健康どころか肝臓をぶくぶく太らせる…専門医が患者に「買うのをやめよう」と説くコンビニで売っている飲み物
2025年4月26日(土)9時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_
※本稿は、尾形哲『肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
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■タイパのいい食事は肝臓にダメージを与える
毎日忙しくて、食事もままならない生活を送っている人がたくさんいらっしゃいます。朝食などを欠食したり、ワンハンドで食べられる食事を飲み込むように食べたりすることで、タイパ(※)のよさを感じるかもしれません。しかし、それが肝臓にダメージを与えています。結果として、肝臓に脂肪が増える「脂肪肝」という病気を抱える人が増加中です。
「脂肪肝は、栄養がしっかり摂れている証拠なのでは?」などと、悠長に考えてはいけません。糖質過多などによる脂肪肝はもちろん多いですが、タンパク質などの栄養が少ないことで筋肉不足に陥り、それが脂肪肝を引き起こしているケースもあります。
脂肪肝を放っておけば肝炎を起こし、そこから肝硬変、肝がんといった命に関わる病気になるリスクが高まります。だから、脂肪肝のサインに気づいた時点で改善の道を目指すべきです。肝臓は、本来、再生力の高い臓器なので、肝硬変に至るまでにいくらでも引き返す道があります。
脂肪肝に最初に気づける機会は、定期的に行われる「健康診断」です。肝機能検査で測定されるALTは、肝細胞に炎症や障害があると上昇する酵素です。一般的な基準値は30U/L前後ですが、それを超えて持続的に高い状態が続く場合、肝臓で何らかの炎症が起きている可能性があります。
近年、こうした異常の背景に「脂肪肝」が隠れているケースが増えています。脂肪肝の診断には腹部エコーなどの画像検査が必要となるため、ALTの値が30を超えていることに気づいたら、かかりつけ医や内科医に一度相談してみましょう。
※タイパ…「タイムパフォーマンス」のこと。費やした時間とそれによって得られた効果である時間対効果を指す。
■3カ月で体重の7%減が肝臓復活のカギ
では、脂肪肝を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。
脂肪肝脱却というゴールに最も早く到達する黄金ルールがあります。それが、“今の体重の7%を落とす”こと。体重を7%落とせば、脂肪肝や脂肪肝炎が改善することが示されています。
体重60kgの人なら、60kg×7%=4.8kgの減量を目指します。
これが最初の目標設定です。目標は必ずメモに残し、毎日目にするところに貼っておきましょう。
ちなみにこの体重減の取り組みは、年に7%落とすというスパンではなく、3カ月で7%落とすことが大切。これこそが、肝臓復活の“最高のタイパ”になります。
そして、目標に近づくために必ずすべきことがあります。それが毎日の「体重測定」。
そんな当たり前のことと思われるかもしれませんが、多くの人は忙しさや食べすぎたことを理由に体重から目を背けるものです。
だからこそ、毎日体重計に乗ること。食事量による体重増減の影響が少ない起床時がベストです。そして、体重を測ったら記録する。手書きでもスマホアプリでもかまいませんが、アプリに記入すれば、自動で体重変化をグラフで示してくれる便利機能を活用できます。
ここで大切なのは、体重を測って記録したことに対して、“自分を褒める”という行為をプラスすること。「今日もクリアした」とガッツポーズをして、マインドセットするだけでもかまいません。面倒なことを今日もこなしたと、いちいち自分を褒めることが、継続のコツになります。
そして、1カ月で体重が2kg落ちていたら最大限の賛美を。私が担当するスマート外来では、1カ月で体重が2kg落とせた人は3カ月後の7%減量を達成しやすいというデータが出ています。
■肝臓から脂肪を落とす食事ルール
脂肪肝を改善するには食事の見直しが欠かせません。以下、スマート外来でお伝えしている食事ルールをまとめておきます。
〈甘い飲み物をやめる〉
昨今、野菜ジュースをはじめさまざまな栄養補給ができる飲料やゼリータイプの食品があります。また、疲労回復のためにエナジードリンクを飲む人もいるでしょう。しかし、こういった栄養を効率よく摂れる飲料には、砂糖よりも甘みが強い果糖ぶどう糖液糖が含まれています。
飲み物でこうした糖分を摂ると吸収スピードが早く、血糖値も急上昇。エネルギーを余計に吸収しやすく、肝臓にとって最大の敵になります。飲み物は水、お茶、ブラックコーヒーにしましょう。
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock
〈野菜を中心に食物繊維を増やす〉
野菜は1日で350g以上が理想です。とはいえ、毎日量を測るのは時間がかかるので、両手にこんもりが1日の量と手ばかりを目安にしましょう。ただ野菜については、食べすぎが問題になることはあまりありません。生野菜に限らず、レンジで加熱した蒸し野菜やスープ、鍋などの調理法もOKです。きのこや海藻なども含めて食物繊維を意識しましょう。
〈精製糖質を減らす〉
減らすというより、“適量にする”と考えるとベター。制限するよりも、よりよい選択をしていると思えば続けやすくなるものです。糖質は1日の上限が130gで、1食での糖質量の目安は20〜40gです。ご飯の量は70gにするとこの量を守りやすくなります。お茶碗に半分くらいの量で、糖質量は25gほどになります。パンなら6枚切り1枚が目安です。白米にもち麦を混ぜるなど、少しでも未精製の穀類に変えられるものがあるとより栄養バランスが整いやすくなります。
穀類には食物繊維やミネラルといった体に必要な栄養素も含まれますから、ゼロにしてはいけません。飲むだけで肝臓にダメージを与える飲料に含まれる糖質とは考え方を分けましょう。
■タンパク質をこまめに摂ること
〈加工食品を減らす〉
添加物の多い加工食品を食べ続けては、解毒作業で肝臓が休まりません。まずはスナック菓子、カップ麺を避けましょう。市販の春雨カップスープは、耐熱のカップに冷凍の洋風野菜ミックスと鶏がらスープの素、水、春雨を入れてレンジ加熱すれば自作できます。春雨を豆腐に変えればタンパク質をプラスできるので、なおよいでしょう。
食べてはいけないというわけではなく、肝臓に優しい食事になるように工夫を楽しむことで続けやすくなります。
〈こまめにタンパク質を摂る〉
脂肪肝の原因に筋肉量の減少が起因するケースもあります。筋肉量を最も効率良く増やすには、1食20gを目安にタンパク質を摂るのがおすすめ。肉や魚は手のひらサイズ(約100g分)で目標の20gのタンパク質を摂れます。
また、卵1個、納豆1パックや豆腐3分の1丁、油揚げ1枚7gのタンパク質を摂れるので、組み合わせつつ1食20gを目指しましょう。ただし、牛乳や豆乳は糖質が含まれているうえ、一気に飲むことで余計なエネルギー摂取をしやすいので、そのまま飲むことは推奨していません。
■まずは甘いドリンクをやめることから始めよう
紹介した食事ルールを守れば、体重は落ちて脂肪肝も改善します。ただ、今日から突然食事スタイルをすべて変えることなんてできません。いえ、正しくいえば、最初の数日は努力してできる人がいます。でも、3日坊主になることが目に見えています。
尾形哲『肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)
だから、優先順位をつけましょう。甘い飲料を飲む習慣がある人は、まずそれをやめるだけで肝機能が改善することが多いです。
そして、調理に時間をかけることはありません。野菜を摂らなきゃと小鉢を何種類も作ることを自分に課していては続きません。スーパーで売っている総菜に頼ってもいいんです。魚をグリルで焼いて洗うのが面倒なら、レンジ加熱で焼き目がつくアイテムを使用してグリルを汚さず、そのまま食洗機にかければいいでしょう。
時間は限られているからこそ、調理の時間を短縮して、食事時間はゆったりと。それが肝臓をよみがえらせ、結果的に自分の時間をつくる大切なポイントです。
なお、筋肉増強のためには運動も大切ですが、ウエアに着替えてジムに行く必要はありません。それより食後30分以内の1分間、机かイスに手をかけてゆっくりスクワットをするほうが継続しやすいです。
今日から走るぞと意気込むよりも、毎日の通勤時間の1分間を速歩きに変えるだけでもいいんです。そうしたチリツモで時間をかけずに肝臓に優しい生活に変える工夫はいくらでもできます。
決して満点を目指してはいけません。できたことに目を向けて日々加点しながら、70点を目指せば大丈夫! 肝臓がよくなれば代謝も勝手に上がっていくので、体重減少のスピードも加速していきます。それこそが最強の健康増進タイパとなって、あなたの将来を支えてくれます。
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尾形 哲(おがた・さとし)
肝臓外科医
長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。1995年神戸大学医学部医学科卒業、2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。2025年に、東京2か所、京都、兵庫、石川の提携クリニックで脂肪肝専門外来を開設予定。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』、『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』(いずれもKADOKAWA)などがある。
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(肝臓外科医 尾形 哲)