【専門家に聞く】中居氏側の不満 焦点は「性暴力」の定義方法 認定プロセスも問題視 裁判発展の可能性も
2025年5月13日(火)4時10分 スポーツニッポン
中居正広氏がフジテレビの第三者委員会の調査報告書で認定された「性暴力」がなかったなどとして反論した。その背景や見解、今後の展開などについて複数の専門家に聞いた。
大きな焦点となるのが「性暴力」の定義方法だ。レイ法律事務所の河西邦剛弁護士は「日本で性暴力というと、レイプなどの犯罪的行為と捉える人もいる」と説明。一方、第三者委が用いた世界保健機関(WHO)の定義では、望まない性的な言動も含んだ広義的なものになる。この点について嵩原安三郎弁護士は「仮に“性暴力があった”という前提ありきで調査を進めていた場合、その中立性や公正性に疑問を持たざるを得ない」と指摘した。
中居氏側は調査のプロセスも問題視している。代理人の文書では、中居氏は約6時間にわたるヒアリングに応じたが、発言要旨がほとんど反映されていなかったことを伝えている。嵩原氏は「報告書では中居氏側の主張も公表するのが普通」としつつ、それでも内容に反映されなかった理由について「全く調査と関係のないことを話したか、あまりに秘匿性の高い内容だったか」と考察した。
また、中居氏の守秘義務について、今回の文書では解除する姿勢を見せていたというが、報告書では解除しなかったことだけが伝えられていた。この点について河西氏は「中居氏側は一方的な事実の記載に大きな不満を持っていると思います」と見解を示した。
中居氏側は第三者委に26日までに証拠を開示するよう請求している。河西氏は、同日までに回答が来なかった場合について「新たな文書を公表し、さらに踏み込んだコメントで反論していく。もしくは、名誉毀損(きそん)の裁判手続きに入る」と見通しを説明。回答が来た場合も「中居氏側が第三者委側のそのような部分の釈明に納得できない場合は調査結果の訂正・謝罪を求めていくでしょう。第三者委がそれに応じない場合、中居氏側が名誉毀損で訴える裁判に発展する可能性も考えられます」と、回答のいかんにかかわらず名誉毀損で提訴する可能性を挙げた。
ただ第三者委は女性のフジテレビへの被害申告や、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された女性に生じた心身の症状、中居氏とのショートメールでのやりとりを根拠に「性暴力が行われた」と認定した。双方の主張がぶつかり合う中、第三者委の説明が求められる。
▽WHOの「性暴力」定義 強制力を用いたあらゆる性的な行為、性的行為の要求、望まない性的な発言や誘い、売春、その他、個人の性に向けられた行為。被害者との関係性を問わず、家庭や職場などあらゆる環境で起こり得るもの。また、この強制力は心理的な威圧、ゆすり、その他、脅しが含まれ、その強制力の程度は問わないとしている。
【中居氏側の反論要旨】
(1)基本原則である中立・公正は守られたのか?
第三者委員会のガイドラインは不祥事を起こした企業が社会的責任の観点から、株主などに説明責任で設置する委員会である。全てのターゲットは対象会社に向けられており、調査に協力した個人ではない。第三者委は認定が中居氏や相手方女性にいかなる影響をもたらすかについて配慮する義務があった。しかし、伝聞証拠を基にしていて、証明力に疑問があるのに事実認定をしている。これは中立性、公正性に反しないのか?
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(2)中居氏の人権に対する配慮は?
ヒアリングに全面協力した中居氏が不当な社会的非難にさらされ続ける状態はとても看過できない。また、この事態を第三者委が放置することは第三者委制度の社会的信用を失墜することになりかねないのではないか?
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(3)「性暴力」という表現の大き過ぎる影響力
凶暴性を感じさせるイメージに留意せず、漫然と使用した。具体的な行為が明らかになっていないまま「性暴力」という言葉が一人歩きして、中居氏の名誉・社会的地位を著しく損なうことになってしまった。結果、委員会の設置の目的から大きく逸脱した。