「本屋大賞」阿部暁子さん単独インタビュー…「絵心なくて小説家に」「炎立つを徹夜で読んで赤点」

2025年5月15日(木)15時45分 読売新聞

阿部暁子さん

 全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ「2025年本屋大賞」に長編小説「カフネ」が選ばれた岩手県在住の作家、阿部暁子さんが単独インタビューに応じ、岩手や書店などへの思いを語った。聞き手は、大賞で1票を投じ、読売新聞岩手版の「書店員のおすすめ」を執筆するさわや書店(本店・盛岡市)の外商部部長の栗澤順一さんが務めた。2人は笑い合いながら、トークを繰り広げた。

執筆、苦しかった時も

栗澤 本屋大賞の受賞、おめでとうございます。

阿部 ありがとうございます。様々な人に祝福してもらい、少しずつ実感がわいてきました。自分一人の力だけではなく、担当の編集者や営業の方、書店の皆さんに力をもらった結果です。

栗澤 「カフネ」はスラスラと執筆できたのでしょうか。

阿部 今まで経験してきたことや、わだかまっていた気持ちを取り込んでいる話なので苦しい時はありました。登場人物が「どういう気持ちなんだろう」と深く考えて苦しかった時もあります。書き切れてほっとしました。

自分ができないこと、主人公にしてもらう部分も

栗澤 主人公の薫子と似ている部分は。

阿部 しつこくて暑苦しいところは、私と似ているかも。ただ私は臆病だけれど、薫子はおせっかい。自分ができていないことを薫子にしてもらっている部分はあります。

栗澤 今後、岩手が出る作品は。

阿部 岩手はおもしろい歴史がある土地。ただ自分と近すぎるものを客観視するのは難しい。手を出すのはひるんでいるけれど、いつか書いてみたい。

栗澤 岩手という土地柄に影響を受けたことは。

阿部 岩手の風景を見て育ったことや、すごい作家さんの作品を読んで育った部分も影響しているのかもしれない。

栗澤 岩手にゆかりの作家さんの活躍はめざましい。

阿部 私は高橋克彦さんが好きで、高校時代は中間テストの前の晩に、(奥州藤原氏が滅ぼされるまでを描く)「炎立つ」を徹夜で読んで、赤点をとったこともあります。炎立つは格好いい敗者の物語なんですよ。敗れることは格好悪くはない。

「美味しんぼ」で漢字覚えた

栗澤 ゆかりの方の活躍は書店員としてもありがたい。書店には行きますか。

阿部 週に2、3回は。生活が変わって、しょっちゅうは行けなくなりましたが、よく足を運んで棚を巡ります。小説が好きなので入り口近くの平台の新刊コーナーをよく見ます。小さい頃は図鑑がおもしろかった。あと、両親が漫画好きで、(料理漫画の)「美味しんぼ」で醤油しょうゆ薔薇ばらといった漢字を覚えました。

栗澤 漫画家になろうと思ったことは。

阿部 絵心がなかった。人物や顔を同じように繰り返し描けなくて。しょうがないから文字でストーリーを書いていました。小学6年生で漫画家になれないと悟りました。

栗澤 漫画やエッセーも読んでみたいです。快挙を達成したばかりですが、次回作も期待しています。

阿部 応援していただけるに値するいいものをまた書きたいです。

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