「読みづらい文章を書く人」が無意識に使いがちな言葉とは?

2025年4月25日(金)6時10分 ダイヤモンドオンライン

「読みづらい文章を書く人」が無意識に使いがちな言葉とは?

あなたも使っていませんか?無意識に使いがちな「ムダ語」8選20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

Photo: Adobe Stock

この8つを減らすだけで読みやすくなる!

読みづらい文章には、いくつかの共通点があります。そのひとつが「ムダ言葉」を使っていること。

今回は、無意識に使いがちで、なくても通じるケースが多い「ムダ言葉」を紹介しましょう。

最初にクイズです。次の文章のなかに、削っても問題ない言葉が「8つ」あります。どれでしょうか?

==================私たち人事部の意見をお伝えしておくと、今回の従業員満足度調査において非常に重要なことは、この結果を受けて各マネージャーがメンバーのほうに結果を共有するということ。そして具体的な改善策を考えることなどだと思っています。==================

ムダ言葉を削って読みやすくしたのが次の文章です。

==================私たち人事部は、今回の従業員満足度調査を通じて、各マネージャーがやるべきことが2つあると考えています。「メンバーに結果を共有する」と「改善策を考える」です。==================

どうでしょう。だいぶ読みやすくなったと思います。削った言葉をそれぞれ見てみましょう。

①エクスキューズ「個人的な意見としては」「誤解を恐れずに言うと」「ケースバイケースですが」「あくまで参考までに」などと予防線を張ってばかりの文章は冗長になり、自信がなさそうにも映ります。依頼や断りなど効果的なシーンもあるのですが、今回の例文では不要でしょう。

②修飾語「非常に」「とても」「本当に」「かなり」「ちょっと」「少し」といった修飾語。使いやすい半面、なくても通じますし、安易に使うと効果が薄れます。必要ない場面では削除しましょう。

③ことつい多用しがちな「こと」。「〜ことは〜ことである」など、一文のなかで「こと」が続く文章をよく見かけます。こういう場合、主部の「こと」を「の」に変えるだけでも、スマートな印象になることがあります。

【変更前】重要なことは、作業効率を向上させることだ。【変更後】重要なのは、作業効率を向上させることだ。

④代名詞「それ」「これ」「そこ」「あの」「彼」「彼女」などの代名詞は、文章をもったりさせます。なくても通じるようなら省きましょう。

⑤のほう(の方)「私のほうで対応します」「芳村さんの方はいかがでしょうか」など、なにげなく使っていませんか。「私が対応します」「芳村さんはいかがでしょうか」としたほうが読みやすくなります。

⑥という「という」「といった」は文章をマイルドな印象にする一方、冗長になりがちです。なくても通じるようであれば、削ってシンプルにしましょう。

⑦接続詞「そして」「だから」「なぜなら」「また」といった接続詞も同じ。なくても意味が通じる、ほかの表現に置き換えられると思ったらカットしてOKです。

とくに「しかし」と「また」は、ビジネスシーンで多用しがち。近い距離で繰り返している場合は、「しかし」だけでなく「ただ」「ですが」「ところが」など、「また」だけでなく「さらに」「加えて」「そのうえ」などを文脈に応じて使い分けましょう。

⑧などA社とB社しか該当しない話なのに「A社とB社など」と表現をぼかすと、読み手を混乱させかねません。ほかに選択肢がないなら省きましょう。

さて、改めてビフォーアフターを書くと、こうなります。

==================【変更前】私たち人事部の意見をお伝えしておくと、今回の従業員満足度調査において非常に重要なことは、この結果を受けて各マネージャーがメンバーのほうに結果を共有するということ。そして具体的な改善策を考えることなどだと思っています。

【変更後】私たち人事部は、今回の従業員満足度調査を通じて、各マネージャーがやるべきことが2つあると考えています。「メンバーに結果を共有する」と「改善策を考える」です。==================

さらにここでは、プラスアルファとして、ムダ言葉を削ぎ落としたうえで少し手を入れました。

といっても、やったことはシンプル。整理する。これだけです。

ムダ言葉を削ると、欠かせない要素が浮かびあがってきます。

ぼくの場合、大事な要素を「かっこ」に入れて読み進めるようにしています。英文読解で「関係代名詞や接続詞がどこにかかるか」を考えながら読むのと似ているかもしれません。

今回の場合、大事な要素は「人事部の意見」「今回の従業員満足度調査」「各マネージャーがやるべきこと」の3つです。

そこから読み進めて、「各マネージャーがやるべきことは、【メンバーに結果を共有する】と【改善策を考える】の2つに分かれる」と階層化して整理しました。

あとは、日本語にするだけです。「書く」というより「配置する」と言ったほうが近いかもしれません。

修正文を考える際には、上の図を脳内で描きながら、シンプルに言葉を置いてみました。

==================私たち人事部は、今回の従業員満足度調査を通じて、各マネージャーがやるべきことが2つあると考えています。「メンバーに結果を共有する」と「改善策を考える」です。==================

これでも十分わかりやすくなったと思います。よりシンプルにするなら、次のように順番を変えてもいいかもしれません。

==================今回の「従業員満足度調査」の結果、各マネージャーが取り組むべきことは、「メンバーに結果を共有する」と「改善策を考える」の2つだと私たち人事部は考えています。==================

このように、ムダ言葉を削ったあと「整理する(=順番を変えて配置する)」意識をもつと、文章はより読みやすくなります。ぜひ試してみてください。

※ ここで紹介したムダ言葉は、無意識に多用しがちなものであって、絶対悪ではありません。使うかどうかは文脈で判断してください。

庄子錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。

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