「食事中むせる」「すぐつまづく」人は脂肪肝の疑い…肝臓外科医が40代から勧める「朝食に摂取すべき」食材の名前

2025年4月24日(木)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ahirao_photo

肝臓から脂肪を落とすにはどうしたらいいのか。肝臓外科医の尾形哲さんは「現代では成人の3分の1が、肝臓に5%以上の脂肪沈着が見られる病態“脂肪肝”を罹患していると推計されている。この原因は食べすぎや肥満だけではない」という——。

※本稿は、尾形哲『肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


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■外見が変わらなくても「脂肪肝」は進行している


成人の約3分の1が「脂肪肝」といわれる昨今。若い頃と比べて体重が激増したとか、見た目がかなり大きくなったという変化がなくても、じわじわと肝臓に脂肪を蓄える人が増加中です。


「脂肪肝」とは、肝臓に5%以上の脂肪沈着が見られる病態のこと。脂肪肝を放置すれば、肝細胞に炎症が起こる「脂肪肝炎」を生じ、肝硬変や肝臓がんの引き金になることもあります。


しかし、残念ながら「脂肪肝」が進んでも自覚症状はほとんどなく、多くの人が見過ごしているのが現状です。


そもそも「脂肪肝は肥満の人がなる」と思われがちです。確かに、BMI25以上の肥満の人に脂肪肝が多いことは事実。肥満と指摘されている人は、脂肪肝のリスクがあることを自覚しておくべきでしょう。


一方で、BMI25未満でも、若い頃に比べて体重に大きな変化がない人でも、40歳以上の人はそれだけで脂肪肝のリスクが高いことが示されています。


なぜなら、“40代以降は勝手に筋肉量が減っていく”からです。最近つまずきやすくなった、瓶のフタが開けづらくなった、食事中にむせやすくなったという人は、筋肉が衰えているサイン。肝臓に脂肪がため込まれているかもしれません。


■なぜ筋肉量が減ると肝臓が脂肪化するのか?


筋肉量が減ると、なぜ肝臓が脂肪化しやすくなるかを説明します。


食事をすると、エネルギー源である「ブドウ糖」は体の中に一定量蓄えられます。その保管場所が、「血中」と「筋肉」と「肝臓」の3つです。血中では、いわゆる「血糖」としてブドウ糖のまま存在しますが、貯めておくというよりは少量が流れているイメージです。それに対して筋肉と肝臓では、ブドウ糖を一時的に結合する「グリコーゲン」に形を変えて貯蔵しています。


ここで筋肉量が減るとどうなるでしょうか。


筋肉でのグリコーゲン貯蔵のキャパが減り、行き場を失うブドウ糖が生じます。血中に流れる糖は少量なので、その大半は肝臓で対処するしかありません。


とはいえ、肝臓でグリコーゲンを貯蔵できる量にも限界があります。ブドウ糖は、グリコーゲンでの貯蔵限度オーバーになると、インスリンというホルモンの作用で「中性脂肪」に形を変え、肝細胞に押し込むのです。これが「脂肪肝」です。本来、肝臓は脂肪を貯める場所ではないので、そこに脂肪がたまれば不具合が起きるのも当然でしょう。


筋肉量が減ると、肝臓に脂肪が増える理由はもう1つあります。


それは、“筋肉が減るとエネルギー消費が減る”ということ。体を動かすために筋肉が収縮するときには、大量のエネルギーが消費されます。事実、摂取したブドウ糖の7〜8割は筋肉で使われています。


しかしその筋肉が減れば、エネルギー消費量もダウン。エネルギーとして使われずに体にとどまるブドウ糖をどうにか保管するために肝臓に中性脂肪を増やし、「脂肪肝」がさらに進行していくわけです。


■40歳を過ぎると筋肉量が減るワケ


残念ながら20代と同じようにタンパク質を食べていても、40代以降では筋肉量は減っていきます。理由は、加齢によってタンパク質が筋肉に変わりにくくなるから。


筋肉は「筋タンパク質」からできています。食事から摂取したタンパク質(アミノ酸)を使って、体はこの筋タンパク質を合成します。しかし、40代以降になると筋肉細胞がアミノ酸に対して反応しづらくなり、タンパク合成のスイッチが入りにくくなるのです。専門的には、これを「筋タンパク同化抵抗性」と呼んでいます。


また、40歳を過ぎると筋肉を成長させる男性ホルモンの「テストステロン」や、筋タンパク質の合成をサポートする女性ホルモンの「エストロゲン」が減ることも、筋肉量の減少に拍車をかけます。


■体重では判断できない「サルコペニア肥満」


40代以降に訪れる体の変化はやむを得ないこともありますが、指をくわえて見ているだけでは、筋肉量は減るいっぽうです。放置すれば脂肪肝の進行が早まるだけでなく、「サルコペニア」のリスクも上昇してしまいます。


サルコペニアとは、筋肉の減少を意味します。語源はギリシャ語で、“筋肉”を意味する「サルコ」と、“喪失”を意味する「ペニア」を合わせた造語です。サルコペニアになると転倒しやすくなるだけでなく、飲み込みづらくなる、認知症リスクが上がるというデータもあります。


筋肉繊維が細くなると、その隙間に脂肪が入り込みやすくなります。いわゆる牛肉のサシのようなもので、筋肉が霜降り状態に。これが高じると「サルコペニア肥満」になります。体重や見た目が変わらなくても、実は脂肪が増えている恐ろしい状態なので、いち早く脱却する必要があります。体重だけでは判断できないので、私が担当する「スマート外来」では、必ず骨格筋量も測定しています。


サルコペニアになっていないかを簡単に確認する方法もあります。それが「握力測定」です。利き手の握力が、男性28kg、女性18kg未満だとサルコペニアの可能性があります。実際には、「歩行速度」や「筋肉量」も踏まえてチェックする必要がありますが、簡易版として参考にしてみてください。


つまり、40歳を過ぎたら筋肉量をいかに維持、強化していくかが大命題になります。


■筋肉量を増やすために「タンパク質」を摂ろう


そこで、筋肉量を増やすタンパク質の摂り方をお伝えしましょう。


筋肉の成長には「タンパク質」が欠かせませんが、食事で摂ったタンパク質は、アミノ酸に分解後に腸で吸収されます。そして血液に乗って全身に運ばれ、筋肉細胞に届けられて、アミノ酸が筋肉の合成に使われます。


筋肉量を維持するのに必要なタンパク質の量は、“1日に体重1kgあたり1g分”です。58kgの人なら、1日に必要なタンパク質量は58gになります。積極的に筋肉量を増やしたいときは、少し多めの60gを目標にするといいでしょう。


そして、1日の必要量を朝、昼、夜の3食で割った量が、1食で摂るべき目安です。1日に60gのタンパク質が必要なら、1食当たり20gになります。ポイントは1日のうち、どこかで多く摂ったり、少なく摂ったりという偏りをできるだけなくすことです。


なぜなら、1回の食事で吸収できるタンパク質量には上限があり、それを超えて摂っても筋肉は合成されません。それどころか、余ったエネルギーは脂肪になって蓄えられてしまいます。だから、タンパク質はこまめに適量摂取することが重要になります。


特に朝食時のタンパク質摂取はマスト。就寝時はタンパク質の分解が進みやすいので、朝食でしっかりタンパク質を補給するようにしましょう。


■1食20gのタンパク質を摂取できる食品


1食で20gのタンパク質量を確保するには、何をどれくらい食べればいいのでしょうか。


肉や魚は“手のひらサイズ”を食べれば、約20gのタンパク質を摂れます。食材の分量としては100gほどになります。ささみや鶏むね肉、魚介を優先すると、エネルギー摂取量を抑えられます。


そのほか、タンパク質を約7g摂れる食品が以下です。


・卵:1個
・納豆:1パック
・豆腐:3分の1丁(およそ100g分)
・油揚げ:1枚分


これらから、3つを組み合わせて食べれば、1食で20g以上のタンパク質を摂取できる計算です。


写真=iStock.com/GI15702993
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GI15702993

タンパク質を3〜4g摂れる食品が以下です。


・プレーンヨーグルト:100g
・6Pチーズ:1個


手軽に食べられてちょい足しもしやすい食品なので、タンパク質量が不足しそうなときに、積極的にプラスしてみてください。


なお、牛乳や豆乳は200mlでタンパク質を7gほど摂取できます。ただ、糖質も含むため、エネルギーを余計に摂取しやすくなります。牛乳や豆乳をそのまま飲むことはおすすめしていません。しっかりかんでから飲み込む必要がある食品のほうが腹持ちもいいものです。


■食後30分以内の「ゆるスクワット」で筋肉を増強


食事から摂るタンパク質のほかに、筋肉の成長に欠かせないのが“筋肉への刺激”です。筋肉は刺激がないと成長せず、食べたタンパク質も筋肉に変わりません。



尾形哲『肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)

スピーディーに筋肉量を増やし、効率よく脂肪肝を改善する、とっておきの“筋肉刺激法”を紹介しましょう。


それが「ゆるスクワット」。食後30分以内に行うのがポイントです。


スクワットを行うと太ももやお尻の大きな筋肉を刺激できます。特に食後30分以内に実践すると、摂取した糖を速やかにエネルギーとして使うことができ、脂肪の蓄積を阻止。肝臓の脂肪も効率よく燃焼できるようになります。


やり方は、テーブルやイスの背などに手をかけて、立ったり座ったりを10回繰り返します。立つ、しゃがむ動作を3〜5秒かけてゆっくり行いましょう。普段食後になんとなくテレビや動画を見てしまう時間のうち1分でいいので、イスから立ち上がって体を上下に動かしてみてください。


年齢にかかわらず、筋肉量を増やすことはできます。“こまめなタンパク質摂取”と“ゆるスクワット”の実践で筋肉量が増えれば、脂肪の燃焼エンジンが大きくなります。筋肉を増やして、肝臓にたまった脂肪を一掃していきましょう。


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尾形 哲(おがた・さとし)
肝臓外科医
長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。1995年神戸大学医学部医学科卒業、2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。2025年に、東京2か所、京都、兵庫、石川の提携クリニックで脂肪肝専門外来を開設予定。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』、『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』(いずれもKADOKAWA)などがある。
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(肝臓外科医 尾形 哲)

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