『日本製鉄 気候変動対策の検証 2025』を公表
2025年5月8日(木)10時46分 PR TIMES
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/124637/12/124637-12-72e86a20b0ec83e5150b8f6c0904641b-3900x2194.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]日本製鉄 東日本製鉄所 鹿島地区(スティールウォッチ/FINE)
(東京、2025年5月8日)国際気候NGOスティールウォッチは、5月8日、同社の気候変動対策実績を評価する報告書『 日本製鉄 気候変動対策の検証2025』[1]を公表した。報告書は、日本製鉄の現在のロードマップでは、気候変動対策として最も重要な2040年までの間に本格的な排出量削減が行われず、低排出な製鉄に対する投資の遅れが事業リスクと気候リスクを生み出していることを明らかにした。
報告書によると、日本製鉄は国際的に競争力を維持しながらニア・ゼロエミッションの製鉄を追求する多くの機会を有するにも関わらず、同社の経営陣は目標として掲げるグローバル企業には見合わない、時代遅れな石炭を使用する製鉄から脱却できずにいる。
日本製鉄は現在年間2500万トンの石炭を消費し、年間合計生産能力6900万トンの炭鉱に投資している。さらに豪州ブラックウォーター炭鉱の権益の20%取得により1000万トン追加され、同社の総石炭生産能力は石炭専門企業であるBHP三菱アライアンスの6000万トンを上回ることになる。
日本製鉄の現行の2030年排出削減目標である30%削減(2013年比)は、設定時の2021年時点ですでに日本の目標46%を大幅に下回るものであった。さらに、2025年初頭のNDC改定で国家目標は2035年までの60%排出削減に引き上げられ、2040年までに73%削減となっている。一方で日本製鉄の主要技術であるSuper COURSE50の排出削減率が50%に達するのは早くとも2040年代と予想されている。これでは同社が気候変動に対する責任を十分に果たすことはできず、また同社が石炭使用を無期限に継続する意向を示していることになる。
「日本製鉄は石炭を使用する生産拠点での排出を部分的に削減させるだけの技術に重点を置きつつ、オーストラリアの炭鉱への投資を拡大させ、USスチール社買収計画では高炉生産の延長を約束するなど、鉄鋼メーカーという枠を超え石炭事業が中心であるかのように振る舞っている」とスティールウォッチ アジア担当のロジャー・スミスは述べている。「日本製鉄の脱炭素ロードマップは、その目標を1.5度目標に整合させ、石炭を使用する製鉄からの完全脱却に向けた変革に乗り出さない限り、気候変動対策として意味を持たない。石炭に代わる大きな可能性として、オーストラリアやカナダなど再生可能エネルギーが豊富な地域のグリーンアイアンサプライチェーンへの投資が挙げられる」
現在、日本製鉄は石炭を利用する鉄鋼を「グリーン」[2]だと自ら認証する試みによってグリーンスチールへの需要の高まりに応えようとしている。気候変動への対策強化を求める株主の声に対応しておらず[3]、気候変動計画の見直しが遅れている。投資家の期待や世界の競合他社と歩調を合わせるには、2030年代を期限とするより厳しい中間目標と低排出技術の導入拡大が必要となる。[4]
以上
参考:
- スティールウォッチ(https://steelwatch.org/%e5%a0%b1%e5%91%8a%e6%9b%b8/nscca2025jp/?lang=ja)(2025)『日本製鉄の気候変動対策の検証 2025年版』
- 日本製鉄の低排出鉄鋼認証のアプローチは「マスバランス方式」である。これは高排出プロセスで製造された製品に、生産クレジットによる炭素削減量を割り当て「グリーンスチール」とラベル付けする方法である。これは、実際に脱炭素化されたプロセスで生産された鉄鋼の価値を下げることで真の移行を遅らせるリスクをはらみ、また製品レベルの炭素会計における透明性とトレーサビリティを高める必要性を示している。https://steelwatch.org/%e8%ab%96%e8%aa%ac/greenprocurement/?lang=ja
- 日本製鉄の第100回定時株主総会(2024年6月)では、同社の気候変動戦略と政策の強化を求める3つの株主提案が初めて提出された。提案1と2はオーストラリア企業責任センター(ACCR)、および一般社団法人コーポレート・アクション・ジャパン(CAJ)によって共同提出され、提案3は、欧州最大級の資産運用会社であるリーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)とACCRで共同提出された。各提案の議決内容と結果は以下の通り:
- - 提案1:排出削減目標の改善(賛成 21.48%)スコープ1、2、3のそれぞれにおいてパリ協定の目標に沿った温室効果ガス(GHG)排出削減目標を短期・中期的に設定し、開示するとともに、脱炭素投資に向けた設備投資計画の開示を求めるもの
- - 提案2:排出削減達成と連動した報酬(賛成 23.01%)GHG排出削減目標に連動した報酬を求める提案
- - 提案3:ロビー活動情報開示改善(賛成 27.98%)気候変動に関連するロビー活動の情報開示改善を求める提案
なお日本製鉄経営陣は取締役会としてこれら提案に反対の意見表明を行い、自社の取り組みは妥当との姿勢を崩さなかった。
- スティールウォッチ(https://steelwatch.org/%e3%82%b9%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%82%a6%e3%82%a9%e3%83%83%e3%83%81%e3%80%8c%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%82%8b%e9%89%84%e3%81%a8%e8%84%b1%e7%82%ad%e7%b4%a0%e3%80%8d%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%83%bc/greeniron/?lang=ja)『スティールウォッチ「わかる鉄と脱炭素」シリーズ:なぜグリーンアイアン貿易が鉄鋼業界の脱炭素化を後押しするのか』