こっちのけんと、明確になった自分の使命「音楽で人を元気に」 セーブ期間を設けた2つの理由も語る
2025年4月2日(水)10時0分 マイナビニュース
●「生きづらいと思っている人たちに音楽を届けていきたい」
昨年5月に配信リリースした「はいよろこんで」が大ヒットし、『NHK紅白歌合戦』初出場も果たしたマルチクリエイター・こっちのけんと。今年の元日から活動をセーブしていたが、3月8日にセーブ期間終了を宣言し、それに先立ち新曲「Time lapse (feat. Yella.E)」も配信リリースした。3月19日にはミュージックビデオの祭典「MTV VMAJ」の授賞式に出席。2部門を受賞したこっちのけんとにインタビューし、昨年の大ブレイクを振り返るとともに、セーブ期間を設けた理由や、自分の中で明確になったという歌手活動への思いを聞いた。
「MTV VMAJ」で2024年に飛躍した新進気鋭のアーティストを称えるアワード「Future Icons Award」に加え、「はいよろこんで」で「Best Animation Video」も受賞したこっちのけんと。
2024年が自身にとってどんな年になったか尋ねると、「今後の人生の指標というか土台ができたという感覚がありました。音楽を作って人前で歌って、人を元気にさせることが自分の職業なんだなと自覚できた年というか、大袈裟に言うと、自分の使命が明らかになった年だったなと思います」と答えた。
それまでは制作側として活動していくことも選択肢として考えていたが、自分の職業は歌手だということが自分の中で明確に。
「多趣味なので映像の編集などいろいろやっていたので、裏方に回るのか表に出るのか悩んでいた時期もありましたが、それが去年で全部払拭されたというか、自分の中で整って、人前で歌って元気づけるというのが職業なんだろうなと。自分が続けるべきことがわかった年になりました」
激動の1年で「とにかく全部変わった」と述べ、曲作りにおける考え方も大きく変わったと明かす。
「以前は過去の自分や未来の自分に向けて書く手紙という気持ちで作っていましたが、去年の途中から、それにプラスして、聞いてくれる人たちの顔が浮かぶというか、その人たちのためにも作っていかないといけないなと、曲作りにおいてプラスαの要素が増えました」
また、自分の音楽を届けていきたい人たちも昨年を通して明確になってきたという。
「生きづらいと思っている人たちに届けていきたいなと。自分が正しいというか、優しいはずなのに、なんで自分が損しちゃっているんだろうみたいな優しすぎる人や、周りを気にしすぎてしまう人たち、そして、精神病やうつ病で悩んでいる人たちが少しでも生きやすくなるように、精神病を少しでも広める活動をしていけたらいいなと思っています」
かねてより双極性障害(躁うつ病)を公表し、その悩みも発信しているが、同じ病気の人たちから届く声を聞いて、その人たちに向けて音楽を届けたいという思いが強まったという。
「DMやお手紙で『同じ病気です』という人たちの思いを聞くと、自分もめちゃくちゃわかるんです。双極性障害と言っても伝わらないことが多いので、それを言ったらちゃんと伝わる世の中に、少しでも僕きっかけで変わるといいなと。同じ病気の方から『救われました』という声をたくさんいただきますが、僕もそれですごく救われているので、プラスプラスでめっちゃ相乗効果になっています」
●2000%で走り抜けた昨年後半 セーブ期間を設けて「100%に」
今年1月1日に自身の公式Xで、当面の間、活動をセーブすることを発表し、3月8日にセーブ期間終了を宣言したこっちのけんと。セーブ期間を設けたのは2つの理由があったと語る。
「双極性障害でいうテンションが高い時期が去年の後半に当たっていたので、数値で言うと2000%ぐらいで走り抜けられました。限界を超えてできていたことだったので、このまま続けると体が壊れてしまうと思ったので、でも休むのも怖かったので、ゆっくり速度を落として、2000%から100%に戻そうという気持ちでセーブ期間を設けました。プラス、去年は自分を客観視する時間があまりなかったので、こっちのけんとってどう見えているんだろうというのを考える機会にしたかったという、2つの理由でセーブ期間を設けました」
そして、セーブ期間を経て、改めて自分がこれからやっていくべきことを再確認できたという。
「引きでこっちのけんとを見たときに、やはり同じ考え方の人や病気の人たちが少しでも生きやすくなるきっかけになるような音楽を届けたり、活動をしていきたいなと。音楽で人を元気づけることが使命だなと改めて感じました」
3月に入り、新曲リリースに加え、テレビアニメ『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』オープニングテーマやNHK Eテレの新番組『The Wakey Show』エンディングテーマ決定など、ファンにとってうれしいニュースが続々と発表されている。
早くもまた100%を超えてしまっているのではないかと心配すると、「今は100%でやっているつもりですが、歌を歌う活動によって、結局年末に向けてまた2000%になる分にはいいと思っていて。また2000%になったら、どこかでまたセーブ期間設けて1回100%に戻すというのを、人生で何度も繰り返していくというのが、この障害の働き方として今の自分はしっくりくるなと思っています」とにっこり。1回セーブ期間を設けたことで病気との向き合い方が見えてきたという。
そして、将来的には「見ている人にとっては2000%だけど僕は100%でできているようになれたら」と理想を語る。
「将来すぎることは考えていませんが、力を抜いて本気でできるぐらいになりたいなというのはぼんやりと思っています。今は全力で走り抜けているという感覚があるので、少しでも肩の力を抜けることができたらいいなと。たぶんできないんですけど、目標としてそうなれたらいいなと考えています」
●「優しさを自分に向けられない」優しすぎるが故の悩みも
音楽を届けたい相手として、「優しすぎる人」も挙げていたが、こっちのけんとが発するメッセージは優しさがにじみ出ていて、自身もまさに“優しすぎる人”だと感じる。実際、優しすぎて悩むことがあるからこそ、自分の活動を通じてそういった人たちが少しでも生きやすくなってほしいという思いがあるという。
「なんで僕は怒れないんだろうと思うことはあります。怒っても意味ないというか、自分が一歩引いて許してあげた方が前に進むと思うようになって、中学生頃からあまり怒ったことはないです。でも結局、自分が犠牲になってしまうというか、そういった悩みを抱えている人たちが少しでも生きやすくなるヒントになればなと思います」
そして、自分自身についても「生きやすくなったらいいですよね」とほほ笑み、「優しさがある方が絶対にいいとは思っているので、その優しさは持ちつつ、優しすぎる人はその優しさを自分に向けられないので、そこを少し自分にも向けられるように、バランスを取っていくみたいな作業は必要かなと思っています」と話していた。
■こっちのけんと
1996年6月13日生まれ、大阪府出身。大学在学中の2017年・2018年ににアマチュアアカペラ全国大会で2年連続優勝し、2019年よりYouTubeで活動を開始。2022年8月に自身初となるシングル「Tiny」を配信リリースし、2024年5月に配信リリースした6thシングル「はいよろこんで」が大ヒット。『第66回日本レコード大賞』で最優秀新人賞を受賞し、『第75回NHK紅白歌合戦』に初出場した。