見た目は普通のおばさんだが実は――? 超有能な交番相談員が、警察内部の闇を見抜く。異色の警察小説新シリーズ!

2025年4月29日(火)7時0分 文春オンライン

 発売直後から「日経新聞」や「産経新聞」などで書評が続々掲載、発売即重版も決定した、長岡弘樹さんの『 交番相談員 百目鬼巴 』。ミステリ好きなら見逃せない、異色の警察小説について著者自らが語った。


◆◆◆


『教場』シリーズで知られる長岡弘樹さんの新たな警察小説が誕生である。


 今回の主人公は、交番相談員。


 交番相談員とは、警察官がパトロールで不在の時などに、地理案内や落し物受付など業務の一部を代わって行うもので、定年退職した警察官がその豊富な経験を活かし、非常勤として駐在している。


「普通の警察官を主人公にするのはもうありきたりすぎると感じていました。今回は別の立ち位置で、と考えて思いついたのが交番相談員です。『警察にいるお母さん』とでも呼べるキャラクターをイメージして書きました」



『交番相談員 百目鬼巴』長岡 弘樹(文藝春秋)


 主人公の百目鬼巴(どうめきともえ)は、見た目は普通のおばさんで、性格も穏やかだが、彼女には妙な噂があった。


「百目鬼はかつて非常に優秀な刑事で、県警本部の刑事部長も頭があがらず、なぜか科学捜査の知識まで豊富に有していると評判の、謎めいた存在です。実際、交番勤務中も卓越した洞察力で、目の前で起こっていることの真相・裏側を立ちどころに見抜くのです」


警察官=聖人君子の考えに縛られずに


 そんな百目鬼のキャラクターが遺憾なく発揮されるのが、本書の読みどころである「警察官が犯罪に手を染める」設定だ。


「これまで多くの警察官の方々に取材を行いました。市民の生活を守る特別な存在であることは間違いないですが、交流を重ねるうちに我々と何ら変わらない普通の人間でもあると気付いたのです。それ故に、つい悪事に手を染めたり、保身に走ってしまう人もいる。警察官=聖人君子といった考えに縛られないのは、そうした取材経験のためだと思います」


 また、「カミツキガメ」や「逆さ眼鏡」「海鮮丼」など、やや変わった独特の題材が各短編で描かれるのも本書の特徴だ。


「カミツキガメもそうですが、特に生き物はミステリの小道具として、とても魅力的ですね。例えば、タコは人間の顔を区別することができるという話を聞くと、そのネタでどうにか一編書けないか、とついつい考えてしまいます。逆にハイテクすぎるガジェットは、種を明かされて興醒めすることが多いため、取り扱いが非常に難しいですね」


 独特の視点と巧みな構成で描かれる警察官たちの姿は、新鮮な驚きをもたらしてくれる。早くもシリーズ化が決定、続編を構想中だ。


「百目鬼巴を通して、警察官という仕事の実感が読者に伝わるように、たくさんのエピソードと、新たなトリックを盛り込んでいきたいです」



長岡弘樹(ながおか・ひろき)
1969年山形県生まれ。2003年「真夏の車輪」で小説推理新人賞を受賞、08年「傍聞き」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞する。



(長岡 弘樹/オール讀物 2025年5・6月号)

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