残念ながらトランプ関税で製造業は復活しません…アメリカ人が意外と気づいていない「弱点」
2025年4月17日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン
残念ながらトランプ関税で製造業は復活しません…アメリカ人が意外と気づいていない「弱点」
Photo:Kevin Dietsch/gettyimages
トランプ米大統領は相互関税を90日間延期する一方で、中国には追加関税を145%に引き上げると発表。まさに“朝令暮改”であり、世界の主要株価は乱高下している。続いてスマホを除外したかと思えば、「新たな半導体関税に組み入れる」と表明。迷走するトランプ氏に、世界経済が連日振り回されている状況だ。そもそもトランプ氏の成功シナリオには矛盾があり、米国の弱点を補うため製造業を再興しようにも、ある決定的な要素が「足かせ」になるだろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
トランプ関税に振り回される日々…
トランプ米大統領が「相互関税」を発表して以降、世界が大混乱に見舞われている。トランプ氏の頭の中にあるシナリオはこうだ。
まず、相互関税は米国の製造業を復活させる。関税率を引き上げることで、海外の有力企業が米国名への投資を増やすことを促し、その後は関税率を逆に引き下げ各種の景気刺激策を行うことで国内経済を活性化。そうして2026年秋の中間選挙での大勝利を狙う——。
しかし、トランプ氏のもくろみ通りに米国経済が展開するのだろうか? 米国内の製造業を復活させるには相当の時間がかかるし、そのタイミングが中間選挙の助走に間に合うのかは疑問だ。また、何より米国民がインフレ圧力に耐えられるかどうか。予断は許さないだろう。
為政者として、自国のブルーワーカー層の不満解消を目指すのは、ある意味で当然だ。しかし、トランプ氏の政策でそれができるかは不透明である。米国の賃金はかなり高く、熟練の労働者も不足している。トランプ関税が発動されればその影響で、鉄鋼やアルミなどの調達コストも上がるはずだ。それらの要素は、少なくとも短期的には、米国企業にとって逆風になるだろう。
想定される最悪のシナリオは、トランプ氏の各種政策によって景気が停滞しているのにもかかわらずインフレが続く「スタグフレーション」に陥ることだ。その場合、世界経済は「関税不況」の大渦に巻き込まれるだろう。株式や為替などの金融市場がさらに混乱することも想定される。