備蓄米の随意契約に消費者、安いコメ「実現したらありがたい」「価格下がるのか信じられない」
2025年5月26日(月)21時54分 読売新聞
空きが目立つ精米店の販売棚(26日、東京都渋谷区で)=須藤菜々子撮影
今度こそコメ価格は下がるのか——。農林水産省による政府備蓄米の随意契約の手続きが26日、始まった。価格高騰にあえいできた消費者からは期待する声があがった一方、生産者や契約に参加できない小規模小売店からは不安や不満が漏れた。(渡辺星太、盛岡支局 道下航)
ネット購入「自信ない」
26日夕、東京都江東区の門前仲町駅前にあるスーパー。夕飯の買い物客でにぎわう店の棚には、すっかり見慣れた「5キロ・グラム4000円台」のコメが並ぶ。中には5000円を超す銘柄もあった。
買い物帰りのパート従業員の女性(77)は、小泉農相が2000円程度で備蓄米を店頭に並べる考えを示したことに触れ、「実現したらありがたい」と喜んだ。これまで5キロの袋を買っていたが、「いつ値下がりするかわからないから」と、最近は2キロずつ買うようになった。随意契約の手続きが始まったことで、ようやく希望が湧いてきたという。
気がかりもある。政府がネット販売の活用を検討していることだ。女性は「ネットで購入する自信がない。店頭販売されても買い占められたら困るので、購入制限などの対策をしてほしい」と訴えた。
政府は、低価格の備蓄米流通を契機に、コメ全体の価格を引き下げたい考えだ。だが、備蓄米以外のコメは米不足を背景に、業者間で既に高値で取引されており、消費者に安く提供できない事情もある。食べ盛りの子どもが3人いるパート従業員の女性(44)は、「本当に価格が下がるのか、なかなか信じられない」とあきらめ顔で語った。
契約対象外に不満
一方、盛岡市のコメ農家の男性(67)は、「『コメは安いんだ』というイメージがついてしまうのではないか」と急激な値下がりを懸念した。
生産コストは高騰している。肥料はこの3年間で1・5倍となり、農機具も値上がりが続く。「小泉農相には、消費者にも農家にも目を配った農政を期待したい」と注文をつけた。
随意契約の対象が1万トン以上を取り扱える大手小売業者とされたことに不満を漏らすのは、「小池精米店」(東京都渋谷区)店主の小池
省内は動揺
農相交代からわずか5日。価格への関与を否定して一般競争入札にこだわってきた従来の方針から大きく転換したことで、農水省の職員の間には動揺も広がる。ある職員は「生産者よりも消費者の受けを狙った劇場型の進め方だ」とこぼした。
26日午後に同省が急きょ開いたオンライン説明会には、小売業者ら318社が参加し、随意契約への関心の高さをうかがわせた。新たなやり方では毎日先着順で申し込みを受け付け、その都度契約を結ぶため、契約数はこれまでより大幅に増えて事務作業も煩雑になる見通しだ。
別の職員は「これまで小売業者と直接契約しなかったのは、契約数が膨大になるなどして混乱が生じるリスクを避ける狙いもあったのに……」と戸惑いを吐露した。