「彼は毎日テニスをしている」を英語で言うと…日本人が意外とわかっていない英文法「現在形の本当の役割」
2025年3月21日(金)9時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages
※本稿は、渡辺雄太『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
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■現在形は「幅のある時間」を意味する
現在形は「現在」だけを意味するのではない。「幅のある時間」を意味し、場合によっては「未来」を意味することもある。こんな説明を聞いたことはありませんか?
現在形なのに「未来」を意味するとは、一体どういうことでしょう。「未来」を意味するwillとの違いは、一体なんなのでしょう。この説明だけ聞いて納得するのは、難しいのではないでしょうか。
なぜ現在形が「幅のある時間」を意味するのか。なぜ「未来」の意味を持つのか。現在形の用法を成り立ちから見ると、その本質が見えてきます。
■もともとは「現在」「未来」「進行」などを表した
昔の英語では、「過去」「現在」「未来」などの区分が現代英語ほどハッキリしていませんでした。過去形と現在形でさまざまな意味を表現していたのです。例えば、現在形は「現在」「未来」「進行(進行中の動作など)」といった意味を持っていました。
現代英語に近づくにつれ、助動詞willや現在進行形などが生まれ、「未来」や「進行」の意味をそれらの表現が担当するようになりました。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
特に注目すべきは、「進行」です。「進行」は「一時的な継続」を示す表現です。詳しくは次節で触れますが、現在進行形be Vingは、「(一時的に)いま〜している」という意味で使用されます。
I am playing tennis now.
「(一時的に)いまテニスをしている」(一時的な継続)
「いまテニスをしている」という行為は、短時間の継続です。「ボールを打ち、走って……」という行為は、せいぜい数時間の継続が限界です。「進行」は、「一時的な継続」を表現します。
現在進行形が「一時的な継続」を担当するようになった結果、現在形に残ったのは「幅のある時間」です。現在進行形が比較的短い時間幅の表現だとすれば、現在形は長い時間幅を持つ表現といえます。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
例えば次の例文を見てください。表面上の日本語は、現在進行形の「テニスをしている」と同じです。ただ、意味が全く異なります。時間幅を持つ「現在の習慣」の意味で使用されています。
He plays tennis every day.
「彼は毎日テニスをしている」(現在の習慣)
「今日もやる」「昨日もやった」「明日もやるだろう」と、現在形が「現在」のみならず、「過去」「未来」の意味も含んでいます。現在形は、「現在」を中心に「過去」「未来」に幅を持つ表現なのです。次の例文も同様です。どちらも時間幅を持つ「現在の状態/事実」を述べています。
■「彼は40歳だ」は数カ月〜1年程度の幅を持つ
He is 40 years old.
「彼は40歳だ」(現在の状態/事実)
The earth moves around the sun.
「地球は太陽の周りをまわる」(現在の状態/事実)
「彼は40歳だ」というのは数カ月〜1年程度、「地球は太陽の周りをまわる」は数十億年単位の幅を持った表現です。しかし、「現在」を中心に幅を持つ表現であることには変わりません。このように、文脈次第で現在形の幅の長さは伸び縮みするのです。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
英語で表現する際、現在形と現在進行形で迷ったら、時間幅に意識を向けてください。習慣や状態など、時間に幅があれば現在形を使用します。「いまだけ一時的に」ということであれば、現在進行形の使用が適切です。
■現在形の「未来」は「現在見てわかる未来」
「過去」「現在」「未来」のどこに意識が置かれるかも重要です。意識が「未来」に傾けば、現在形が「未来」を意味することもあります。現在形の「未来」は、予定表や時刻表、スケジュール帳など、「現在見てわかる未来」に使用されます。手元に予定表などが存在するため、「確定した未来」の意味を帯びます。
School begins on September 1st.
「学校は9月1日に始まる」(確定した未来)
The plane departs at 6 p.m. tonight.
「その飛行機は今晩6時に出発する」(確定した未来)
The movie starts at 8:15 p.m. tonight.
「その映画は今晩8:15に始まる」(確定した未来)
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
一方、過去形は「現在」から切り離された「過去」を記述します。時間幅を持つ過去や、1回限りの出来事に使用できます。例えば次の例文を見てください。
He loved her ten years ago.
「彼は10年前彼女を愛していた」
「愛していた」と過去形を使用しています。「現在」から切り離されているため、現在の状況は不明です。「現在は愛していない」を意味に含むこともありますが、最後は文脈で決まります。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
■現在形のもう1つの意味「点の時間」
現在形は「幅のある時間」で、「現在の習慣」「現在の状態/事実」「確定した未来」の意味につながるのだ、というお話をしました。実は、現在形は「点の時間」を意味することもあります。現在形が一回きりの瞬間的な動作に用いられることもあるのです。この用法は、「実況的報道」と呼ばれることがあります。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
「実況的報道」は、スポーツ実況や操作手順の説明など、順を追って解説するような場合に好まれます。下記はサッカーの実況中継です。
Miller passes back to Johnson, nice ball — and Johnson shoots!
「ミラーがジョンソンにバックパス、ナイスボール — そしてジョンソンがシュート!」(実況的報道)
次のような日常会話でも登場します。バスが出現/移動する様子を実況的に描写しています。
Here comes the bus.
「ほら、バスが来たよ」(実況的報道)
渡辺雄太『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
また、自分の行動を実況的に描写することもあります。「提案」「約束」「助言」「感謝」「謝罪」などの動詞が使用されます。
We now declare our independence.
「我々はいま独立を宣言する」(実況的報道)
現在形の「点の時間」は日常表現でもたくさん使われています。ただ、現在形の用法としてはややイレギュラーなものです。まずは「現在形=幅のある時間」という原則を捉え、そこから外れる用法を「その他」と考えるのが、知識整理の上では有効です。
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渡辺 雄太(わたなべ・ゆうた)
マナビメイト代表
県立山形南高校を卒業後、1年の浪人を経て東京大学へ進学。大学4年時の夏には、学内プログラムに選抜されUC Berkeley心理学研究室に留学するが、エネルギー企業への就職を選択。国際石油資本や海外の国営企業を相手に、年間数百億円規模のLNG取引の交渉を担当。その後、浪人時代の経験から、教育業界へ身を投じる。以降、首都圏にて、東大/医学部等を志望する最難関中高一貫校の生徒千人以上に英語を指導。そのかたわらで「N先生」のネーミングで『死ぬほどわかる英文法ブログ』を開設し、最高22万PV/月を達成。一般読者からは「理解が深まる」「面白すぎて周りの友人に宣伝した」との声多数。クオリティの高さから、プロ講師の間でもしばしば言及される存在となる。Udemyでは30以上の講座を展開し、その大半がUdemy Business(上位数%の講座)に選出。わずか1年で上位人気講師に名を連ねる。受講者数はのべ8万人を突破。語源やイメージを大切にした講座は、「深いのにわかりやすい」「学生時代に受講したかった」と好評。「N先生」は学生時代の「なべた」というあだ名から。TOEIC満点/英検1級。
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(マナビメイト代表 渡辺 雄太)