越乃リュウ「あーさこと朝美絢さんの時代に。元月組トップスター・龍真咲さんと元月組トップ娘役・愛希れいかさんから、思い出を聞いてみました」
2025年5月28日(水)12時30分 婦人公論.jp
写真提供:越乃さん 以下すべて
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第99回は「拝啓朝美絢様」のお話です。
(写真提供:越乃さん 以下すべて)
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私が知っているあーさ
六本木ミッドタウン。
通り過ぎてもう一度戻って二度見したメガネ屋さんの前にあったモノクロのポスター。
どこか見覚えがあるような…。
あ、あーさだ!
そこには自然体でかっこいい、私の知らない大人なあーさがいました。
私が組長時代、月組の下級生だったあーさ。
私の中のあーさは、少年のような無邪気さで、明るくよく笑い、若手のナンバーを一生懸命に取り組んでいる人でした。
そしてその明るい笑顔の裏で、とても努力をし続けている人でした。
自分の男役像を作ろうと、常に自分を磨き、研究を重ねていた真面目で真っ直ぐな人。
それが私が知っているあーさです。
雪組のトップスターになると聞いたときは、コツコツとやり遂げたな、と嬉しく思ったものです。
真っ直ぐにトップの路線を歩いてきたわけではないあーさが、周りと切磋琢磨しながらも自分で作り上げた朝美絢という男役を開花させ、トップスターへの階段を昇っていきました。
今東京宝塚劇場では、雪組の新トップコンビあーさこと朝美絢さんと夢白あやさんのお披露目公演が行われています。
伝説のヒーロー、ロビン・フッドを題材にしたミュージカル『ROBIN THE HERO』と、ファンタスティック・ショー『オーヴァチュア!』。
これはそんな新トップスター朝美絢さんへのファンレターです。
友人が送ってくれた雪組公演の客席からの写真。私は残念ながらまだ観れていません。
元月組トップ娘役の愛希れいかさん
あーさをよく知るこの2人にも、あーさとの思い出と印象的だった役を聞いてみました。
まずはこの方。
あーさの同期でスター揃いの95期の一人、元月組トップ娘役の愛希れいかさん。
ちゃぴ(愛希れいかさんの愛称)です。
少し前に、ネットでインタビューの記事を見ました。
ドラマや舞台で大活躍しているちゃぴの、舞台への思いや同期への思いなどを語ったインタビューでした。
月組で新人時代を共に過ごしたあーさが雪組でトップになったという話題になると、
「実際にその姿を見ると、涙が出てきちゃうくらいうれしくて…。
共に頑張ってきた仲間がセンターで輝いているのを見ると、本当に涙が出てきちゃって」
そう言って涙しながらあーさへの思いを語っていたのを、微笑ましく思いながら読みました。
とても仲のいい同期で、みんなで練習をしたり、ダメ出ししあったり、いつも笑いあっていた姿を思いだしました。
ちゃぴとあーさも、お互い見合ってよく練習していました。
そんなちゃぴからあーさへ。
「あさみちゃんとの思い出は沢山ありますが…、受験の時に私が初めてお話ししたのがあさみちゃんで、誰も知り合いが居なくて心細くて泣きそうだった私にあさみちゃんは優しく話しかけてくれました。
あの時から、本当に綺麗で優しくて、真っ直ぐで芯が強くて、輝いていたあさみちゃん。
信じられないぐらいの努力をして、どんどん輝きが増して、今はもう眩しすぎて見えないぐらいです(笑)。
心から尊敬する同期です。
印象的なお役は、『グランドホテル』のラファエラ・オッタニオ。
とても難しいお役だと思うのですが、あさみちゃん自身の優しさと繊細さ、心の大きさがお役とピッタリで素晴らしかったことを今でも覚えています。
雪組のトップさんとして、大変な事もあるかと思いますが、どうか、心と身体を大切に…宝塚人生を楽しんでほしいなと思っています。
またすぐ会おうね!
ちゃぴより」
「あさみちゃん」呼びが2人の絆の深さを物語っています。
これから先、真ん中に立つ者だけが味わう苦労や、孤独を感じることもきっとあると思います。
でも、それをわかりあえる仲間があーさにはたくさんいます。
自分のことで泣いてくれる人や、過去の失敗やくだらない話で笑いあえる仲間がいます。
同期というのは、年齢も育った環境も違うのに、姉妹みたいな兄弟みたいな家族のような特別な存在です。
そんなかけがえのない存在が、これからの自分を支える大きな力になります。
お互いの活躍に刺激を受けあいながら、この華麗なる期の快進撃はまだまだ続きそうです。
愛希れいかさん出演 ミュージカル『マタ・ハリ』は、10月1日から14日まで東京・東京建物 Brillia HALL、20日から26日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、11月1日から3日まで福岡・博多座にて行われます。
元月組トップスターの龍真咲さん
そしてもう一方。
元月組トップスターの龍真咲さん。
あーさの新人公演初主演は『PUCK』でした。
シェイクスピアの『真夏の夜の夢』をモチーフにしたお話で、トップスターの男役がやるにはなかなか難しい少年の妖精役です。
初演のPUCKは涼風真世さん。
フェアリータイプの男役さんでした。
この役をやれる人は涼風真世さんしかいないだろうと思っていたら、龍真咲さんがいました。
ビジュアルのかわいさと美声の力技の、この二人に勝つ人はいないだろうと思っていました。
誰もが出来る役ではない難しいPUCK役を、その愛らしいビジュアルで掴んだあーさ。
大きなチャンスが巡ってきました。
そんな新人時代をずっと見てきた龍真咲さんからあーさへ。
「雪組での主演が決まった時に真っ先にご報告をしてくれたあーさ。
自分の事のように嬉しく鼓動が早くなりました!
彼女が『PUCK』の新人公演で主役をした時は印象的でした。
アイドルっぽい気質と小悪魔のような笑顔にハートを鷲掴みにされた女子は多かったのではないかと(笑)。
離れていてもかつて同じ組にいた仲間とのご縁が繋がっている、これぞ宝塚ですね!」
アイドルっぽい気質と小悪魔のような笑顔、あなたもでしたよ、と私は言いたい。
PUCK役者、恐るべし。
Instagramなどで、雪組を観に行き、あーさのトップを喜ぶ仲間たちの感想を見るたびに、私も同じように離れていてもみんなが繋がっていることを実感していました。
一緒に同じ景色を見て、いろんなことを共に乗り越えてきた仲間との絆は、組が変わろうと、退団しようと、離れていようとも変わることはありません。
それが宝塚の神髄です。
月組の仲間たちもずっとあーさのことを応援しています。
あーさの時代が始まりました
私のあーさとの思い出は、『Fantastic Energy!』の千秋楽。
カッコつけて袖にハケるはずが、盛大に転んだあーさ。
しかし、みんながどんどん袖に入らないといけない振付けで、「みんなに迷惑はかけられない」と這いつくばりながら急いで袖に入ろうとしていたあーさを、私は爆笑しながら飛び越えたとのこと…。
そんな話をあーさにされましたが、記憶なし…。
大きな怪我もなく無事だったからよかったものの、なんて失礼なことを!
でも聞いた後、想像して笑わせてもらいました。
今や、たくさんの人を魅了するトップスターですが、会えば昔のままの「バリ3!」と言っていたかわいいあーさです。
大きな瞳と整った顔立ち、アイドル的なイケメンというイメージが強いあーさですが、その魅力は美貌だけに留まりません。
あーさの時代が始まりました。
これからの時間もあーさらしく輝き続け、多くの人を魅了し続けてください。
私はずっと見守っています。
次の大劇場と東京公演のタイトルは『ボー・ブランメル〜美しすぎた男〜』だそうです。
このタイトルに、異論を唱える人はいないでしょう。
あーさの美しさには、そんな説得力があります。
そして皆様、その美しさに大いに溺れてください。
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