これで寝たきりと認知症から逃げおおせられる…管理栄養士「糖質制限にある4つの驚きのメリット」
2025年5月16日(金)16時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mikhail Sedov
※本稿は、大柳珠美『糖質を“毒”にしない食べ方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/Mikhail Sedov
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■ピンピンコロリを実現したいなら「糖質制限」を
日本の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳(2023年)。健康寿命(自立した生活を送れる期間)との差が男性は約9年、女性は約12年もあることから、元気な晩年を過ごした方ばかりとは言い難いでしょう。
ピンピンと元気に暮らし、長患いすることなくコロリと逝(い)く。「ピンピンコロリが理想の旅立ち」と口にする人が多いのは、その裏に「果たして実現できるだろうか」との不安が隠れているからではないでしょうか。
ピンピンコロリを実現したいなら、ぜひ糖質制限を。生活習慣病、寝たきり、認知症など、いずれも糖質制限で予防・改善ができます。
メリット①内臓脂肪を減らして生活習慣病を防ぐ
食事などから摂取した糖はエネルギーとして消費され、余った分は「中性脂肪」として体のなかに蓄えられます。皮膚の下で蓄えたら「皮下脂肪」、内臓のまわりであれば「内臓脂肪」と呼ばれ、皮下脂肪と内臓脂肪を合わせて「体脂肪」といいます。
「脂ものを食べると脂肪になる」と誤解されがちなところですが、余った糖質が中性脂肪になるのです。中性脂肪を増やす大きな原因は脂質ではなく、糖質の摂りすぎということになります。
ちなみに皮下脂肪は二の腕、腰回り、ももの裏などにつきやすい「手でつまめる脂肪」。とくに悪さはしません(見た目はさておき)。健康面に影響を与えるのは内臓脂肪。内臓脂肪が増えすぎた「内臓脂肪型肥満」が厄介なのです。
内臓脂肪が増加すると血液中で中性脂肪が増え、超悪玉コレステロールも増加、反対にHDL(善玉)コレステロールは減少してしまいます。
これらのバランスが崩れた状態を「脂質異常症」といい、動脈硬化や高血圧を引き起こし、心臓病、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)につながる危険があります。
■60歳からは男女ともに「内臓脂肪をつけない」にシフトする
また、内臓脂肪が多いと血糖値を下げるインスリンの効きも低下するため、大量のインスリンが必要となり、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)が疲弊しきってしまいます。ついに膵臓が力尽きると糖尿病を発症してしまうのです。
女性は皮下脂肪、男性は内臓脂肪がつきやすい傾向がありますが、これは肥満の抑制や脂質異常を防ぐ働きがある女性ホルモンのエストロゲンのおかげ。エストロゲンというストッパーが外れる閉経後の女性は内臓脂肪型肥満の対策が必須です。
60歳からは男女ともに「内臓脂肪をつけない・落とす食生活=糖質制限」にシフトするタイミングといえます。糖質を制限すると、糖質の代わりに蓄積された内臓脂肪がエネルギーとして消費され、生活習慣病のリスクをグッと減らせます。
さて、肥満は体重で判断すると思っていませんか? 肥満か否かは体重よりも体脂肪で判断してください。体重を用いて肥満の程度を判定するBMI(体重÷身長の2乗)では、「筋肉」と「体脂肪」の見分けがつきません。
筋肉は脂肪よりも重いため、筋肉ムキムキのボディービルダーは体重も重く、BMIでは「肥満」と判定されてしまいます。体脂肪が一桁であっても、です。
反対に、中肉中背でBMI的には問題がない女性が、実は体脂肪率30%を超えており、先に挙げた肥満由来の病気リスクを抱えていることもあります。
■体重だけを見て「やせた」は大間違い
加齢によって筋肉が落ちると体重も減るので、体重だけを見て「自分は太っていない」「若い頃よりやせた」と安心していると、体脂肪が増えていることに気づかず「肥満」を見逃してしまうかもしれません。
体重よりも体脂肪率の変化に注意し、毎日、体重・体脂肪率・筋肉量など測定できる「体組成計(たいそせいけい)」に乗る習慣をつけましょう。
写真=iStock.com/years
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/years
脱水を起こしていることがある起床時や運動・入浴後、反対に水分過多になっている食後や飲酒後は避け、体が落ち着いた状態で、毎日同じ時間・同じ条件で測定するようにしてください。
■「糖質」は体をつくるために必要な栄養素ではない
メリット②フレイル・サルコペニアを遠ざけ、寝たきりを防ぐ
フレイルとは「虚弱」を意味し、体力の低下や気力の減退など加齢によって心身が弱った状態を指します。
サルコペニアは「サルコ(筋肉)+ペニア(喪失)」というギリシャ語による造語で、筋肉量が減って筋力や身体能力が低下した状態のことです。
フレイルとサルコペニアは、片方が悪化すれば漏れなくもう片方も悪化する「負の共存関係」にあります。手を打たずにいると行き着く先は「寝たきり」です。
フレイルとサルコペニアのどちらが先になるかは人によってそれぞれですが、両方に大きく関わっているのが「栄養不良」です。栄養が十分でないと、「心身の活動が停滞するフレイル」「筋肉をつくれないサルコペニア」に陥ってしまうのです。
写真=iStock.com/kumikomini
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さて、「糖質制限をしてしまうと“糖質という栄養”を摂取できず、フレイルやサルコペニアになるのでは?」という疑問を抱く方もいるかもしれません。
結論からいうと「糖質」は体をつくるために必要な栄養素ではないので、制限したからといってフレイルやサルコペニアを助長することはありません。
それどころか、糖質を制限したら、その分、お腹に余裕ができて筋肉の材料となるタンパク質、タンパク質の代謝に必要なビタミンやミネラルをたっぷり摂ることができ、フレイルやサルコペニア、ひいては寝たきり予防につながるのです。
■糖質制限で元気な脳をキープ
メリット③認知症のリスクを下げる
糖尿病の三大合併症といえば、神経障害(手足のしびれ、痛み、感覚鈍麻)、網膜症(視力低下、失明を起こす)、腎症(腎臓の機能低下、透析が必要になることも)ですが、糖尿病患者の発症率が高いことから「認知症」も合併症のひとつといえます。
大柳珠美『糖質を“毒”にしない食べ方』(青春出版社)
オランダのロッテルダム研究によると、糖尿病患者の認知症発症リスクは健康な人の2倍。日本の久山町(ひさやままち)研究(九州大学医学部が1961年より福岡県久山町で始めた疫学調査)ではアルツハイマー型認知症(アミロイドβベータなどのタンパク質が脳に蓄積することが原因)は2.1倍、脳血管性認知症(脳卒中などによる脳の血管障害が原因)は1.8倍という結果が報告されています。
糖尿病でないからといって安心はできません。食後に血糖値が乱高下する「食後高血糖」を頻繁(ひんぱん)に起こしていると、糖尿病と同様、認知症のリスクが上昇するおそれがあります。
糖尿病も食後高血糖も、糖質の過剰摂取を控えることで予防・改善が期待できます。糖質制限で元気な脳をキープしましょう。
■骨を丈夫にして関節の動きを滑らかにする
メリット④見た目も体も若返る
糖質制限は病気予防だけでなくアンチエイジングでも力を発揮します。体のなかの余分な糖分がタンパク質と結びつくことを「糖化(とうか)」といい、これによって老化が促進されてしまいます。
例えば、シミ、シワ、たるみは典型的な「肌の老い」ですが、これらが肌にあらわれるのは肌をつくるタンパク質のコラーゲンが糖化してしまったことが原因です。
コラーゲンは肌の若さを保つだけでなく、骨を丈夫にして関節の動きを滑らかにする働きもあるので、糖質を減らせば若々しい肌、キビキビとした動きをキープできるでしょう。
【まとめ】60歳からの糖質制限で病気・老化予防
□生活習慣病、寝たきり、認知症には糖質が関わっている。
□肌や骨の老化も糖質が影響。
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糖質制限で健康的に年齢を重ねられる
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大柳 珠美(おおやなぎ・たまみ)
管理栄養士
2006年より糖質制限理論を学び、都内のクリニックで糖尿病、肥満などの生活習慣病を対象に、糖質の過剰摂取を見直し栄養不足を解消する食事指導を行う。講演、雑誌、インスタグラムなどで、真の栄養学による糖質制限食の情報を発信している。著書に『腸からきれいにヤセる! グルテンフリーレシピ』(青春出版社)などがある。
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(管理栄養士 大柳 珠美)