックを得られたり、間違ったワードをすぐに修正してくれたりと、まるで自分の家庭教師がいる感覚です」といいます。

外国人とのコミュニケーションを成り立たせるには、話せるだけではなく、当然、リスニングの能力も必要です。森教授によると、ネイティブは1分間に約150語(1秒当たり2.5語)もの単語を話すと言われており、リエゾン(単語の間の音のつながり)やリダクション(音の省略、短縮)といった特徴もあります。

ネイティブの話が聞き取れるようになるには、聞こえた言葉を書き取る「ディクテーション」や、聞こえてきた言葉を追いかけるように発音する「シャドーイング」が効果的。動画サイトなどで英語の音声を聞いて練習するのもいいそうです。

観光庁が発表した2024年の訪日外客数は、前年比47%増の約3687万人に達し、過去最多となりました。街の至る所で外国人の姿を見かけるようになり、「英語でコミュニケーションが取れたらいいのにな」と思った人も増えているはず。そんな人のために、森教授が大切にしているフレーズを贈ってくれました。

Have passion. You can do more than you think you can do!(情熱を持って。あなたは自分が思う以上のことができる!)

間違いを恐れずに、まずは第一歩を踏み出してみては。

(福島民友新聞 本田嵩大)

大手小町(読売新聞)

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