郵便局での点呼不備2391か所・全国の75%…日本郵便社長「構造的な問題」と陳謝
2025年4月23日(水)20時59分 読売新聞
記者会見の冒頭に頭を下げる日本郵便の千田哲也社長(23日午後、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影
日本郵便は23日、集配業務を担う全国の郵便局のうち、75%にあたる2391か所の拠点で、法令で義務づけられた配送車両の運転手への点呼を適切に行っていなかったと発表した。同日、総務省と国土交通省に調査結果を報告した。国交省は貨物自動車運送事業法に基づき監査を進める。
全国調査は、近畿地方の郵便局で点呼を実施せずに配送業務を行っていたことが発覚したため、3月から3188か所の郵便局を対象に実施。発表によると、不適切な点呼は13支社の全てで確認され、2391か所で乗務前後に飲酒の有無などを調べる点呼を怠ったり、点呼を行っていないのに虚偽の記録を作成したりしていた。貨物自動車運送事業法の関連省令では、配送車両の運転手らに対し、酒気帯びの有無や健康状態などを確認するための点呼を義務づけている。
日本郵便の千田哲也社長は23日、東京都内で記者会見し、「不備は全国的に発生しており、会社全体の構造的な問題だと受け止めている。最も大きな原因は法令順守意識の欠如だ」として陳謝した。千田氏は、国交省や総務省の対応を踏まえ、役職者の処分を検討していく考えを示した。
点呼の不備が見つかった割合は、北陸、北海道、九州で85%超となるなど地方で高い傾向がみられ、千田氏は「職員や管理者も少ない。管理が届きにくかったのが大きいのでは」との見方を示した。調査では「周囲もやっていない」「面倒だから管理者がいる時のみやった」などとの声があったという。
日本郵便の本社や支社は、郵便局が作成した書面の内容確認などにとどまり、虚偽の記録作成を把握できなかったとしている。本社が作成した点呼マニュアルにも誤りがあり、複数で行うべき点呼を1人だけで実施することを容認していた。
悪質な不正の郵便局から監査へ
日本郵便から調査結果の報告を受けた国土交通省は、貨物自動車運送事業法に基づき、2391か所の中でも悪質な不正のあった郵便局から順次、地方運輸局・支局による監査を進める。報告前に不正が判明した兵庫県内の郵便局では、すでに監査に着手している。
国交省によると、同法は軽自動車(調査対象郵便局で計3万2000台)による事業で届け出制、トラックなどその他の車(同2500台)で許可制を採る。点呼の未実施や記録改ざんなどが監査で確認されれば、郵便局ごとに車両使用停止の行政処分が出る。
国交省は点呼を「安全輸送の要」と位置づけており、許可事業では、極めて悪質な不正が確認された場合には許可取り消しや地方運輸局管内で一括した事業停止といった厳しい処分もあり得る。
また総務省は23日、日本郵便法に基づき、同社に対して郵便・物流サービスの確保などを求める報告徴求命令を出した。不正な点呼が蔓延(まんえん)している疑いが強いことから、本・支社側にガバナンス上の問題点がないか、国交省とも協力して調査を進める方針だ。