市村正親「息子2人とママと箱根へ。強羅ではいつも同じ場所で家族写真を撮影。長男も次男も親の身長を追い越していて成長を実感」

2025年3月27日(木)12時30分 婦人公論.jp


(撮影:小林ばく)

舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第5回は「争うことなくいられたら」です。(構成=大内弓子 撮影=小林ばく)

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時は流れているんだな


舞台『ラブ・ネバー・ダイ』は、1月17日に初日を迎えました。年明けすぐの公演だから、年末年始は稽古が12月30日まであって、1月3日に再開というスケジュール。

束の間の休みだったけれど、「久々に強羅に行きたい」という次男の提案で、息子2人とママと箱根で年越ししました。大晦日の夜は宿でゆっくりして、元日は大涌谷へ。

息子たちが大好きな、食べると寿命が延びるという黒たまごを食べて、最近名物になっている黒カレーパンは、みんなが食べているのを「一口だけちょうだい」と言って味見して。

これは、節制したいものの味は知りたい僕の口癖。子どもには、《一口おじさん》と呼ばれています(笑)。そして、そこから芦ノ湖まで下りて海賊船に乗り、宿に戻って。翌日の2日には帰京したけど、いいお正月だった。

強羅にはこれまでも家族で何度も足を運んでいて、行くといつも同じ場所で家族写真を撮るんです。最初は長男がまだ赤ちゃんで、僕に抱っこされている写真。

やがて次男が生まれて家族が4人に。そして今回の写真を見たら、長男も次男も僕ら親の身長を追い抜いていた。時は流れているんだな、と感慨深かったね。子どもたちはたしかに成長してる。

この間、夜に16歳の長男と語り合ったことがあって。キッチンに椅子を2つ並べて、僕は酒を飲みながら。西村晃さんの付き人をしていた頃のエピソードとか劇団四季に入った時のこととか、若い頃の話をいろいろと。

長男は、「へえ、そんな話初めて聞いた」と喜んでくれてね。あぁ、もう親の人生を知りたがる年齢になったんだなと、嬉しかった。

子が親のダメな部分や男の一面、青春時代なんかを知った時、なんだか気恥ずかしいなーという感情と、親も青春を送ってたんだなという喜びがあるよね。

僕の場合は喜びが大きかったかな。「いい親に育てられたな」と思ったから。13歳の次男は反抗期まっさかりだけど、いつかそんなふうに思ってくれたらいいなと思うね。


<今月のひとこと>

人が集団になった時


息子たちと先日テレビを見ていたら、『NHKスペシャル 「新ジャポニズム」第1集 MANGA わたしを解き放つ物語』という番組が放送されていたの。

それまで高尚な存在だった絵画が、江戸時代に「誰が描いてもいいし、自由な発想でいい」ものに変化し、写楽や北斎、歌麿などいろんな絵描きが《俺の流儀》で浮世絵を手がけるようになったと。

それが今の漫画ブームにも似てるんじゃないか、というところから、息子たちと「やっぱり日本の漫画ってすごいな」という話をしたんだ。

僕はそんなことを語り合いながら、人間ってのは面白いなと思った。今、窓の外をふっと見てみると、交差点で信号待ちをしている人たちがいる。サラリーマンはみんな同じような格好をしているけれども、中身はそれぞれ違って、好きなことを考えてる。

だけど集団になった時にどうなるか。たとえば今の韓国では大統領を推す人と弾劾する人、アメリカは大統領選挙で共和党支持と民主党支持で完全に分断された。

そもそも聖書の時代だって、さっきまでキリストを称えていた民衆が急に十字架にかけろと言ったり……。集団は良いほうに向かえばいいけど、悪いほうに進んだ時はとんでもないことになっていくんだよ。

パレスチナとイスラエル、ロシアとウクライナの間の戦争だって、そうだよね。先の『MANGA』の番組では、日本の漫画が好きだというウクライナの10代の少女が、「攻められたから取り返すっていうことが、戦争を終わらせるわけじゃないんだ」と考え始めている様子を映していた。

3月から始まるミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』は、革命が迫る帝政ロシアに生きる家族の物語なんです。

前回『屋根の上〜』が上演されたのは2021年で、ロシアのウクライナ侵攻は始まっていなかった。世界情勢が激変しているなか、場所も時代も違うけど、決して遠い話じゃないんだよ。だから今回は今まで以上に、リアルさを大事に作っていきたいと思っているんです。

僕が演じる主人公のテヴィエは、鳳蘭さん演じる強力な女房と5人の娘の家長として、初っ端に出てきて最後に引っ込むまで、ドーンと生きなくちゃいけない。大変なドラマだけど、この舞台の家族の姿からも何かを受け取ってもらえたらいいなと思います。

そういえば、正月の大涌谷は外国からの観光客でいっぱいで、みんな争うことなく並んで黒たまごを買ってたよ。世界がこうなればいいよね。

婦人公論.jp

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