公務員のマネジメント能力向上に必要なスキルの明確化に関する報告書を公表

2025年4月21日(月)14時16分 PR TIMES

 株式会社日本総合研究所(本社:東京都品川区、代表取締役社長:谷崎勝教、以下「日本総研」)と株式会社グロービス(東京都千代田区、代表取締役:堀義人、以下「グロービス」)は、昨年7月に設立した「行政官のスキル明確化とアップデートに関する研究会」(以下「本研究会」)において、行政官に代表される公務員のマネジメント能力向上に資するスキルの明確化について検討した内容を、報告書(以下「本報告書」)として取りまとめましたので公表します。

本報告書の概要および本編は、以下のリンクからご覧いただけます。

「行政官のマネジメント能力向上に資するスキルの検討報告書」
(概要)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2025/0421-1.pdf
(本編)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2025/0421-2.pdf


■本研究会設立の背景
 近年、公務員には複雑化する経済・社会課題に対処するために、より高度な公務遂行力が求められています。一方で、非効率な業務慣行や自己の保有スキルに対する不透明感から、これからの公務の中心的な担い手となる中堅・若手公務員の退職が進むなど「公務員離れ」が顕著となり、新卒採用への応募者の減少も相まって、公務員の人材不足が深刻な課題となっています。そのため、行政組織においては、新卒採用の強化に加え、離職防止や民間出身の人材の積極的な採用を進めるとともに、退職した人材の復帰を容易にする「リボルビングドア」の整備など、人材の流動化に対応する仕組みを構築することが急務となっています。こうした仕組みを実現するためには、公務員が職務を遂行するために必要なスキルを明らかにすることが重要であり、それらのスキル取得とキャリア開発が公務員の「職務の魅力」を認識することに繋がるとして、人事行政諮問会議などでも議論がなされているところです。

 このような状況の中、シンクタンクとして各種の政策提言を行う日本総研と、年間3,300社以上の企業向けに人材育成から組織開発まで幅広く支援するグロービスは、公務員に求められるスキルの明確化やキャリア開発を通じて、公務の担い手の確保と組織の生産性向上を支援するため、2024年7月に現役・OB公務員および民間の有識者とともに本研究会を設立*1 し、検討を進めてきました。

 本報告書は、国家公務員総合職の管理職に求められるスキルの明確化を主な検討対象としています。中でも、各省庁で共通して必要とされる能力であるにも関わらず、まだ十分に定義されていない「マネジメントスキル」を中心に議論を重ね、その結果を取りまとめました。

(本研究会の概要)
研究会の名称:「行政官のスキル明確化とアップデートに関する研究会」
構成メンバー:12名(現役公務員5名、公務員OBおよび有識者7名)
実施期間  :2024年7月〜2025年3月(計7回実施)
検討内容  :行政官に必要なスキルの明確化および、スキルの効率的な取得方法、ならびに保有スキルの可視化と人事施策への活用方法
事務局   :株式会社日本総合研究所、株式会社グロービス

【検討結果の概要】
1. 行政官におけるスキル明確化の意義
 公務の意義や魅力を示し、組織の生産性向上を実現するためには、公務の遂行に必要なスキルを明確化することが不可欠である。特に、複雑化・高度化する公務を着実に遂行しつつ、生産性を高めるためには、公務における「マネジメント」の概念を、従来の与えられた人事、予算、業務を着実にこなす「運営」から、環境変化に機敏に対応できるように組織を戦略的かつ効率的に動かす「経営」へとアップデートした上で、必要な「マネジメントスキル」を明確化する必要がある。同時に、公務の質を向上させるためには、管理職の意思決定能力を高めることも重要であるが、「マネジメントスキル」を明確化・共通化することで、公務員個人の資質に頼らない能力開発を行うべきである。

2. 必要なスキルの分類と具体的なスキルの抽出
 本研究会では、公務の遂行において求められるさまざまなスキルを以下の4つのカテゴリーに分類し、具体的なスキルを抽出した。

[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/52928/176/52928-176-018a7874faeda077e3c3f83df259557c-856x405.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
特に3.に分類されたスキル項目は、民間企業の管理職に必要とされる「マネジメントスキル」と多くは共通するものであり、民間企業で利用されている研修などのスキル取得・開発手法が活用できうると結論づけた。

3. スキルの取得と開発
 「マネジメントスキル」をはじめとした公務の遂行に必要なスキルを主体的・効率的に取得し、公務員としての能力・キャリア開発につなげるためには、以下の段階的な取り組みを組織全体で行う必要がある。

1.職務とスキルの紐づけ
スキルの取得が職務の遂行に必要である、もしくは役立つということを、当事者である公務員自身が認識することが重要である。そのためには、職務権限を示す規程とスキルを紐づけることが必要である。

2.スキル取得推進の仕組み整備
 職務に応じて適切なスキルを取得するための研修体系を整備するとともに、多忙な公務員が効率よく実践的にスキルを取得できるように、eラーニングやケースメソッドの活用、OJTへ過度に依存しないようなOff JTとの適切な組み合わせ、外部との交流機会を設けるといった工夫も検討すべきである。

3.保有スキルの可視化
 公務員個人の能力・キャリア開発を促進するとともに、組織の生産性向上を実現させるためには、個人が保有しているスキルを可視化することが重要である。例えば、人事記録にスキルの取得履歴を反映させるなどの施策が有効であると考える。

4. 人事施策への展開
 スキルの明確化と取得推進そのものは、公務の生産性向上や個人のパフォーマンス向上を実現させるための端緒に過ぎず、最終的にはそれらの取り組みを人事施策へ展開することが肝要となる。具体的には、可視化されたスキル情報を、昇給・昇格の判断材料に活用することや、スキルを意識したキャリア指導、さらには公務の生産性を高めるという観点から適切なスキルを有する人材配置のために活用することを想定している。
 このような取り組みを継続することにより、職務とスキルの紐づけが定期的にアップデートされることになり、将来的に公務員のジョブ型/スキルベース型人事制度*2 の検討に資すると考える。

5. 取り組みの波及効果
 本研究会においては、これまで特に十分な議論がなされてこなかった公務員の「マネジメントスキル」を中心に、国家公務員総合職の管理職に求められるスキルの明確化を検討対象としたが、組織全体での取り組みを推進する上では、国家公務員全体に波及させるべきである。また、公務の担い手不足は国家公務員だけではなく、地方公務員にとっても課題であり、今回の検討を地方公務員にまで拡大させることも十分に意義がある。
 さらに、近年は官民連携が進み、民間企業が積極的に政策提言に関与する機会が増えたことで官民の人材交流も加速している。今回の検討で明確化した「マネジメントスキル」を中心に、官民においてもスキルの共通化を図ることがリボルビングドアの実現に寄与すると考えられる。


■今後の取り組み事項
 本研究会では、今後も本報告書をもとに、関係する中央官庁や地方自治体との対話を行い、さらなる提言を行う予定です。また、スキルのさらなる精緻化と、これに関する海外・民間の事例の収集などについても、今後の研究会活動の一環として取り組む予定です。
 さらに、本研究会で検討した事項を実現するために、公務の中核を担う幹部候補となる公務員や、民間から公務員に転じる人材に対して、スキル取得と能力向上のための教育・トレーニング機会などの具体的なサービスの提供を試行します。
 
 なお、本研究会では「マネジメントスキル」を中心に議論を行いましたが、中長期的には公務員人事制度の改革や、統治機構も含めた行政組織・機能の改革を見据えて公務を再定義するための議論が必要になると考えられます。将来的には、これらも本研究会の検討事項に含め、提言を行う予定です。

*1 「公務員のスキル・トレーニングの在り方に関する研究会を設立」(日本総研、グロービスニュースリリース/2024年7月5日)
https://www.jri.co.jp/company/release/2024/0705/

*2 スキルベース型人事制度とは、個々人が持つスキルや能力を中心に組織を構築・運営するもの。変動の激しい社会において、柔軟な組織運営が可能になるとして注目され始めている。


◆日本総合研究所(https://www.jri.co.jp/(https://www.jri.co.jp/))
 日本総合研究所は、生活者、民間企業、行政を含む多様なステークホルダーとの対話を深めながら、社会的価値の共創を目指しています。シンクタンク・コンサルティング事業では、パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。傾聴と対話で、多様な個をつなぎ、共にあらたな価値をつむいでいく。」を掲げ、次世代経済・政策を研究・提言する「リサーチ」、次世代経営・公共を構想・支援する「コンサルティング」、次世代社会・市場を創発・実装する「インキュベーション」を、個人間や組織間で掛け合わせることで、次世代へ向けた価値創造を強力に推進しています。


◆グロービス (https://www.globis.co.jp(https://www.globis.co.jp))
 グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。
「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。
 さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

グロービス:
学校法人 グロービス経営大学院
・日本語(東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン)/英語(東京、オンライン)

株式会社 グロービス
・グロービス・エグゼクティブ・スクール
・グロービス・マネジメント・スクール
・企業内研修
・出版/電子出版
・「GLOBIS 学び放題×知見録」/「GLOBIS Insights」
・「GLOBIS 学び放題」/「GLOBIS Unlimited」

グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社
顧彼思(上海)企業管理諮詢有限公司
GLOBIS ASIA CAMPUS PTE. LTD.
GLOBIS Thailand Co., Ltd.
GLOBIS USA, Inc.
GLOBIS Europe BV
GLOBIS Manila Inc.

その他の活動:
・一般社団法人G1
・一般財団法人KIBOW
・株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント
・株式会社LuckyFM茨城放送


【本件に関するお問い合わせ先】
グロービス 広報室 担当:土橋涼
E-MAIL: pr-info@globis.com

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