東京都区部の3月「家賃」30年ぶりの上昇率、建設費や「分譲」高騰が影響…さらに拡大する可能性も
2025年4月22日(火)7時0分 読売新聞
長期間大きな変動がなかったため、消費者物価指数(CPI)では「岩盤」とも呼ばれてきた家賃が上昇している。3月の東京都区部のCPIで「民営家賃」の前年同月比の上昇率は1・1%で、1994年10月以来、30年5か月ぶりの高い上げ幅となった。家賃は家計支出に占める割合が大きく、物価上昇の中での可処分所得の減少は個人消費の低迷につながるとの指摘も出ている。(橋谷信吾、橋本龍二)
全国でも
今春、四国地方から上京して東大院に進学した男性は、東大本郷キャンパス周辺の東京都文京区内を中心に賃貸マンションなどを探したが、家賃の高さから早々に断念した。最終的に足立区の賃貸マンションを契約したが、「物価高で支出が増える中、払える家賃には限界があった」と振り返る。
文京区内で不動産仲介業を営むベステックスによると、現在の本郷キャンパス周辺のワンルームマンション(20平方メートル程度)の相場は14万円前後で、5年前から1万〜2万円値上がりしているという。
家賃上昇は全国で起きている。3月の全国のCPIの上昇率は0・4%となった。上昇は2023年6月以降、20か月連続だ。
購入見送り
不動産サービス大手アットホームがまとめた今年2月のマンションの平均募集賃料によると、東京23区の30平方メートル以下の個人向け物件は5年前から7・6%、50〜70平方メートルの家族向け物件は26・1%それぞれ高くなった。東京23区以外も大阪市、名古屋市、福岡市で個人向け、家族向けともに上昇した。
家賃上昇の背景は複合的な要因が影響している。新築物件では、建設費用や借入金利の上昇の影響を受けて高めの家賃が設定されることが多いほか、既存の物件もリフォーム代や共用部分の電気代などの光熱費の上昇分を家賃に反映する動きが強まっている。
また、家族向けの物件の家賃の上昇は、分譲マンションの価格高騰の影響が大きい。
不動産経済研究所が21日発表した24年度の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション1戸あたりの平均発売価格は前年度比7・5%上昇の8135万円で、過去最高を更新した。東京23区は11・2%上昇の1億1632万円で、2年連続で1億円を超えた。
価格高騰を受けて購入を見送って賃貸を選ぶ人が増えており、需要の高まりから家賃も上昇している状況だ。
右肩上がり
物件のオーナー側は今後も家賃を引き上げる方針で、上昇局面は当面続く可能性がある。
約130万戸の賃貸住宅をグループで管理する不動産大手の大東建託は順次、家賃の引き上げを借り主に伝えている。これまでに今年中に値上げを予定する約50万戸に通知を実施した。既に約8割が応じているという。首都圏で約90戸の賃貸物件を持つ男性(64)も「物価上昇に合わせて家賃が上がるのは健全」と話す。
家賃は家計に占める割合が大きく、食費などと比べて節約は難しい面がある。不動産ビジネスに詳しい三菱UFJ信託銀行の船窪芳和氏は、「都市部を中心に家賃の上昇幅はさらに拡大する可能性があり、個人消費に負の影響を与える可能性もある」と指摘している。