『VORTEX』ギャスパー・ノエ監督、2画面分割で描かれる老夫婦は「取り返しのつかないほど分離された2人」

2023年12月3日(日)14時0分 シネマカフェ

『VORTEX ヴォルテックス』 © 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA

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最新作『VORTEX ヴォルテックス』のギャスパー・ノエ監督が、本作で2画面分割を採用した秘話とその心境について語ったコメントが届いた。

これまで挑発的な作品で注目を集めてきたギャスパー・ノエ監督が、ホラー映画の帝王ダリオ・アルジェントを主演に迎え、2画面(スプリットスクリーン)で、決して交わることのない夫と妻、人生最後の日々を映し出した本作。

本作の最大の特徴ともいえるのが、2画面同時に映し出される“スプリットスクリーン”の演出。『CLIMAX クライマックス』(2018)『ルクス・エテルナ 永遠の光』(2019)と過去にもスプリットスクリーンの手法を部分的にとりいれてきたギャスパー・ノエ監督。今回は、ほぼ全編スプリットスクリーンで、老夫婦人生最期の日々を描いた。

この度解禁された本編映像でも、老夫婦それぞれの生活が2画面で描かれている。ある日の朝、心ここにあらずといった様子でふらふらと雑貨屋へ入る妻(フランソワーズ・ルブラン)と、寝起きのパジャマ姿のまま熱心にタイプライターを打つ映画評論家の夫(ダリオ・アルジェント)。彼は、妻のことが気になり、携帯で電話をかけるが、妻は全く電話に気づくことはない。そして、夫は仕方なく、電話をきり、妻を探しに行こうとする様子が2画面同時進行で映し出される。

スプリットスクリーンについて監督は、「最初、数シーンだけをスプリットスクリーンで撮影する予定で、映画の全期間に渡って敢行するつもりは元々なかったんだ」と明かす。

「けれども編集室で、登場人物の1人がフレームから離れ、もう一方が1人だけになったとき、彼または彼女が何をしているのかを、同時に、かつ、ずっと見ていたかったことに気づいたんだ。スプリットスクリーンによって、同時並行で進行しているのに、決して交わることのない2つのトンネルをたどっているように感じられるんだ。“人生の道”と言ってもいいかもしれない。取り返しのつかないほど分離された2人なんだ。この演出は、優れた空間ロジックが必要で、私は常に頭の中でルービックキューブを解いているような感覚に陥り、夜はよく眠れなかったよ」と、スプリットスクリーンに至った経緯とその狙いについて語った。

さらに、自身の心境について、「『カノン』(1998)と短編『SIDA(原題)』(2006)を除けば、私は本当にティーンエイジャーのためのティーンエイジャーについての映画しか作ってこなかったように感じる。この年になって、私はようやく少しだけ大人になりつつあるのかもしれない。未知の世界に入り込んでいる」と新たな境地に入ったことを告白している。

『VORTEX ヴォルテックス』は12月8日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。

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