市村正親 76歳になりました!新ミッションは月に1度の<家族会議>子どもたちが生きていくうえでのサポートをしたい。若いファントム役をずっとやることも「僕の運命」
2025年4月24日(木)12時30分 婦人公論.jp
(撮影:小林ばく)
舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の新連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第6回は「76歳の新ミッション」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)
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「怪人だからです!」
1月28日に誕生日を迎えて、76歳になりました。70歳で亡くなった親父の年齢を6つも超えたんだな……と感慨深いです。でも、87歳まで生きた母ちゃんにはまだまだ及ばない。母ちゃんも超えてやるぞと思っています。
誕生日当日は、主演を務めたミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』の舞台上でお祝いしてもらい、真紅の薔薇を76本いただいた。76本はやっぱり重かったね。ファンの方からは、ファントムをかたどったケーキもいただいて。舞台では、感謝を込めてこんなスピーチをしました。
「最近SNSで、市村さんはあの年齢でどうしてあんなにパワーがあるんだというコメントをよく見ます。その答えはひとつ。怪人だからです!」
本当は76歳で、ずっと若いファントム役をやっちゃいけないと思う。でも、『オペラ座の怪人』で日本最初のファントムを演じた、僕の運命なんだろうね。
ファントムになるためには、専用の発声訓練があるんだよ。キーが高く裏声を使うため、ほかの作品とは発声を変える必要があるの。
今回も本番の1ヵ月半前——『モーツァルト!』博多座公演千秋楽の6日後には、Billy 先生の稽古を受けていた。彼はいろいろなミュージカル作品の音楽監督をやっていて、僕は初演の『ミス・サイゴン』のときから33年の付き合い。
Billy 先生がいれば必ずできるようになる。僕にとって守り神のような、特別な音楽の先生なんです。
ファントムのケーキ!(写真提供:市村さん)
そう思うようになったのは、2012年に頸動脈狭窄症になって手術したことがきっかけでした。手術では首の血管や筋肉を切るからやっぱり心配で、手術が終わって目が覚めたときは、手が動くか、声が出るか、確認した。「あいうえおかきくけこ。よし出るな」。
ところが、歌ってみると高音が出ない。退院後には『ミス・サイゴン』の舞台が控えている。ミュージカル人生、もう終わったな……と思ったよ。
でもそのときにBilly 先生の顔が脳裏に浮かんで、レッスンをお願いしたら出るようになったの。それまではある意味、正しくない発声法でも声が出せていたのが、声が出なくなったおかげで正しい発声法を身につけることができた。
正しく筋肉が鍛えられたので、むしろ手術前よりも音域が広がったくらい。身体って、日々のトレーニングの積み重ねで変わっていくんだね。
そういえば、『オペラ座の怪人』に出ていたときは、胸郭が広がって、それまでの背広が着られなくなったことがあった。稽古から千秋楽までの半年間、ものすごく息を吸い込んで声を伸ばす歌い方を続けているうちに、体格が変わってしまったんだね。
浅利(慶太)さんにも言われたよ、「お前、胸板厚くなったな」って。今もその厚みはキープしてますよ。
僕は周りに生かされている
先日もマッサージに行って、トレーナーさんから聞いた話では、彼は事故で怪我を負って正座ができなくなっていた自分の足を、1年かけて施術して正座できるようにしたそうなんだ。
そうか、だったら俺の硬くなった膝の裏の筋肉も、時間をかければ元に戻って正座できるかもしれない。そうしたら時代劇で正座もできるんじゃないか。76歳になって、また新しく鍛えなくちゃいけないことが増えるけど(笑)。
どういうわけか、逆境を力にするようにできているんだね。そうして、お客さんが待ってくれている舞台に立つ。やっぱり僕は、周りに生かされている気がします。
今年から新しく始めたことが、実はほかにもあるんです。それは月に一度の家族会議! 今年は、ありがたいことに僕もめいっぱい忙しく、子どもたちも進学のこととかいろいろあるから、集まって話をする時間を作ろうと、年明けに提案したんだよね。
<今月のひとこと>
普段は一緒にご飯を食べていても、それぞれがスマホを見ながらだったりするから、ちゃんと話そうと。
で、1月末に第1回をやるぞと言ったら、子どもたちも文句言わずにスッと集まってきてね。次男からはいきなり「パソコンが欲しい」という議題が出たり(笑)。
子どもたちが家族会議という名称じゃなくファミリーミッションがいいって言うので、略して「ファミッション」。それぞれにコードネームも付きました。
僕は「正親28日生まれ」で「M8」。初回は出席できなかったけど、ママも「R3」として2回目から来る予定。
こういうことから、子どもたちが生きていくうえでのサポートができたらいいなと思っています。来月のファミッションも楽しみ!
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