「Z世代社員から慕われる人」は誘い方が上手い…センスのいい人が「飲み会のお知らせ」でさりげなく入れる一言

2025年4月4日(金)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

部下とのコミュニケーションではどんなことに気をつければいいのか。企業研修講師の川原礼子さんは「同僚をランチや飲み会に誘うのが難しくなったという声をよく聞く。上司や先輩が若手社員を誘うときには『ひと工夫』を加えることが大切だ」という——。
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■じつは若手は「もっと先輩と話したい」


「最近、若手を誘うのが難しくなった」——私は講師として日々、企業に赴いていますが、そんな声を、研修や打ち合わせの場で耳にすることが増えています。チャットやメールといった非対面のやり取りが中心となった今、雑談や軽い声かけの機会が減少し、関係性を築く前にコミュニケーションが完結してしまう場面が増えました。その結果、若手社員をどう誘えばいいか分からず、「嫌がられるかもしれない」「断られたらどうしよう」などと、戸惑う上司や先輩も多くなっているのが現状です。


今、社内コミュニケーションにおいて「誘う力」は、見えにくかった価値として再評価されつつあります。特にZ世代と呼ばれる若手は、「無理に付き合いたくない」や「気をつかいたくない」という価値観を持つとされています。一方で、「もっと関わりたい」「先輩と話したいし、学びたい」という本音を持ち合わせている人にも多く出会ってきました。ただ、そうした新人にとって、自分から声をかけるのは勇気がいること。遠慮してしまい、きっかけをつかめずにいるのです。


だからこそ、先輩や上司からの自然なひと言が、相手の心を動かす一つの「扉」になるのです。では、どのような誘い方なら、相手にとって負担が少なく、かつ信頼関係も築けるのでしょうか?


どんな言葉なら相手が安心できるか、どんなタイミングや雰囲気なら快く応じてもらえるか——。社内で人間関係を築く達人たちが実践している「一流の誘い方」には、ある共通点があります。それは「相手目線」であるということです。


■達人が実践する「相手目線」の誘い方とは


ここで、相手目線のOK例と、相手目線ではないNG例をいくつか挙げてみましょう。


OKな誘い方
1.「来週打ち上げやるんだけど、気が向いたらぜひ! 無理せずね」
理由:軽やかで強制のない言い方です。「無理せず」があることで、相手の都合を尊重している姿勢が伝わります。


2.「○○さんも来る予定で、リラックスした雰囲気になると思うよ。よかったらぜひ」
理由:一緒に来る人や雰囲気を共有することで、場をイメージしやすくなります。「安心して行けそう」と思わせる配慮が含まれています。


3.「最近忙しかったし、少しゆっくり話せたらと思って。顔出すだけでも大歓迎だよ」
理由:誘う目的が明確かつ、参加スタイルの自由度も提示されています。「参加してもしなくてもOK」という空気が、相手の心理的安全性を高めます。


■配慮のつもりが、相手にとっては負担になることも


NGな誘い方
1.「みんな行くから、行こうよ」
理由:多数派の圧力をかけるように聞こえる可能性があります。断りにくくなり、行かなければ後々の関係性に響くかも? という不安をあおります。


2.「都合つけてくれたら助かるんだけど」
理由:一見配慮しているようで、自分都合の誘い方です。相手が都合つかず断らなければならないとき「助かる」が、心の負担になることも。


3.「前回も来なかったし、たまには顔出してよ」
理由:本人の事情を無視して過去の参加不参加を持ち出すのは、遠回しな圧力になります。「今回は行こうかな」と思っていた気持ちの芽を摘むことにもなりかねません。


プレジデントオンライン編集部作成

さらに、ここからは、社内で信頼を集める先輩たちの実践事例をご紹介します。実際に“誘い上手”と呼ばれる人たちは、どんな工夫をしているのでしょうか?


■誘い上手は「ひと工夫」を加えている


1.若手を誘うときは「情報」を添えて安心感を

ある誘い上手な30代の女性社員は、新しいメンバーを迎える際、まずは複数人でのランチに誘うようにしています。その理由は、「いきなり1対1だと緊張させてしまうかもしれないから」。さらに、彼女が大事にしているのは、相手が不安を感じないよう、誘う際に情報をしっかり添えることだそうです。


「誰が来るのかわかると安心するって、若手が言っていたんですよね。だから、『気楽な感じだよ』という雰囲気も、あわせて伝えるようにしています」


たとえば、「○○さん、※※さんと、会社付近のお店でみんなでランチしようって話しているんだけど、よかったらどう?」というように、相手が状況をイメージしやすいよう配慮する。これだけでも心理的ハードルはずいぶん下がりますよね。


誘う側のちょっとした気づかいが、相手にとっては大きな安心感につながるのです。


2.「相手にとっての意味」をそっと添える

また、「誘い上手」として社内で信頼を得ている、大手企業の人事部の女性社員もいます。彼女のランチ予定は、後輩たちからのリクエストでびっしり埋まっているほど。ポイントは、彼女から誘う際には、「ひと工夫を加えること」だといいます。


「誘うときには、相手にとってどんなメリットがあるかを自然に伝えるようにしています」


例えば、「このエリアのおススメの店を紹介するよ。一緒に行かない?」と声をかけたり、「今、関わってる○○プロジェクトの担当者と、来週食事するんだけど、一緒に行く? つながっておくと後で役立つかもよ」といった情報を添えたりするそうです。相手にとって意味のある時間だとわかれば、誘いへの抵抗感はぐっと減りますよね。


単なる食事以上に、「学び」「情報」「人脈」が得られることをさりげなく伝える。これが、誘いの納得感を高めるコツです。


■ホンネで話したいなら会議室はNG


3.本音を引き出す「場所選び」

続いては、日常のなにげない場面に限らず、「最近、元気がないな」と感じる後輩を誘いたいときのポイントもお伝えしましょう。たとえば冬場は、寒さや日照時間の少なさなどがメンタルや体調に影響を与える時期でもあります。ほかの季節でいえば、新人には、“5月病”という言葉もありますよね。


このような時期には、話す“場所”がとても重要です。


「気になる後輩がいたら、『最近どう? 話聞かせて』と声をかけて、ランチならゆっくり話せるお店に誘います」


これは、前述の人事部女性の言葉です。


私も似た経験があります。少し様子が気になっていた若手に「お疲れさま」と温かいお茶を差し出したところ、その場で涙ぐんでしまいました。さっそく場所を会社から少し離れたカフェに移したところ、外の空気を吸いながら「実は……」と、人間関係の悩みを話してくれました。無機質な会議室だとどうしても緊張感が強くなってしまいますが、カフェのような「適度にざわついた」場所では、話しやすさや安心感が自然と生まれます。人は、静かすぎる場所よりも少し雑音がある環境のほうが、気持ちをほぐしやすいと言われています。


■「誘いのセンス」が信頼につながる


4.話すより「聴く」が鍵

最後に、誘いの場をより安心できる時間にするために大切なことも補足します。それは、盛り上げようと自分ばかりが話すのではなく「相手に話してもらう」ことも意識することです。


そのうえで、相手の中にある「努力」など良い部分を見つけたら、具体的にフィードバックを伝えてみてください。「すごいよ、超すごい‼」などと褒めちぎるのではなく、ただ、良い部分を伝えるだけです。


「いまの話、すごくわかりやすかった。一つのストーリーになっていたよね」



川原 礼子『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)

こうした言葉は、相手に「見てくれているんだ」「聴いてくれているんだ」と感じさせ、心を動かします。人は、日々の小さな承認の積み重ねで信頼を深めていくものです


誘い上手とは、聞き上手であり、観察上手でもあります。相手の立場に立って、少しだけ心を配る。安心できる情報を添える。話しやすい場を用意する。そして、自分が話すより相手に語ってもらう。そんな小さな気づかいの積み重ねが、「この人とまた話したい」「また一緒に食事したい」という信頼へとつながっていきます。


誘うという行為には、その人の「仕事観」や「人へのまなざし」がにじみ出るもの。誘い方ひとつで、信頼関係の深さも大きく変わります。あなたらしい誘いのセンスを、ぜひ磨いてみてください。磨き続けたその先には、信頼関係がじゅうぶんに築けて、若手メンバーの方から「食事一緒に行きませんか?」と声をかけられるような存在になっていることでしょう。


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川原 礼子(かわはら・れいこ)
シーストーリーズ代表取締役、元リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。2005年、リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。著書に『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)がある。
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(シーストーリーズ代表取締役、元リクルートCS推進室教育チームリーダー 川原 礼子)

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