「そこを読まないと勝てないのか…」 藤井名人が苦戦終盤乗り切り永瀬九段降して2連勝 第83期名人戦七番勝負第2局
2025年5月1日(木)11時30分 マイナビニュース
藤井聡太名人に永瀬拓矢九段が挑戦する第83期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、第2局が4月29日(火)・30日(水)に東京都大田区の「羽田空港第1ターミナル」で行われました。対局の結果、挑戦者用意の力戦調角換わりの戦いを乗り切った藤井名人が141手で勝利。なんとか先手番をキープして開幕2連勝としました。
○空港での対局
藤井名人らしい30手超えの即詰み決着が話題となった開幕局から早3週間、後手番で迎えた永瀬九段が用意していたのは△3三金型角換わりの力戦策でした。先手有利に傾きがちな既存の定跡を避ける狙いで、争点を作らないこの日の駒組みからは千日手歓迎の姿勢が見て取れます。1日目午後は仕掛けをめぐる細かな駆け引きに費やされました。
永瀬九段の記した封じ手が開かれ対局再開。示された一手はそれまでの態度を一変して仕掛けに踏み切るものでした。黙っていては先手からの本格的な攻めを受け止められないと見た決断で、この手を境に局面は攻め合いに突入。2日目午後、対局室の大きな窓からは飛行機の離発着する様子が見えるものの盤上没我の二人に景色を楽しむ様子はありません。
○一瞬だったチャンス
局面の速度が落ち始めた終盤の入り口に分岐点が潜んでいました。積極的な歩の取り込みで一気にギアを上げた永瀬九段と対照的に、藤井名人は曲線的な垂れ歩で対応。双方の方針に食い違いが生じた格好ですがここは永瀬九段にチャンスが。局後、盤側からソフト推奨の踏み込みを示された永瀬九段は「そこを読まないといけないですか」と笑みを見せました。
取られるはずだった銀の救出に成功した藤井名人はその指し手の勢いを増します。歩のタタキで狙われた金を気前よく差し出したのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの好手。貴重な手番で鋭く反撃に乗り出せば、薄い永瀬玉に受けはありません。終局時刻は21時27分、最後はがっくりとうなだれた永瀬九段が自玉の受けなしを認め投了。
全体を振り返ると序盤は永瀬九段が独自の作戦でペースをつかむも、中盤の競り合いで相手に力を出させなかった藤井名人の怪力が光る一局に。敗れた永瀬九段は64手目までは予定だったことを明かしつつ、終盤以降の攻め方に後悔をにじませました。注目の第3局は5月9日(金)・10日(土)に大阪府泉佐野市の「ホテル日航関西空港」で行われます。
水留啓(将棋情報局)