夫ががんで旅立ち、気持ちを晴らすために始めたバイトで、8歳下の既婚子持ち上司に68歳で恋をした。意を決して告白したら……

2024年3月27日(水)12時0分 婦人公論.jp


夫と上司の2人分のチョコを買った日のことは生涯忘れないだろう——(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

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2つの別れとバレンタイン


68歳になって、8歳年下の男性に恋をした。いや正確には、自分の肉体がその男性の肉体を求めているのである。

夫は10年以上がんに苦しんだうえ、まだまだ働き盛りの56歳の時、脳卒中で体の半身が不自由に。それから車椅子生活を経て、2年前のバレンタインデーに旅立った。

夫との性交は、子育て、姑の介護、夫の病気で徐々に減り、車椅子になってからはまったくなくなった。正直、日々の性交がない生活にはホッとした。子どもが2人生まれたとはいえ、夫との交わりはいつも機械的で、悦びはなかった。早く終わってほしいと願ってさえいた。夫以外の男性と体を重ねた経験がない私にとって、それは疲れるものだという気持ちのほうが大きかったのだ。

結婚生活のなかで、男性とかかわる機会がなかったわけではない。パート先やPTA、地域での活動において常に周囲には男性がいた。

しかし、家に帰れば夫や子どもがいて、姑の介護もあったので、ほかの男性はまったく目に入らず、自分のなかの《女》が薄まっていたと思う。だから夫が亡くなるまで、私は実は男性が好きではないのかもしれないとさえ思っていた。

しかし、私にとってそういう気持ちになれる男性があらわれた今、改めて晩年の夫はどういう気持ちだったのかと考えてしまう。性欲はなかったのだろうか。

ずっと家にいると夫との闘病生活を思い出し、話す相手がいないため鬱々としてしまう。そう思ったので、夫の初盆の後、アルバイトを探し始めた。

まだ一周忌も迎えていないのにと反対する親類もいた。けれど、仕事に行くことが悲しみから逃れる一歩になる、と前向きに決心した。

その決断自体は間違っていなかったと思う。しかし、まさか新しい職場で8歳も年下の上司に恋をしてしまうことになるとは。結婚して子どももいる男性である。

コロナ下に出会ったのでマスク姿しか見たことがなく、顔の全容は知らない。彼の素敵なところは、デスクに座る姿の美しさ。体形は中肉中背で、少し白髪がある。夫にはないスタイルの良さが、実家の父と重なって見えたのかもしれない。

慣れない私の仕事をさりげなくカバーしてくれるやさしさに、だんだん彼を意識し始めた私がいた。こんな経験は、初めてだった。

それから1年以上も片思い。中学生も同然である。この秘密は仕事を辞めるまで、いや墓場まで持っていくつもりだった。

ところが彼が退職することがわかり、自分の気持ちが抑えられなくなったのである。分別ある行動とは言えないと今は思う。

生まれて初めて、自分の気持ちを伝えると決心し、悩んだ末、チョコを手渡すことにした。バレンタインデーの日、勇気を出して「義理チョコではありません」と上司に告白した。

私の片思いの日々と告白に後悔はない。私にも《女》が眠っていたと実感できたから。ホワイトデーのお返しはなかったが、夫と上司の2人分のチョコを買った日のことは生涯忘れないだろう。

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