1日3食も、早寝早起きも、朝の洗濯もやらなくていい…医師・和田秀樹「60代から本当に必要な習慣」【2025年3月BEST5】
2025年4月12日(土)17時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/demaerre
2025年3月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。健康部門の第3位は——。
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▼第3位 1日3食も、早寝早起きも、朝の洗濯もやらなくていい…医師・和田秀樹「60代から本当に必要な習慣」
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健康を維持するために必要な生活習慣は何か。医師の和田秀樹さんは「健康を維持するための基本となる睡眠・運動・食事の生活習慣において『常識』と言われていることにとらわれないほうがいい」という——。
※本稿は、和田秀樹『60歳でリセットすべき100のこと』(永岡書店)の一部を再編集したものです。
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■なぜ「洗濯は朝」と決めつけているのか
朝は何かと忙しくてバタバタしますよね。そこで、朝に行っている家事をひとつ減らしてみませんか? 洗濯は朝にしないで夜にする。たったそれだけで洗濯の効率が上がり、時短にもなります。
1回の洗濯にかかる時間は30分から1時間ほどですが、洗濯物が多い時はそれ以上かかることも。同じ時間を費やすにしても、夜のほうが少し余裕があるでしょう。
その日に着た洋服や使ったタオルなどを夜のうちに洗濯すれば、雑菌の繁殖を防ぐことができて、洗濯物が臭いにくくなります。
お風呂の残り湯を洗濯に再利用する場合、入浴後の温かいうちに使うほうが洗剤の酵素がよくはたらき、汚れが落ちやすくなります。また、電力ピーク時間を外して洗濯機や乾燥機をまわすことで、節電や節約にもなるでしょう。
洗濯物は室内干しにして、朝起きたら屋外の物干し竿にそのままハンガーごとかけるだけ。洗濯機をまわして干す時間を短縮できるため、午前中のうちに洗濯物をしっかり乾かすことができます。
朝から洗濯を始めるよりも取り込むまでの時間が早まり、日中の時間を有効に使うこともできます。
今や「あたり前」になっている家事のルーティンが変わると、忙しい朝にちょっとした余裕が生まれます。この空き時間を、趣味やウォーキング、読書や勉強など自分のやりたい「朝活」にあてると、きっと毎日が充実することでしょう。
朝やっている家事を夜にやってみる。そんなちょっとした発想の転換で、新しい時間をつくることができるのです。
「懸崖撒手(けんがいさっしゅ)」(禅語)——思い切って何かをすることのたとえ。「固定観念を捨てて発想を転換しましょう」という意味合いの言葉です。
■規則正しい生活をしなくてもいい
「規則正しい生活」とは、健康を維持するための基本となる睡眠・運動・食事の生活習慣が整っていることです。規則正しい生活を送ることは当然、「よい」ことではあるのですが、3つの「常識」を例に挙げて少し見方を変えてとらえてみましょう。
まずは、「早寝早起き」。年齢が上がるにつれて睡眠時間は短くなっていきます。そのため、早く寝て早く起きるという習慣よりも、質のよい睡眠をとることのほうが大切です。布団の中の温度や室内の湿度を適切に保つなどして、快適に眠れる環境をつくりましょう。
続いて、「毎日運動」。厚生労働省は、65歳以上の健康な人は毎日40分、身体活動を行うように推奨していますが、運動量や運動強度(負荷)、運動する時間次第では筋肉に疲労が残り、ケガをしたり筋肉を痛めたりすることもあるので気をつけましょう。
最後は、「1日3食」。お腹が空いていなくても決まった時間にきっちり食べていては、胃腸をはたらかせすぎです。胃腸を整えるためには「食べる時間を決めない」ことも大事だという胃腸科医もいます。自然な空腹状態をつくって、胃腸を休めるようにしましょう。
今まで信じてきた「常識」にとらわれずに、年相応に自分に合った「常識」に更新していきましょう。年を重ねた自分の体のことを考えて、規則正しい生活を見直してみてはいかがでしょうか。
「隻手音声(せきしゅおんじょう)」(禅語)——両手を打つと音が出るが、片手ではどんな音がするかという禅問答。理屈や常識にとらわれずに考えることができるようになりましょう。
■「朝活」を習慣にする
朝起きてしばらくの間、ぼーっとしていたり、何気なくテレビをつけて情報番組や朝ドラを観ていたりしていませんか? 60歳になってもそんなふうに無駄な時間を過ごすことがないように、起きたら「朝活」に取り組みましょう。
和田秀樹『60歳でリセットすべき100のこと』(永岡書店)
「朝活」では、ウォーキングやストレッチなどの運動や、趣味、勉強だけでなく、自分と向きあうヨガや坐禅を行うのもいいでしょう。今やオンラインで参加できるものもあります。
「朝活」は人生を豊かにする活動であれば何でもいいのです。まずは、自分にできそうなことから始めてみるといいでしょう。
朝起きたらいったん外に出て、日光に当たってから「朝活」をするのがおすすめです。朝の光を浴びると体内時計がリセットされます。また、セロトニンの分泌が促され、脳が覚醒して前向きな気持ちになります。
写真=iStock.com/kyonntra
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ほかにも、カルシウムの吸収をよくするビタミンDが生成されて、骨や歯を強くしたり、免疫力を向上させたり、ストレス解消やメンタルを安定させたりする効果が期待できます。このように、日光浴にはさまざまなメリットがあるのです。
■「朝活」のために睡眠時間を削るのはダメ
ちなみに、脳がもっとも効率よくはたらくのは、朝目覚めてからの3時間です。ただし人によって、または体調次第では朝起きてすぐに活動することが難しいこともあるでしょうから、自分のペースで「朝活」に取り組みましょう。
また、寝不足の状態で続けても体によくないので、「朝活」のために睡眠時間を削らないように。年を重ねたら何事も無理をしない程度に、ゆるくやるのが人生を楽しむコツですから。
「平気で人生を1時間無駄にする人は、人生の価値をまだ知らないのだ」(チャールズ・ダーウィン/学者)——かぎりある人生の時間を大切にしましょう。
(初公開日:2025年3月9日)
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)