三流リーダーは「背中で見せる」、二流は「ビジョンを掲げて満足する」。では、部下を迷わせない“一流”は何をする?

2025年5月16日(金)6時35分 ダイヤモンドオンライン

三流リーダーは「背中で見せる」、二流は「ビジョンを掲げて満足する」。では、部下を迷わせない“一流”は何をする?

「新入社員、全員に配りました」「全社員への課題図書にしています」新年度を迎え、そんな声が多数寄せられているのが、書籍『ベンチャーの作法 -「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術』です。転職エージェント「キープレイヤーズ」代表の高野秀敏さんが、1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験から、ベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめました。“きれいごと”抜きの仕事論に、社員や経営者、ベンチャーや大企業を問わず、刊行直後から多数の感想が投稿される異例の反響となっています。サステナビリティ領域で急成長中のベンチャー、Booost株式会社の代表取締役・青井宏憲さんも、本書に大いに共感し、全社員に紹介した経営者のひとり。この記事では、同社広報の永田さんも交えて、著者の高野さんと一緒にお話を伺いました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

Photo: Adobe Stock

社内講演の後に起きた「嬉しい変化」

——『ベンチャーの作法』のマインドを社内に広めるために、どのような取り組みをされたのですか?

青井宏憲(以下、青井) 年始に、著者の高野さんをお招きして社内講演をしていただきました。リアル会場とウェブ配信も含めて、全社員に参加してもらって。

高野秀敏(以下、高野) オファーから開催まで、ものすごくスピード感がありました。「社員全員に読んでほしい」と思ってくださる方はけっこういらっしゃるんですが、そこから実際に講演まで動く会社は多くないんです。銀行系のグループ会社の社長からも「ぜひ講演を」とご連絡をいただくこともあるんですが、「行内の調整に時間がかかってまして…」みたいな話になりがちで。

 その点、青井さんは意思決定が速かった。このスピード感で経営もしているんだなと感じましたね。

——講演後、社内にはどのような変化が見られましたか?

青井 講演のあと、普段はあまり表に出ないタイプのメンバーからも、「すごくよかったです」とチャットで感想が届いたりして。そういうリアクションがあったのは嬉しかったですね。

 あとは、「ベンチャーの作法」という言葉自体が、マネジャーたちの口から出てくるようになりました。新しく入ってきたメンバーにも、「ベンチャーの作法とは、こういうものだから」と伝えるようになっていて。 この考え方が、組織の共通マインドとして定着してきているのを感じます。

「カルチャー」を浸透させるためにやっていること

——新しく加わるメンバーには、どのようにこのマインドを伝えているのでしょうか?

青井 いまは、内定を出した段階で『ベンチャーの作法』を渡して、入社までに読んでもらうようにしています。入社時の面談でも「読んだかどうか」を聞いていますし、場合によってはチャットで個別に確認したりもしています。

 読んでいなくても怒りはしませんが、それぐらい、「この本の内容を会社全体のカルチャーにしたいと思っている」と、感じてもらいたいんです。「これは読むべき本なんだ」と、入り口の段階で理解してもらうことが大切だと考えています。

高野 それが本当にすごいと思います。読んで満足じゃなくて、ちゃんと“実践”に落としているところが。

 全員が読んでいないと、読んでいる人とそうでない人で意識の差が生まれてしまいます。もちろん、何が正解ということはありません。でも、最低限の“方針”が共有されていると、みんな動きやすくなります。自由にやるって、じつはすごく難しいですから。

青井 共通言語を持つことで、組織としての意思疎通もしやすくなります。社長の自分が、全員の仕事を逐一チェックするのは現実的ではありません。だからこそ、全員が同じ目線で判断するための“物差し”が必要になる。

 誰かの行動に対して「良い・悪い」を言い合うのではなく、「それって、あの本に書いてあったことと一致してる?」と、冷静に見る。そうやって、組織の衝突も減っていっていると感じます。

——社内からの反発はありませんでしたか?

青井 反発はなかったですが、「顧客より社長を見ろ」「セカンドペンギンになれ」など、強めの言葉が本の中には出てきますから、「社長も本当にこう思っているんですか?」と聞かれることはありました。でも、私は「はい、そうです」と答えました。もちろん、なぜそうなのかという理由もちゃんと伝えた上で。

 すると不思議なことに、そこから一体感が出てきたんです。腹落ちした社員の動きが変わり、結果として組織のスピード感が上がっていった実感があります。

「100人の壁」を越えるために、行動の指針が必要だった

——本日は広報の永田さんも同席くださっていますが、社員さん側ではこの本をどのように受け止めたのでしょうか?

永田 私は広報として3年半在籍しています。入社した当初は社員30人ほどでしたが、いまでは東京と大阪にオフィスがあり、全社員が一堂に会する機会は限られていました。 私は社長の近くにいるから考えに触れる機会も多いですが、他の部署のメンバーはそうじゃない。そんな中で、全社にメッセージを届けるのは本当に難しいだろうなと感じていました。

 でも、『ベンチャーの作法』が全員に配られて、「これが青井さんのメッセージなんだな」と、素直に感じました。その後に高野さんが講演に来てくださったことで、さらに本の重みが増しました。

 内容についても、もともと私は代理店出身でベンチャー気質があったので、とても納得できました。新しく入ってくる人たちも、ちゃんと“社長の想い”として受け取ってくれていると思います。

青井 社員数が100人を超えると、やっぱり組織はガチャガチャしがちです。いわゆる「百人の壁」を越えるためにも、カルチャーの明文化が必要だと考えていました。

 社員が少なかった頃は自分も現場に入っていたので、背中で見せて伝えることができました。人数が増えたいまでもMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を設計してカルチャーの浸透は図っていますが、それだけでは、「こういうとき、どう動くのか」という行動指針までは語りきれない。そうした組織文化の設計に、この本はとても役立ちました。

——最後に改めて、この本はどんな人におすすめですか?

青井 ベンチャーで働く人、経営する人にとっては、間違いなく必読書です。

 ただ、それだけじゃなくて、大企業にいる人にとっても学びがあると思います。 うちは時価総額5000億円以上の企業とご一緒する機会が多いですが、実際、大手の若手社員って、悩んでいる人が多いんです。会議では何も言えないけど、終わってから「本当はこうしたいんです」って言ってくる人が、めちゃくちゃ多い。

 そういう相談を受けたときには、この本を勧めています。「あなたがベンチャーの作法を心得て、実践すれば、会社も変えていけるんだ」と伝えるために。この本を読んで、「我々の世代が組織や社会を変えていくんだ」という気概を持つ人が増えてくれたら嬉しいですね。

青井宏憲(あおい・ひろかず)

Booost株式会社 代表取締役2010年に東証一部コンサルティング会社に入社し、スマートエネルギービジネスチームのリーダーを経て、2015年4月に企業価値向上をワンストップで実現するSustainability ERPの開発運営を行う当社を設立。グローバル85カ国19万2000拠点以上でプラットフォームが活用されている。スマートエネルギー全般のコンサルティング経験が豊富で、脱炭素化のためのソリューションとして、創エネ、省エネ、エネマネにも精通。2025年4月1日、Booost株式会社へ社名変更。

(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』に関連した書き下ろしです。書籍では「なにがあっても結果を出す人の働き方」を多数紹介しています。)

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