“ごみ清掃芸人”マシンガンズの滝沢秀一氏が語る「つくる責任 つかう責任」【Style2030】

2025年5月25日(日)11時0分 TBS NEWS DIG

今回の賢者は、お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一氏。2023年の漫才賞レースで準優勝を果たし、再ブレークを果たした滝沢さんは、芸人の傍ら13年間ごみ清掃員として働き、環境省から広報大使にも任命されたごみのスペシャリスト。ごみに関する書籍を多数執筆し、今回は番組初の2度目の登場となる滝沢さんが、SDGsの「つくる責任 つかう責任」をテーマに、プラスチックリサイクルの最前線と2030年に向けた新たな視点、生き方のヒントを語る。

プラスチックを知ろう

—— 賢者の方には「わたしのStyle2030」と題し、話していただくテーマをSDGs17の項目の中から選んでいただいています。滝沢さん、まずは何番でしょうか。

滝沢秀一氏:
12番の「つくる責任 つかう責任」です。

—— 「つくる責任 つかう責任」の実現に向けた提言を教えてください。

滝沢秀一氏:
「プラスチックを知ろう」。プラスチックは私たちの生活に欠かせない身近な存在で、いたるところにあります。まずは前回のおさらいから始めましょう。ごみは何種類でしょうか?

—— 2種類?

滝沢秀一氏:
素晴らしい、正解です。ごみと呼ばれているのは、実は2種類です。「資源ごみ」という言葉を私の業界で使うと、「資源であってごみじゃないだろう」と怒られることもあります。資源は再利用可能なものなので、ごみではなく資源。
最近のホットワードとして、プラスチックが資源として扱われる自治体が増えています。これまでは「プラごみ」と言われることもありましたが、プラスチックを資源として捉える動きが広がっています。

プラスチックを資源に

—— これから広がっていくのか?

滝沢秀一氏:
そうです。地域によっては可燃ごみや不燃ごみに分別されるプラスチックですが、これを可燃ごみから取り出して資源に変えようという動きがあります。プラスチックをもう一度使える資源として扱うことで、リサイクルを推進しようとしているんです。
最近、プラスチック資源に関する法律ができたことで、国がプラスチックをごみではなく資源として認定しました。各自治体がプラスチックを集める取り組みを進めていますが、最終的な責任は自治体にあり、開始時期にばらつきがあります。

—— プラスチックの最前線を見せていただけるそうですね。

滝沢秀一氏:
私がプラスチックリサイクルの現場を取材してきた内容をお伝えします。分別した先でどうなるのかを知ることは大切です。実際に現場を見ると、どう分別すればいいのかがわかります。その先を皆さんに知ってほしいと思います。

埼玉県本庄市にあるエコスファクトリーを訪れました。フランスに本社を置くヴェオリアのグループ企業で、環境課題を解決する技術や仕組みを世界中で提供しています。ここでは、プラスチックを再生して新たな製品の原料に生まれ変わらせています。社長の増田さんに案内してもらいました。

—— 早速、現場の様子を教えてください。

家庭から出たプラスチック資源がここに集まります。自治体で回収された後、中間処理施設で汚れたプラスチックや異物を取り除いたものが届きます。
例えば、ペットボトルのフィルムや本体はそれぞれ違う場所でリサイクルされます。ペットボトルにはコロプラマークがついており、フィルムは別で処理されます。

レジ袋などもリサイクルに回ってほしいのですが、可燃ごみに混ぜてしまうともったいないです。リサイクルに回せば、日本の原料として生まれ変わります。
工場では、回収されたプラスチック資源をまずバラバラにほぐし、1日約90トンを機械に投入します。見た目は様々ですが、このままではリサイクルできないので、種類別に分類する必要があります。

—— なぜ種類別に分ける必要があるのですか?

滝沢秀一氏:
一口にプラスチックと言っても、様々な種類があります。例えば、ペットボトルもプラスチックの一種ですが、マテリアルリサイクルという方法で、マテリアルリサイクルとは、廃棄物を新たな製品の原材料として再利用すること。プラスチックは製品によって特徴が異なるため、まず同じ種類ごとに分ける必要がある。

—— 瓶が瓶に、紙がダンボールに再生されるのと同じ考え方?

滝沢秀一氏:
そうです。種類を分けるとリサイクルしやすくなります。

マテリアルリサイクルの鍵

—— マテリアルリサイクルをするには3種類に分類する必要がある?

滝沢秀一氏:
代表的なものは3種類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)です。ポリエチレンは安価で加工しやすく、柔らかいですが引っ張りに弱い特徴があります。ポリプロピレンは硬くて変形しにくく、引っ張りに強いです。ポリスチレンは発泡させやすい素材です。

—— 具体的に、どのような製品がどの種類に該当するのですか?

滝沢秀一氏:
例えば、このボトルはPE、スプレー容器はPP、ラベルはPSと書かれていることがあります。注意して見ると、意外と書いてあるんです。例えば、食品トレーや袋に「PP」と書かれていたりします。発泡スチロールのようなものはポリスチレン(PS)です。
ただし、紙に見えるものでも裏が銀色でコーティングされているものは、純粋な紙ではないので資源としては使えず、可燃ごみに出してください。

—— なるほど、表示を確認することが大切なんですね。

滝沢秀一氏:
はい。例えば、レンジ対応の容器には「PP」と書いてあって、高熱に強いと表示されています。逆に、ポリエチレン(PE)は柔らかくて伸びやすいですが、レンジで溶けてしまうことがあります。
ポリプロピレン(PP)は硬くて空気を通しにくいので、生ごみを入れる袋に適しています。臭いが漏れにくい特徴があるんです。ただ、家庭で「これはPPかPEか」と分けるのは難しいかもしれません。工場では、ちゃんとマテリアルリサイクルするために種類を分けています。その方法を少し見てみましょう。

プラスチック分別技術の最前線

本庄市にある「エコスファクトリー」。回収されたプラスチックには、いろんな樹脂が混ざっています。例えばポリエチレン(PE)だけを抜き取る作業を行っている。レジ袋や洗剤のボトルがPEに該当する。最新の自動選別機を使って、光を当てて反射波を読み取り、ポリエチレンだけを空気で吹き飛ばして分離している。
ポリエチレンだけに空気を当てて分離する。その後、種類ごとに選別したプラスチックを洗いながら粉砕し、乾燥させる。この工程を経て、プラスチックはペレットという小さな粒に生まれ変わる。200℃から230℃で熱を加えて溶かし、ペレット状に成形する。これが完成形となり、新たな製品の原料になる。

エコスファクトリーでは、3種類の再生プラスチックが作られる。レジ袋などを原料とするポリエチレンのペレット、パンや食品の袋や作られるポリプロピレンのペレット、そして肉や魚のトレーなど発泡スチロールを再生したポリスチレンのインゴット。これらはまたレジ袋や燃えるごみの指定袋、ウッドデッキ、物流のパレット、園芸用品、写真立てのフレームなどに生まれ変わる。毎月作ったものすべてを販売できているほど需要がある。

滝沢秀一氏:
分別する際に「これが資源になる」という意識を持つと、分けるモチベーションも上がる。ただ、プラスチックのリサイクルってそこまで手間をかける必要があるのか、と思う人もいるかもしれません。でも、石油は無駄に使えばなくなる資源。2050年に向けて石油の使用を減らしていく中で、プラスチックがなくなると生活が困るので、再生利用が重要。
日本人はプラスチックを使う量が異常。1人当たりのプラスチック使用量は、年間で換算するとアメリカに次いで世界2位。日本人はプラスチックが好きというより、潔癖症と言えるくらい綺麗好き。
例えば、羊羹を食べるのに4層の包装を剥がしたり、雨の日にスーパーで傘を入れる使い捨ての袋を使ったりする。私はその傘袋を再利用しようとXに投稿したら、最初は「いいアイデア」と好評だったんですが、「いいね」が増えるにつれて「汚い」と炎上した。みんな本当に綺麗好き。
この綺麗好きがプラスチックの多用につながっている。でも、2050年に向けて石油の使用を減らすと、プラスチック自体が生まれなくなる。だからこそ、今あるプラスチックを有効に使う、つまりリサイクルが重要。

分別時の注意点

衝撃的な例ですが、ライターや電池が混ざっていることがある。ライターはオイルが入っていて、火花が出ると火事の原因になります。
ボタン電池はプラスとマイナスが重なると電流が発生し、発火のリスクがある。だから、職員が手作業で絶縁している。テープで絶縁して不燃ごみに出してほしい。
東京23区では大体不燃ごみだが、自治体によっては電池の日が設定されている。乾燥剤はプラスチック資源ではありません。地域によっては不燃ごみですが、石灰系の乾燥剤は水に濡れると発熱し、小火騒ぎの原因になることがあります。可燃ごみでも大丈夫ですが、ポリ袋に入れて水に濡れないようにすると安全です。

—— 電池は危険なんですね。

特にリチウムイオン電池は大問題です。モバイルバッテリーや電子機器の電池がプラスチック資源に混ざると、清掃車や工場で大火災を引き起こす可能性がある。捨て方が自治体によって異なり、拠点回収を受け付けるところもあれば、量販店でも断られる場合がある。購入時に「どうやって捨てるか」を考えるべきです。
今後、回収システムの構築が急務です。配線がついているものはプラスチック資源に出さないでください。
プラスチック回収は過渡期で、自治体によって対応がバラバラです。自治体のホームページやごみパンフレットを確認するのが一番確実です。

—— 廃プラスチックの具体的な分別について教えてください。

滝沢秀一氏:
カップ麺の容器はよく質問されます。カレーなどの色素がついていても、200℃で熱するので色は問題になりません。ただし、汚れは落としてください。目安は、リビングに置いて不快にならない程度です。油汚れが他のプラスチックに移ると、全部捨てることになるので、拭き取るか軽く洗うだけで大丈夫です。

—— ペットボトルのリングやキャップはどうですか?

滝沢秀一氏:
ペットボトルのリングは取らなくても大丈夫です。リサイクル工場ではバラバラに刻んで水を使って分別するので、ボトル部分は沈み、リングは浮くため自動で分離されます。ただし、キャップは外してほしいです。清掃車で圧縮する際、キャップがあるとペットボトルが破裂して危険です。実際に、キャップが原因で怪我をした清掃員もいます。

—— 容器の中は洗った方がいいですか?

滝沢秀一氏:
はい、衛生面から洗ってほしいです。例えば、夏にコーヒーやエナジードリンクが残ったペットボトルが100本、1000本と集まると、すごい匂いになります。秋には蜂が寄ってくることもあります。水で軽くすすぐだけで十分です。
ほんの数滴でも残っていると、清掃員にとっては大きな負担になります。分別はマニアックですが、身近な問題です。楽しく取り組めば、生活の一部になりますよ。

——これまでのご自身のお話を振り返っていかがですか。

滝沢秀一氏:
途中でついていけなくなるんじゃないかと心配でしたが、たくさん質問してくれて、新しいプラスチック先生が生まれた気分です。容器を軽くすすぐ。

—— 滝沢さんのお話を聞くと、毎日のごみ分別が身近に感じます。

滝沢秀一氏:
顔の見える社会を意識すると、ごみは減ると思います。誰が回収するかわからないから適当でいいや、ではなく、作る側も捨てる側も循環の一部だと知ることが大切です。

(BS-TBS「Style2030 賢者が映す未来」2025年5月18日放送より)

TBS NEWS DIG

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