後継者「不在率」、過去最低53.9% 事業承継「内部昇格」が初のトップ、脱ファミリー加速

2023年11月21日(火)19時16分 PR TIMES

全国「後継者不在率」動向調査(2023年)

地域の経済や雇用を支える中小企業。しかし、近年は後継者が見つからないことで、事業が黒字でも廃業を選択する企業は多い。日本政策金融公庫の調査では、60歳以上の経営者のうち60%超が将来的な廃業を予定。このうち「後継者難」を理由とする廃業が約3割に迫る。

足元では後継者問題は急速な改善も見られる。ただ、事業承継中に発生した想定外の事態などで事業承継が円滑に進まない事例も多く、後継者「決定後」のサポートも欠かせない。

帝国データバンクでは、信用調査報告書ファイル「CCR」(190万社収録)など自社データベースを基に、2021年10月-23年10月の期間を対象に、事業承継の実態について分析可能な約27万社(全国・全業種)における後継者の決定状況と事業承継について分析を行った。同様の調査は2022年11月以来10回目。

<調査結果(要旨)>
後継者「不在率」、過去最低53.9% 前年比3.3pt低下 後継者問題は改善傾向続く

事業承継「適齢期」の60代は不在率40%割れ 都道府県では改善傾向に差異も鮮明

事業承継、「内部昇格」が35.5%、就任経緯で初のトップ 「脱ファミリー」化加速

後継者候補、「内部昇格」「外部招聘」の割合が拡大 「ファミリー」承継は低下傾向


調査対象:信用調査報告書ファイル「CCR」(190万社収録)など自社データベースを基に、2021年10月-23年10月の期間を対象に、事業承継の実態について分析可能な約27万社(全国・全業種)
調査機関:株式会社帝国デーバンク




1.2023年の「後継者不在」状況
後継者「不在」過去最低53.9% 前年比3.3pt低下、後継者問題は改善傾向続く
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-f10beaf230941fa679f0-0.jpg ]

日本企業の「後継者問題」は改善傾向が続いている。2023年の全国・全業種約27万社における後継者動向について調査した結果、後継者が「いない」、または「未定」とした企業は14.6万社に上った。この結果、全国の後継者不在率は53.9%となり、22年から3.3pt低下した。6年連続で前年の水準を下回ったほか、コロナ前の19年からも11.3pt低下するなど、大幅な改善傾向が続いた。また、調査を開始した2011年以降、不在率は過去最低を更新した。

このうち、5年前の2018年時点と23年の後継者策定状況を比較可能な全国14万社を分析したところ、31.0%にあたる約4.3万社が新たに後継者を決定していた。このうち、18年以降に事業承継を行った後も、後任経営者が後継者を既に策定した「(代表交代後)新規に策定」が13.0%、事業承継は行っていないものの「新規に策定」した企業が18.0%に上った。この間、各自治体や地域金融機関をはじめ事業承継の相談窓口が全国に普及したほか、第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継などプル・プッシュ型の支援体制が整備・告知された。こうしたアナウンス効果により、現経営者のみならず、後継者候補においても事業承継の重要性が認知・浸透されてきたことも、全国的に不在率が低下した要因の一つとみられる。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-bce42da9bf3528d74205-0.jpg ]

一方、2018年時点では後継者候補がいたにも関わらず、23年に後継者不在となった「計画中止・とりやめ」が全体の1.5%・約2000社で判明した。経営環境の急激な変化により事業承継を中断したケースや、現経営者による後継者選びの見直し、あるいは後継者候補だった人物の辞退や退社といったケースなど、事業承継が中断・頓挫した要因は多岐にわたった。


年代別:事業承継「適齢期」の60代、初の40%割れ 70代以上は30%を下回る
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-2db0bf3b0ca9f7a3b965-0.jpg ]

2023年の後継者策定動向は、引き続き50〜60歳の「現役世代」を中心に大幅な低下傾向が目立った。「50代」の後継者不在率は60.0%と、全国平均に比べて高いものの、前年からの低下幅は全年代で最大となる5.7pt減だった。事業承継の適齢期にあたる「60代」も50代に次いで低下幅が大きく(4.9pt減)、初めて40%を下回った。「70代」(29.8%)も初めて30%を下回った。また、全年代で後継者不在率は過去最低を更新した。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-1f9983b6803be8ca467c-0.jpg ]




都道府県別:三重県が3年連続で全国最低水準 改善度合いは都道府県ごとに濃淡も
[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-c924105fbef4255494db-0.jpg ]

都道府県で最も不在率が低いのは「三重県」で30.2%だった。三重県では5年ぶりに前年を上回ったものの、2021・22年に続き3年連続で全国最低水準となった。同県では18年にピークとなる69.3%を記録して以降、不在率の急激な低下がみられる。「地域金融機関などが密着して支援を行っていることに加え、経営や商圏が比較的安定している企業も多い」などの理由から、子息など親族が経営を引き継ぎやすい環境が整っていることも背景にある。このほか、不在率が全国平均(53.9%)を下回る都道府県は21に上った。

後継者不在率が最も高いのは「鳥取県」で、全国平均を大幅に上回る71.5%だった。不在率が70%台となったのは、鳥取県のほか「秋田県」(70.0%)の2県のみだった。2011-20年の調査まで一貫して全国で不在率がトップだった沖縄県も低下が続き、全国5番目の水準となった。
[画像6: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-7d3ad38c9f2d62088db8-0.jpg ]

後継者不在率が60%を下回る都道府県は35となり、過去最多を更新するなど、全国的に後継者問題は改善傾向へと向かっている。ただ、前年から不在率が低下した都道府県は36に上ったものの、前年(41)に比べると減少するなど、改善度合いは地域によって濃淡もみられる。



業種別:全業種で過去最低を更新 自動車ディーラーや病院・クリニックが高水準

[画像7: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-665bf0b0db3e539a4a03-0.jpg ]

業種別では、全業種で前年を下回ったほか、「建設業」を除く6業種で不在率60%を下回った。また、全業種で不在率が70%を下回るのは2022年に続き3年連続となり、全業種で過去最低を更新した。23年の不在率が高いのは建設業(60.5%)となったものの、最も高かった2018年(71.4%)からは10.9pt低下した。「製造業」(45.5%)は全業種で最低だった。
[画像8: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-6d77c021fd3c579a1ca4-0.jpg ]

業種をより細かくみると(中分類)、最も不在率が高いのは自動車ディーラーなど「自動車・自転車小売」の66.4%となり、病院・診療所(クリニック)など「医療業」65.3%が続いた。最も不在率が低いのは「化学工業・石油製品等製造」の37.6%で40%を下回る水準だった。



2.2023年の事業承継動向
就任経緯別:「内部昇格」35.5%、就任経緯で初のトップ 「脱ファミリー」化加速
[画像9: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-3dc770422b84a8078809-0.jpg ]

2019年以降の過去5年間で行われた事業承継のうち、前経営者との関係性(就任経緯別)をみると、23年(速報値)の事業承継は血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが35.5%に達した。これまで最も多かった身内の登用など「同族承継」(33.1%)を上回って、事業承継の手法として初めてトップとなった。事業承継は親族間承継の急激な低下を背景に「脱ファミリー」の動きが加速している。

このほか、買収や出向を中心にした「M&Aほか」(20.3%)、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」(7.2%)など、親族外承継の占める割合も、コロナ禍以降上昇傾向が続いた。第三者承継は自社社員かM&Aなど他社との吸収・合併によるものに二極化している。



後継者候補:「親族」「非同族」の割合が拡大 「ファミリー」承継は低下傾向
[画像10: https://prtimes.jp/i/43465/775/resize/d43465-775-d6c3abee15d0c9c2746e-9.jpg ]

後継候補が判明した全国約12万社の後継者属性をみると、最も多いのは「非同族」の37.5%で、前年を1.5pt上回った。2022年調査に続き、後継者候補は「非同族」が2年連続でトップとなった。「子ども」の割合は33.1%で、「配偶者」と合わせて引き続き3社に1社以上は身内への事業承継を予定しているものの、割合はいずれも前年から低下した。

「内部昇格」や「外部招聘」によって社長に就任した企業では、後継候補を「非同族」とした割合が8割超と高く、特に外部招聘では非同族の割合が9割を占めるなど、社外の第三者を経営に招き入れる傾向が強まっている。

「非同族」以外の後継候補の割合が大きいのは「創業者」と「同族承継」企業のみだった。ただ、「同族承継」でも後継候補を身内以外の第三者となる「非同族」に定めた割合が大きく、ファミリー企業でも親族外事業承継=脱ファミリー化へ舵を切る動きが強まっている。


3.今後の見通し
後継者の「育成」で躓くケースも発生 今後は「承継後の経営サポート」が焦点に

日本の企業経営者の平均年齢は61歳にせまり、多くが事業承継の適齢期を迎えている。

この間、コロナ前から官民一体となって推し進めてきた事業承継の重要性が中小企業にも浸透・波及してきたことに加え、M&Aの普及や事業承継税制の改良・拡大、金融機関主導の事業承継ファンドなど、多種多様なニーズに対応可能なメニューが揃ってきたことが、後継者問題の解消に多大な役割を果たした。今後も、国や自治体による事業承継への働きかけにより企業の後継者問題に対する意識が一層高まるとみられ、後継者不在率の低下が引き続き期待される。

一方で、帝国データバンクが集計している『後継者難倒産』は2023年1-10月で463件発生した。10カ月累計としては2年連続で400件を超え、年間でも集計開始以後で過去最多を更新するとみられる。なかでも、代表者が病気や死亡により事業継続がままならないケース以外に、後継者問題は経営課題として認識はあったものの「後継者育成」に頓挫し、承継完了が間に合わずに自社単独での事業継続を断念するケースが目立っている。

近時は劇場版アニメ制作などを手掛けるスタジオジブリ(東京・小金井)をはじめ、大手企業や規模の大きい企業でもこうした課題・難局に直面するケースが散見される。現経営者が能力面や素質面などから後継候補に対し事業承継に消極的なケース、または後継候補となった対象者が事業承継を断る、あるいはその双方が発生するなど、事業承継に携わる当事者の間で「認識の差=ミスマッチング」の問題が顕在化しつつある。

「後継者問題への啓蒙」による、経営者の後継者問題に対する意識改革は確実に成果を上げている。今後は事業承継中のアクシデントやトラブルの発生による「あきらめ」防止に向けた取り組みも重要になるとみられ、後継者決定後のフォロー・サポート体制の充実も求められる。

PR TIMES

「後継者」をもっと詳しく

「後継者」のニュース

「後継者」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ